西鎌尾根から折立まで

親父の山歩き報告 (NO.41)
初心者オヤジ山小屋流転(後編)


槍ヶ岳山頂の記念写真も並んで、
シャッターは順番に押してもらいます。



2010年 7月29日(木)〜 8月4日(水)  洛西伊達オヤジ






◆洛西オヤジです、5月の劔岳以来の報告になりますが、その間ホームグランドの北山に少し、又奈良の奥駈け、オオヤマレンゲを観察にOKAOKAの師匠に同行させてもらいましたが、他の先輩メンバーのように歩けていないオヤジ、今回も歩けるかなあ〜と不安を抱えて初めてのロング遠征でした。 


(コース)

7月28日夜、名神大山崎バス停から夜行バスで松本に向かいます。

▼7月29日(木)
松本−大糸線穂高−タクシーで安房温泉登山口−合戦小屋−燕山荘(1泊目)

▼7月30日(金)
燕岳往復−大天井ヒュッテ−大天井岳往復−ビックリ平−西岳ヒュッテ(2泊目)

▼7月31日(土)
水俣乗越−東鎌尾根−ヒュッテ大槍−槍ヶ岳山荘(3泊目)

▼8月1日(日)
槍ヶ岳山頂往復−千丈沢乗越−西鎌尾根−双六小屋−巻き道ルート−三俣蓮華岳−黒部乗越−黒部五郎小舎(4泊目)

▼8月2日(月)
五郎平カールルート−黒部五郎岳−赤木岳−北ノ俣岳−太郎平小屋(5泊目)

▼8月3日(火)
薬師岳往復−太郎平小屋(連泊6泊目)

▼8月4日(水)
折立に下山−バスで富山駅−サンダーバード号で京都に帰って来ました。例に拠って所用時間は、オヤジの歩きが全く参考になりませんので載せていません。すべてのコースで教科書の山と、高原社の地図の表示時間拠り長く掛かりました。



■8月1日(日)
 大混雑の槍ヶ岳山荘の一夜もやっと明け、初めて青空が広がる早朝、気の早い人はもう山頂に向かっています。食事を終えて出発前に、小屋の前で神戸のお二人さんとお別れです。オヤジは山頂に、お二人さんは少し離れた所から、槍ヶ岳の雄姿を見たいとのことです。リュックは、どちらも小屋の前に置いて出発です。山頂には、ありの行列のごとくゾロゾロと進みます。

 念の為ヘルメットを被るオヤジ、小石でも落されたら必ず怪我をします。垂直のハシゴを登って山頂に、山頂は沢山の人でこれ以上増えたら危ない状態、記念写真を撮ったらそそくさと退散。ただ、360度の展望を楽しめたのはラッキーでした。小屋まで下りてリュックを回収、まだ神戸のお二人さんはもちろん戻ってはいません、さあー西鎌尾根に向かいます。

神戸のお二人さん、記念写真 これから向かう西鎌尾根、
山頂の混雑が伺えます。
山頂から見る槍ヶ岳山荘 西鎌尾根への案内板、
比較的このコースに向かう人は少ないです。

 さて時間は7時9分、実は今日は何処に泊まるか、この時点でオヤジはまだ決めかねていました。ユックリするなら4〜5時間で着く双六小屋泊まり、さらに2〜3時間で三俣山荘、さらに2時間ほど先の黒部五郎の小屋、本来は黒部五郎小屋までが常識らしいのですが、今のオヤジの歩きで果たして行けるかどうか、とりあえずヨタヨタ歩き出します。千丈沢乗越に下りながら振り返ることたびたび、久しぶりの青空にそびえる槍の威容、人気があるのがわかります。

千丈沢乗越の手前から
見上げる槍ヶ岳

 そのうちボチボチと、双六小屋を出発した人達とすれ違います。こんにちは、おはようございます、の挨拶、山にいると人間こう迄素直になれるのが、不思議です。下界で此処まで見知らぬ人に挨拶するでしょうか、ひょっとしたら同じ町内でもしないのでは。山の自然が人間に教えてくれる、大切なパワーとでも結うのでしょうか、誰も「こんにちは」と声をかけて「・・・」無言で通り過ぎる人はないでしょう。

 もっともオヤジのようにヨレヨレで直ぐには挨拶できず、「ハアハーハ こんにちは」と結うのはありますが、とまあそんな感じで何とかたどり着くことが出来た双六小屋。時間はちょうど11時半、うわー微妙やな〜しかも、またもやガスッてきた天気、先ずはお腹が減ったのでカレーライスを注文、食べながらもう一度地図を確認。まあ、オヤジの足なら黒部五郎の小屋まで5時間は掛かる覚悟、よし行くかー何とか17時までには着くのでは、と直ぐに出発。

双六小屋、この小屋も大きい小屋で
新穂高からの基点です。
双六小屋に到着です

 この先、双六岳山頂経由ルート、中道コース、巻き道ルートと三コースあり、雪渓の心配が無いこの時期山頂は諦め、巻き道ルートで時間を稼ぎ、三俣蓮華岳の分岐(三俣峠)に向かいます。途中雪渓の雪解け流れ、ウワー久しぶり、もちろん顔から頭からジャブジャブ、冷たあーい、出来たら裸になって体を拭きたいところですが、いくらなんでもそれは無理、しかし気持ちがよかったです。

うわー水やー顔洗えるー 三俣峠、三俣山荘方面の分岐
又三俣蓮華岳の巻き道の分岐です

 気分一新ガスの中をエッチラ、巻き道といえどもアップダウンがあります。予定より少し遅れて三俣峠の分岐に到着。この先巻き道があるのは判っていますが、三俣蓮華岳山頂に行く方が早いので登りは辛いですが、ヨレヨレで登りました。広い山頂で、しかもガスッているので、黒部五郎の案内を見つけるのにウロウロしましたが、何とか見つかり直ぐに下りだします。なんせ、予定より大分時間が掛かっています。ここまできたら黒部五郎小屋に行くしかないです。

俣蓮華岳山頂、ガスッてなにも見えません、
実際はもっと視界が悪かったです。
部乗越の分岐です、巻き道との出会いで、
此処から2時間で小屋までいけるか?

 オヤジの気持ちに、今回の山歩きで初めて焦りが出てきています。急な下り危ないな〜、自分で自分の気持ちをセーブするのに必死です。やっと巻き道との合流地点、黒部乗越に到着。時間は3時15分、小屋まで教科書は1時間10分ぐらい、何とか5時までには小屋に着く事が出来るかどうか、とにかく霧の中を再び雨具を着込んで歩きます。

 やがて噂に聞く黒部五郎カールの、名物ゴロゴロ石の登山道に入ります。これが又歩き難い、気を抜いたら、捻挫は覚悟、転倒したら、いややな〜、気がついたら汗びっしょり、又今夜も乾燥室の心配やー、やがて、山小屋特有の発動機の音が聞こえて、潅木林が切れた目の前に、有名な三角屋根が現れました。到着4時30分やれやれ、今回の歩きで唯一8時間以上の一日でした。

こんなゴロゴロ道が30分以上続きます 一度泊まりたかったのです
三角の屋根が有名な黒部五郎小屋

 小屋のほうはなんとか一人布団一枚の幸せな(?)状態、そして乾燥室も良好な状態でした。遅く着いたオヤジ、食事は3回目のグループでした。食事を待つ間布団の近くの者同士いろんな話が、弾みます。たいがいは今日は何処から、こられましたに始り、明日は何処まで、又どちらの方面から、と決まり文句みたいなものですが、それがいいので、誰も、政治、経済、宗教、家族問題、などわずらわしい話はしません。

 今回も話し上手な広島の男性がいて、面白い話で盛り上がります。いろんな人がいて、ビックリするのは、教科書15時間のコースを11時間で歩いて小屋に来た人とか。折立から、太郎小屋を通過してこの小屋まで来たとか、オヤジなどからしたら、考えられない歩きで、ものすごい人がいるなあ〜と感心する事、しきり。

 又昨晩三俣山荘に泊まった人がいて、ものすごい状況で、布団一枚に4人(うそやろ)寝られないから座って寝ていたとか。ほんまかいな、廊下も足の踏み場もない、とか話がだんだん飛躍してどこまで信じてよいのやら。それを又広島のおじさんが上げ足とって尾ひれをつけるものだから、大盛り上がり。もっとも原因は雲の平の小屋が、8月の10日まで改装で閉まっていたのも原因の一つで、知らない人がみんな近くの三俣山荘に泊まり大混乱となったみたいです。それはともかく今日は幸せな状況、食事の後、疲れていたのかオヤジはすぐに寝つきました。

■8月2日(月)
 今日も朝からは良い天気でやれやれ、今日は太郎平小屋までの予定で、それほどの長時間にはならないコースになりそうです。最初に黒部吾郎岳に登るのが一苦労で後は何とかなるかー、と甘く見ていたのですが、なかなか、その後の北ノ俣岳を含む稜線はアップダウンが多く、バテバテの歩きになったオヤジです。

 まあそんなことはつゆ知らず、ユックリ構えるオヤジ、食事も後のグループでしたので、布団に寝転がって待っていると、例の広島のおじさんが、何やら注射器のようなものを取り出しています。オヤジビックリして「あのそれって、ヒョットしてインシュリンですか」と聞くオヤジ。「ええそうです、朝食の前にこいつを打たないと」「ええー糖尿ですか」「そうです、と結うかすい臓をやられました、他にもいろいろやられて、つなぎあわしています」唖然とするオヤジ。「それでよく登山を、しかも北アルプスの奥まで来られますね〜」おじさんいわく「いや登山は、心肺能力と足の筋力です、それさえしっかりしていれば、大丈夫です」

 もう何も結うことはありません、ただ、ただ脱帽、実に明るく、話が面白く、大病を患った人とは思えません。最後のとどめは食事が終わると、タバコをプカリと吸われるのには、もうサインでも求めようかと思いました。そんな鉄人とも小屋の前で記念の写真を撮ってお別れ出発です。

広島の鉄人、
いやはや世の中には凄い人がいます

 黒部五郎岳へは、稜線コースとカールの中を歩くコースがあります。時間は約30分の差でカールからの方が早いとのこと、オヤジはもちろんカールの中をヨタヨタと進みます。カール独特の岩がゴロゴロしていますが、前日の登山道ほどではありません。しばらく歩き出した頃に一人の男性とすれ違いました。時間的に中途半端な時間で、早いですね〜もう山頂に行って来られたのですか、と聞きますと、いえ、昨晩は体調が悪く時間が遅くなり、雨も降ってきたのでカールの中の岩陰でビバークしました、とのこと。

 「テントの装備は持っておられないみたいですが、ツェルトですか」「そうです、なんとか体調も戻り歩けそうです」とのこと、山慣れた男性の雰囲気、ツエルトなどと結うのはオヤジも持っていますが、やはりこう結う雰囲気の人が(雰囲気で決めるなー)使うものなんでしょう。

黒部吾郎のカール、 黒部吾郎山頂天気は最高、展望最高

 さて何とかカールの終着点、見上げると黒部五郎岳がそびえています。当然のことですが平地を来たのですから、直登に近い角度で登らないといけません。あ〜シンドイ、バテバテ何とか稜線分岐にたどり着きましたがまだ山頂は先です。先に来ていた人もリュックを下ろして行きます。オヤジもリュックを下ろして、カメラだけ持って山頂へ。ありがたいことにまだピーカンです。広い山頂はユックリできます、登りでバテたオヤジは座り込んで展望を堪能しました。

笠岳です、この山も人気があります。 あんなに遠くなった槍ヶ岳、
よー歩いてきたなあ〜

 再度稜線分岐に戻り、リュックを担いでエッチラです。中俣乗越、赤木岳、北ノ俣岳から太郎小屋までの稜線歩きは、前半の槍に向かう表銀座の稜線とはもう雰囲気が全く変り、広い、草原を歩く感じでしょうか、お花畑も感じが変ってきて、牧場の感じとでも結うのでしょうか、小花が目立ちます。途中から、遙か彼方に目的の太郎平小屋が見えるのですが、平坦な稜線で楽に歩けそうに思うのですが、なかなかそんなに甘くは無いのが現実で、アップダウンが微妙に応えて、小屋に着く頃はゲー疲れたー、例に拠って教科書より相当時間が掛かって到着です。

写真では見えないと思いますが、
右の端に太郎小屋が見えています。
北ノ俣岳
牧場のようなお花畑、後ろは薬師岳です。 太郎小屋の前の広場です。

 太郎平小屋は以前にも一度お世話になった小屋で、折立から登ってくると初めての小屋になります。薬師岳、雲の平、オヤジが歩いてきた黒部五郎や、もっと奥の水晶、鷲羽などの基地的小屋で、当然宿泊の人数も多くなります。唯今回は何とか一人布団一枚で寝られました。

 さて、実は今回の山歩きの予定で、この太郎平の小屋が最終の小屋で折立に下りるのですが、一日早く到着しています。槍ヶ岳山荘から黒部五郎の小屋まで何とか歩いた結果なんですが(普通は皆さん当たり前のコースです)オヤジの気持ちの何処かに薬師岳にも登りたいと結う思いがあり、最終日に薬師に登って折立まで降りようかな〜と考えていましたが、やはりバスの時間がうまくいきません、

 一日早く着いたので連泊してユックリ薬師岳に登り、予定どうりあくる日に折立に下りる事が出来ます。ただ天気がよければの話で、悪ければ一日早く下りて帰ることにして、小屋にもその旨伝えておきました。「結構ですただし、下山される場合は必ず言ってから下山してください」、との事でした。まあ、明日はユックリ薬師岳に登れる事を祈りながらオヤスミです。

■8月3日(火)
 小屋の朝は早いです、4時にはもうゴソゴソあちこちで動き出します。オヤジも先ず窓から外をうかがうとまだ暗い空に星が出ています。よしよし、これなら何とかなりそうな気がします。もっとも晴れていても、昼頃からいつもガスッて来るのが今回のパターンになっています。しかし、今日は時間がありすぎるので、晴れるまで山頂で待つ事も出来るわけで、なにしろ、教科書で往復5時間ぐらい、オヤジの歩きでも7時間も8時間も掛からないのでは、しかもリュック無しなら気が楽です。

 朝食をすまし、ユックリ洗面、一応リュックは玄関前に置いて出かけます。先ずは木道をテン場まで行き、そこから沢に沿って岩の多い登山道を登ります。30分も登ると森林限界の辺りから広大な山容が広がり、周りの展望を楽しみながらユックリと歩くオヤジ。いやーリュックガないのは楽チンです。そのうちに下りてくる登山者が目立ち始めます、エライ早いですね〜と尋ねたところ薬師岳山荘に泊まっていたとのことです。実は薬師岳山荘は改装中で8月1日から仮オープンして、お布団もフカフカで気持ちよかったあ〜とのことでした。程なく山荘に到着したオヤジ、なるほどまだ、工事は進行中みたいです。

テン場に向かう木道
後ろが薬師岳への稜線です
テン場付近から見る槍ヶ岳遠望
山頂に向かう稜線です ウサギギクとか教えてもらいましたが?です

 ヨタヨタと先に進むオヤジ、ボチボチと今日折立に下りる人が山頂から降りてきます。やがて、有名な愛知大学の山岳部の遭難の原因になった東南陵との分岐、ケルンもあり廃屋になった祠のようなものがあり、偽薬師と呼ばれるところです。今日は天気は今のところピーカンで穏かなものです。愛知大学の遭難の時の状況はわかりませんが、おそらく強風の中吹雪に遭い、東南陵に迷い込んだとの説明があり、自然の脅威に今更ながら、思いを馳せ遭難の山岳部のメンバーに哀悼の黙祷をして、山頂に向かいます。

雄大な山容と結う形容がふさわしい薬師岳
手前のピークは偽薬師と呼ばれているとの事
山頂記念写真、女性のアマチュアカメラマンに
シャッターを頼みました

 それほどの時間を要することなく山頂に到着です。先ずは祠の前で記念の撮影、とにかく必ず人がいるので今回は一度も自動シャッターを使いませんでした。いいのか悪いのか、ンーです。シャッターを頼んだ女性は、アマチュアのカメラマンで御主人と二人連れで今日はスゴの小屋に向かわれるとのこと。東京のクラブに所属されていて、やはりアナログ、フイルムカメラにこだわっておられました。西岳のプロには及びませんが、それでもなかなかの荷物、プロの山岳カメラマンに指導をしてもらいグループ展に出されているとのこと、今回他にもカメラリユックを背負った女性を何人か見かけました、

 今まで、山岳写真と結うと男性の領域と思っていましたが、女性の進出も顕著な昨今です。天気はピーカンが続き、ご夫婦といろんな撮影スポットなどの話をして、そこへ又違うご夫婦も加わり、「まあこれ食べ、疲れがとれる」ビールこそ出ませんが、和気あいあいの山歩きの話が続きます。ゆったりとした時間が過ぎて、やがて、それぞれ目的のコースに向かいます。一番最後にオヤジもヨッコラショと下り出します。こんなのんびりした山歩きもいいものです。

薬師岳山頂から立山、劔方面 雛を連れた雷鳥、こんなピーカンに珍しいなー

 そのうちオヤジの目の前に雷鳥が現れ、おまけに雛が4〜5匹母親鳥についてチョコチョコ。これが又かわいいーのなんの、こんなピーカンに現れるのは珍しいと思いますが、しかも子連れで、危なく無いのかな〜それだけ天敵が減ったのでしょうか。雷鳥を見る回数が最近増えているような気がします。

 ヨタヨタ、改装中の薬師岳山荘まで下りて来たオヤジ、工事関係者の人が休んでおられます。「コンニチは、まだ、大分掛かるのですか」と聞くオヤジ。ちょうど昼休みなんでしょうか、「そやなあ〜盆ぐらいまでかな〜、オッチャン何処からきたんけー」「京都からです」「へー北アルプスはよく来るのけ」と、ここでも完全に足を止めてオシャベリ。「若い時に大阪の高槻や、大阪の周辺の高圧線の設置に、何年かいっていたな〜」といろいろ話は弾み気がついたら、ボチボチ休みを終えて仕事が始まっています。すんませんお仕事の邪魔をしました。

薬師岳山荘仮オープン 工事はまだ進行中みたいです

 それにしてもこんな山歩きはじめてです、登山と結うより散歩感覚でしょうか、太郎平小屋に帰還したのは、昼の軽食注文が締め切られる2時少し前、ほんまに7時間以上掛かって山頂往復してきたわけです。今の体力はこんなもんや、とピーカンにも恵まれ機嫌が良くなるオヤジです。再度今日の泊まりの受付を済まし、リュックを部屋に、今度は大部屋で50人ぐらい寝られそうですがいっぱいです、布団は一枚貰えそうです。

 やれやれ、明日の準備をある程度済ますと、後は小屋の外に出てボーとしています。もう一週間やなあ〜娑婆はどないなってるのやろー、この前は下りたら鳩山首相が辞任してました。明日は家に帰らなあかんなあ〜、富山から直接京都やなあ〜、それにしても綺麗な夕焼けやなあ〜、山小屋の時間がユックリと過ぎてゆきます。

 {ここで、今回の山歩きの間の携帯の電波状況をお話しておきますと、前半表銀座の稜線では?がる所が、所々何度か挑戦すると、何とか辛うじて?がる状況面白かったのは槍ヶ岳山荘、売店におられた女性に聞くと、「auなら二階のトイレの入り口のドアーをあけて、目の前の階段の2段目辺りで、窓に携帯を近づけるとつながります」と実に親切に教えて頂きました。なるほど教えてもらったとおりにするとドンピシャでした。後半西鎌尾根の方は、極端につながりにくくなります。黒部五郎小屋はもちろんカールの中なのでダメ、山頂もダメでした。太郎平小屋は、太郎山の頂上でつながると結うことでしたが、衛星の公衆電話があるので、それを利用してカーチャンに連絡、もちろん携帯は電源は切っておかないと一週間は絶対もたないです。}

■8月4日(水)
 さあ今回の山歩きもいよいよ最終日、折立に下りるだけです。バスの時間は10時30分と12時30分、どちらも富山駅直通です。グループ登山の人は小屋からタクシーの予約を入れています。前回見た、有峰口へのバスはなくなったのでしょうか、教科書では、折立までの時間3時間とのこと、7時に出ればなんとか間に合いそうですが、オヤジは念の為6時半に出発。山小屋ではそれでも遅すぎる出発で食事後充分余裕があります。

 それではボチボチと下りましょう、先ずは木道です。ヨタヨタ、そのうち折立まで自家用車で来た人でしょうかすれ違います。今日もピーカン、今回は後半になるほど天気が良くなるパターンでした。何はともあれ、最終日の展望を楽しみながらヨタヨタと下りて行きます。

小屋の前から、黒部五郎方面 朝焼けなんです。北の俣岳
出発前の情けない姿、
まだ寝てる、気合が足らんのと違う
雲がふんわり、あの雲の向こうは富山の街が

 劔岳遠望、白山遠望ユックリ堪能して下りました。登山口が近づくにつれて沢山の登山者が登ってきます。今日は週の半ばの水曜日、それでもこの賑わいやはり、ブームなんですかね〜

劔岳遠望 白山遠望

 最後の登山口が見えてきた辺りで、4人の女性のグループが何やら潅木の中に入って掘っています。「なにしているのですかー」まさか、登山口のトイレを目前にして雉撃ちでもないでしょうし、「お宝さがしです、へへー」とのこと何のコッチャ、判りません。先に登山口に下りたオヤジ、今回の初めての一週間に及んだ山歩きも終わりました。皮肉な事に最後になって、教科書より早く2時間半ほどで下りて来ました、

 バスまで相当時間があります。この時期の折立は自家用車が溢れ、大変な賑わい、トイレ、洗い場、自販機、などの設備も充実しています。オヤジも靴やストックを洗い、着替えもすませ、(といっても、乾いているだけで汗臭い衣類しかないのですが)洗い場で顔を洗っていると、先ほどの4人組みの女性が泥だらけの缶ビールを洗っています。「お宝とはこれだったのですか」とオヤジ、「そうなんです、遅れてきた仲間の人が埋めておいてくれたのです」「その人は、まだ上で2日ほど泊まりますので」「なるほど、無事下山の乾杯をされるわけですね〜」いやー参りました。

 そのグループはタクシーを予約していたみたいで、迎えに来たタクシーの運転手さんに「もうちょっと待ってね」と余裕の乾杯をしていました。面白い事を考える人がいるものです。そのほかにも昨日の薬師岳の頂上で会った、(スゴのほうから来られました)オヤジよりはだいぶんお歳を召したご夫婦、太郎平の小屋から相前後して下りてきたのですが、山形から来られているとのこと。立山の駅前に車を停めて、五色ヶ原からスゴを経由で薬師岳に登って来た、とのことでした。

 話をしてみると、これがまあ〜面白いとゆうか、味のあるご夫婦で、奥さんと結うかオバチャン(失礼)は登山歴50年にもなると結うことで、地元や東北の山を若い時から歩いておられたそうです。唯アルプスの方に遠征をはじめたのは最近で、御主人との山歩きが楽しみで他に道楽するわけではなし、一年間お金をためてくるのよー、健康が何より、今日も立山にタクシーで戻り近くの温泉に入って、おいしいもの食べて、ユックリ帰ります。

この写真を見たカーチャン、
安房温泉の登山口の 写真より、
エライスリムに見えるなあ〜
山形から来られたもう最高に面白くて、
素敵なご夫婦

 たまたま、劔岳に昨年行ってきましたとのことで、オヤジが「夏場はカニのタテバイ、ヨコバイが混んで大変だったでしょう」と結うと「そうなんだて#$%&QT(山形弁)こいつが前向きに下りるとゆうもんだからダメダ、後ろむけと言っても聞かないのでまいたじゃー#$%)」オバチャン「そげなこといっても、オリャー後ろ向けになんて怖いからいいやだって#$%%&」「やーまのうえでおおげんかさ、あれはまいったじゃー」

 解説すると、どうも帰りのヨコバイに下りる最初の一歩目の時に、オバチャンは前向きに下りたらしいのですが、(ビックリする行動だと思います)おじさんが「ガイドがついていたら、ビックリして首が飛ぶからやめてく〜#$%%と結う#$%&」と三人で大笑いしました。なお、おかしな文字は変換ミスや文字バケではなく、山形弁でよく判らない表現と思ってください。まあ、そんな話をしているうちに、お迎えのタクシーが来ました。記念写真を撮りお別れです。

 オヤジも受付が始まったバスに乗り込みます、今回初めて6泊7日と結う長丁場の山歩き最初歩けるかな〜と心配でしたが、何とか歩きとおせた今、沢山の素敵な人達、励ましてくれた花や雷鳥、何より、悠然と迎えてくれた北アルプスの山々に感謝、感謝。


               【 記: 洛西伊達オヤジ 】