劔岳 親父の山歩き報告 (NO.40)
今年も劔岳は厳しく
凛として初心者オヤジを迎えてくれました


雄山山頂、スキーの人や登山の人で賑わっています。
そのうちの一人に携帯の写真のシャッターを頼みました。



2010年 5月31日(月)〜 6月3日(木)  洛西伊達オヤジ






◆今年も劔岳は厳しく、凛として初心者オヤジを迎えてくれました。念願の長次郎谷からのトライを断念、オヤジに一体何が起きたか。なんちゃって大層な見出しですが、早い話バテただけのことです。まあ有態に報告させて頂きます。今回のコース、毎年同じなんで新鮮味に欠けるのですが。

◆今回は室堂のトイレでデジカメを忘れ、枚数も少なく携帯で撮った写真しかありません、見難いので申し訳ないです、(エーいつもと同じやないけー)と言われそうですが。


(コース)

5月31日夜、車で立山駅前駐車場まで行き車中泊

▼一日目 6月1日
ケーブルにて美女平−バスにて室堂−一ノ越−雄山−大汝山−富士ノ折立−真砂岳−別山−別山乗越−劔沢小屋

▼二日目 6月2日
劔沢小屋−劔沢−平蔵谷出会い−平蔵谷−平蔵のコル−カニノヨコバイ−劔岳山頂−同じコースにて帰還 (出発4時44分ー帰還16時15分)

▼三日目 6月3日
劔沢小屋−別山乗越−雷鳥沢−室堂−バスにて美女平−ケーブルにて立山駅 (往復とも北陸自動車道立山インターからのアクセスでした)



 ゴールデンウィークが過ぎると、ボチボチ奥の山が気になりだします。ここ2年続けてこの時期行っている劔岳、劔沢小屋の御主人や奥さんに、又お世話になる事にして予約の電話。(この時期予約して、ガイド同行が原則なんです)

 息子さんが出られて、「劔登頂ですか、お一人ですか、この時期経験はありますか。」とお父さんと同じ質問。「はい、二年続けて平蔵谷で上がってます、今年は出来たら長次郎で行きたいのですが。」「ああそうですか、じゃーお分かりだと思います、いつものどおり、アイゼン10本歯以上、ピッケル、ヘルメット、その他冬山装備よろしくお願いします、ただ今年は例年より雪が多いので。」「エー多いんですか、長次郎のコースどうなんでしょう。」「それは、又お見えになってから相談しましょう、お待ちしています。」と結うことで、今年も奥の山は劔岳から、はじめることになりました。

 思えば一昨年、何もわからずアイゼンだけつけて劔沢小屋に向かったオヤジ。余りの雪の多さにビックリ(今から思うと甘ちゃん、大甘、もいいところで)小屋の御主人、佐伯御大に劔に行きたいと言い出すオヤジ。御主人の方がビックリされたのではないかと、思い出すのも恥ずかしい。本来はやめた方が良いと断念するよう言われるところ、ピッケルを貸して頂いて、平蔵谷コースを丁寧に教えて頂いて、大体の到着時間のアドバイス。それ以上かかるようなら、そこから必ず引き返すように、と結うのを条件に何とか山頂往復出来たわけで、その時の緊張感と達成感が、オヤジをこの時期劔岳に向かわせるのです。

 特に昨年、映画『劔岳 点の記』が封切られて、一躍長次郎谷のコースが脚光をあび、ミーチャン、ハーチャンのオヤジは、よし今年は長次郎で登ったる、と夕闇が迫る北陸自動車道を立山駅に向かいます。予定どおり20時過ぎに到着。平日とあって立山駅前駐車場はやや少なめ、寝袋にもぐりこんでお休みなさい。

◆一日目 6月1日
 快晴、前日にコンビニで買い込んだおにぎりパクパク、コーヒーを沸かし、朝一番(7時)のケーブルを待ちます。変った事といえば、キップ売り場が外の方になっていました。それと売り場の前に立つと直ぐ、「どちらまでですか、今日はアルペンルートが、ケーブルの故障で扇沢に行けないのです」と言われました。「いえ、室堂から歩きで劔沢小屋の方に行きます」「はいじゃあ大丈夫です」とのことで、いつものどおり往復キップを購入、とまあー此処までは、いつもどおりの流れだったのですが、えらい大チョンボをオヤジはやらかします。

 室堂に着いて、身支度をする前にトイレに行ったオヤジ、ウエストバッグをトイレに忘れてしまったのです 。気がついたのは一の越に向かって、雪渓を歩き出して10分ほどして、腰の軽さに気がつき慌てて戻りましたが、時すでに遅し、案内所にも聞きましたが届けられてはいませんでした、ガクーです。中身は、デジカメ、磁石、クスリぐらいですが、帰りに又寄りますと、届けを出したりしていたので、1時間のロス。今年は最近歩けていないので、足慣らしも兼ねて、雄山周りの尾根縦走で行こうとしていた矢先の出来事、大チョンボです。

 縦走はやめて、雷鳥沢に向かいそのまま小屋に行こうかなあ〜とも思いましたが、予定どおり雄山に向かいました。ブルーな気分での歩きは応えます。バテたのなんの、まともに日ごろの不摂生を思い知らされました。時間もロスしているので気が焦るのですが、体が重すぎて息が切れてしまいます。あきらかに去年、一昨年とは違います。

一の越山荘、此処で一旦アイゼンを外します。
此処から急登坂で雄山山頂になります。

 一の越でアイゼンを外し頂上を目指しますが、息切れは収まりません。ユックリ、ユックリの歩きとなりました。結局、縦走を終え別山乗越から劔沢を下り、小屋に着いたのは16時を過ぎていました(因みに一昨年は14時ごろ)小屋の方はひっそりとして、勝手に上がって食堂を覗くと、御主人と奥さんがテレビを見ておられ、挨拶しましたが「遅かったですね〜、今日はオヤジさんお一人なんで、こられてから食事の支度をしようかと、話していたところなんです」と奥さん。「エー私一人なんですかー、なんか悪いですね〜、いや朝一番のリフトで上がって、尾根縦走で来たのですが、いろいろあって、とにかくバテテ、息が切れて、こんな時間になりました。」と説明するオヤジ。

雄山から北方の稜線、
これから向かうルートですが前後誰もいません。
別山乗越、御前小屋、左が雷鳥沢方面、
右の雪渓になっているのが劔沢方面、
極端に劔沢の雪の多さが感じられます。

 奥さんは食事の支度に取り掛かられ、オヤジは早速明日の長次郎からの山頂行きの相談。しかし、この時点でオヤジは不安を感じていました。今日の歩きの状態です、もちろん御主人は丁寧にルートを教えてくださいましたが、オヤジは正直に今日のバテかたを報告しました。平蔵ルートより2〜3時間かかる、とのこと。それと一番ご主人が心配されたのは、おそらく明日は、オヤジだけが山頂を目指すのではないかと思われる事、又稜線が例年以上に非常に雪が多く、厳しいと結う情報があり、皆さんガイド同行で、ロープをつないで行かれるとのこと、オヤジの不安感を察するように、「今回は平蔵の方で、行かれたらどうですか。」と言われました。この時点で明日のコースが決定、今回も長次郎は断念となりました。

 食事をしたあと、いろいろご主人からお話をききましたが、やはり『点の記』の映画が封切られて、長次郎に行かれる方が増えているそうです。わかる気がしますが、今のオヤジには無理な気がします。小屋の方は新築されて一年たっても木の香りがして、布団もフカフカ、オヤジ一人の為に乾燥室の乾燥機を動かして頂き、又談話室のストーブもガンガン炊いて貰い、まー贅沢な泊まりをさせていただきました、恐縮です。明日は平蔵谷ルートいえどもやはり早立ちで、弁当を作ってもらい早めにお休みなさいです。

◆二日目 6月2日
 快晴、出発4時44分(なんか縁起のエエ数字やなあ〜)オヤジユックリ劔沢を下って行きます。平蔵谷出合い、今年は出合いシンボルの大岩は、雪に沈んで片鱗も見えません。ピーカン二日目ともなると、日焼け止めを塗っていないオヤジは目が痛く、顔が焼けているのが判ります。しかし、もうそんなことはどうでもよく、登るのに必死になります。やはり、昨日同様バテが直ぐにきてしまいます。100歩、50歩、30歩、段々停まる間隔が短くなります。

新劔沢小屋、早朝の撮影、
明月がまだ見えています。
小屋の前から劔沢方面を撮影

 リュックは出来るだけ軽くして来ましたが、停まっては深呼吸、の繰り返しでなんとも情けない状態で、やっと平蔵のコルに取り付きました。5時間以上掛かりました、早い人だと山頂からもう降りてきています。しかし、直ぐにクサリ場に向かう気力は起きてきません。リュックを下ろし足を投げ出し、バテた〜しばらく休眠状態、これも誰も回りにいない故の贅沢でしょうか?

平蔵のコルから平蔵谷を見る、
こんなとこよう上がってきたなあ〜といつも思うのです。

 まあ何とかヨコバイのクサリにつかまって登ります。本来ヨコバイは下りルートですが、これも小屋で御主人に誰も登っている人はいないから、ヨコバイの方が楽ですよとアドバイス頂いてました。何とか喘ぎながら山頂の稜線に出ましたが、山頂神社までの稜線20M程が怖いのなんの、雪の上に踏み跡はありますが、温度も上がっているし、踏んで流れたら一巻の終わり、なるほど反対の長次郎のコルから来るには、この状態が長くなるわけで、ご主人は、これを心配されているのだなあ〜と思い当たりました。

劔山頂の神社の屋根が20mほどでしょうか
先にあり踏み跡しっかりありますが、踏み跡たどって流れたら
左右どちらに落ちてもご臨終は間違いないところです、
天気はピーカン気温は上昇、怖い〜

 何とか、神社に辿り着いて手を合し、直ぐに携帯でカーチャンに連絡、デジカメなくした事を報告、「へー相変わらずドジやなあ〜、まあデジカメはともかく、無事に帰ってきなアカンでー。」と優しいお言葉。スンマヘン、携帯で写真撮ると直ぐに下ります。平蔵コルまで戻り、再度身支度をし直します。谷を上から見ると、いつものことながら、よーこんなとこ登って来たなあ〜。下りだしのコル直下の急角度の間はピッケル差込、体を斜面に向かい蹴りこみ、蹴りこみ、下ります。

神社の横で片手撮り撮影、
後ろに見えるのが長次郎のコルからの 稜線、
やはり厳しい状況が歴然としています。

 温度が上昇して踏み込んだ後の流れが気になります。腕がだるく、ある意味上り以上の体力の消耗です。傾斜が少し緩やかになって、やっと踵で踏み込んで、体も前を向いて下りられるようになりましたが、緊張は続きます。そのまま、谷の中央を出合まで下るはずが、右の斜面の方が近いような気がして、あわよくば劔沢へ近く出られるような気がして向かったのが間違い、そんな甘いモンやおまへん。段々傾斜がきつくなり、元の谷中央に戻るのに、悪戦苦闘、最後ブッシュの中に滑って落ち込むアクシデントまであり、相当な時間ロス、進歩がおまへん。進歩がないといえば、出合から劔沢を小屋まで戻るのに、一直線に歩けず、右にブレ、修正しては又ブレ、何もガスが出て視界が利かないわけは無いのですが、ここでも時間ロスは甚だしい事になりました。

 バテていると回りを見る余裕が無くなり、そうなるらしいです。大体広い雪原をまっすぐ歩くのは難しいもので、どうしてもブレるそうです。そこで目安として、細い竹で目印を差し込んで誘導しているのです、との事。そういえば御前小屋から、劔小屋まで細い竹が差し込んで誘導してあります。ガスっている時や吹雪いている時は、なるほど心強いでしょうね。もっとも今日のように、ピーカンで右に行ったり左に行ったりのオヤジは論外です。アエギアエギ小屋に戻ったのは、なんと16時、11時間も掛かってしまいました。

 コースロスを考えても掛かりすぎです。長次郎谷コースなどと考えた自分が恥ずかしいです。御主人は「シーズンいきなりはキツイです、やはりある程度歩いて、特に冬山を歩いてないと、バテます。まあ無事に登頂出来てなにより、無事に帰ってこその登山です。それが一番ですよ、時間は人それぞれ、状況によります、長次郎は又次のチャンスがありますよ。」と言ってもらいました。

 日々事故や遭難と隣併せの関係者のお言葉、重く拝聴しました。小屋の方は、今日もオヤジだけの泊まりかなあ〜と思っていたら、17時を少し回った頃に、ガイド同行の女性が到着。三人の宿泊となりました(贅沢やなあ〜)大阪の方で、室堂から雷鳥沢を登り直接こられたそうですが、体調があまり良くないとのことで、予定では長次郎で劔登頂を考えておられるみたいですが、明日の朝の判断でと結うことになり、相変わらずの山小屋とは思えない豪華な食事を頂き、満足、満腹、ご馳走様でしたー。明日は下りるだけなんで気は楽なんですが、今日のいろんなシーンが頭に浮かび、恐怖感がよみがえってきてなかなか寝付けませんでした。やはりオヤジは年なんですかね〜。

◆三日目 6月3日
 今日も朝から快晴、思えば今回は天気に恵まれていました。おかげで顔はヒリヒリ、まあ2〜3日もすれば、バリバリになるのやろな〜。大阪の女性は早く起きられたのですが、やはり、それでも時間的に無理みたいで、ガイドさんんと相談、女性はどうしても長次郎谷が見たいとの事で、とにかく左又の熊の岩まで行って、引き返すかどうか判断するとのことになったみたいです。

 御主人がガイドさんに「山頂14時がタイムリミットです、その辺の判断でお願いします。」と言われて、女性も納得、しかし、そうまでして長次郎谷を見たいのはやはり、映画の影響なんでしょうかね〜。食事を済ませ、劔沢に下りて行く2人を見送り、オヤジも挨拶と支払いを済ませ(普通山小屋の後払いは、考えられないのですが)

 出発、出来たら来年も来たいです、(もっとトレーニングをして)オヤジは劔沢を登って行きます。チョットぐらいは、息が継続するようになったかなあ〜と思いながら、御前小屋の別山乗越に到着。最後の難関、雷鳥沢の急坂下り、時間が早くアイスバーン状態、アイゼンをしっかり踏み込むのに、相当強く蹴りこまないと入りません。又ピッケル打ち込み恐る恐る下ります。気がつくと右手の尾根の上に人影が、下りるのをためらっているみたいです。おそらく御前小屋に泊まっていたのではないでしょうか。この状況に、もう少し雪が軟らかくなるのを待っているように見えます。オヤジの下りるのを見て、オヤジが下りだした地点に、雪の無い稜線を向かってきますが、とにかくオヤジは、ピッケルとアイゼンの蹴りこみに必死で、何とか緩やかな傾斜まで下りた時上を見たら、まだ雪渓の上部で佇んでいました。

 本当はそれが正解かも知れません、なかなか、難しいものです。このようなアイスバーン状態は、アイゼンをしっかり食い込ますのに大変ですし、又表面が緩むと、流れるのが怖いですし、どの道雪渓は大変です。ただ雪原状態は、一直線に進めますので、眼下の室堂センターを目指し、相変わらずハーハ、ゼーゼ、やっと辿り着いたバスターミナル、案内所によってカメラが届いていないか確認、一縷の望みを掛けていましたが、残念、届いていなかったです。雷鳥沢で時間がかかり、10時の美女平行きのバスには間に合いませんでした。

 ユックリ次のバスを待ちます。それにしても大変な人気、観光客で賑わっています。まだアルペンルートは途中でストップしたままみたいです。地図上はほんの少し離れた劔や、その近くの人を容易に寄せ付けない状況と、この室堂の状況のギャップが、いつも信じられない気がします。

 今回も、立山インターまでの途中にある温泉施設グリーンパークに寄って、ユックリ帰って来ました。 まーチョンボだらけの今年の劔行きでしたが、無事に戻れて、感謝、感謝、劔沢小屋の御主人。奥さん、感謝、感謝、来年もなんとか来たいです。そして来年こそは長次郎でなんとか登頂を。


               【 記: 洛西伊達オヤジ 】

◆追記
今回の劔行き、余りにもバテ過ぎ特に息が切れが激しかったので、心臓にダメージを負っている(心筋梗塞を7〜8年前に)オヤジとしては不安になり、帰ってから、掛かり付けのお医者さんに事情を話して検査してもらいました。心臓は全く問題が無く(問題はあるのですが、今までと変わりなく)結局、メタボ、最近の山歩き不足、特に冬山はほとんど歩けていません。

 トレーニングもせずに心肺機能はそのままで、メタボ分例えていえば、去年より10Kの米俵を身につけて歩いているようなもので、息が切れるのは当たり前との事で、ああ〜今年の奥の山行きはどうなる事やら。ストレスがたまり余計に過食症になりそうです。なお今回カメラがそんな状況で、携帯で撮った写真しかありません、見難いので申し訳ないです、(エーいつもと同じやないけー)と言われそうですが、 現在カーチャンに交渉中です、応援してください。