初心者オヤジ艱難辛苦涙の再挑戦
南アルプス甲斐駒岳、仙丈岳

親父の山歩き報告(NO.46)

小仙丈ヶ岳山頂です
にこやかに笑っていますがバテテいます


2011年 9月27日(火)午後出発〜9月29日(木)   洛西オヤジ

コース:
▼9月27日(火)午後出発
戸台口、仙流荘前駐車場で車中泊。

▼9月28日(水)
8時5分始発バスで北沢峠に向かう(本当は6時5分の始発の予定が相変わらずドジや〜) 北沢峠9時出発、昨年と同じ仙水峠を目指します
北沢駒仙小屋 − 仙水小屋 − 仙水峠(10時30分着) 駒津峰(12時10分着) − 甲斐駒山頂(巻き道コースで2時20分着) 駒津峰(16時20分着)− 双児山 − 北沢峠(18時20分)− 長衛荘宿泊

▼9月29日(木)
長衛荘出発5時50分 − 5合目谷コース尾根コース分岐7時50分 − 尾根コース経由、小仙丈ヶ岳9時20分 − 仙丈ヶ岳山頂(10時30分着)ラーメンなど炊いてユックリ食事 − 山頂11時30分出発 − 仙丈小屋(11時45分)− 馬ノ背ヒュッテ(12時30分着)5合目分岐−北沢峠バス停(14時45分) − 辛うじて15時のバスに間に合いました。バスで戸台口に戻り、仙流荘でお風呂に浸かり中央道伊那インターから帰って来ました。





 お久しぶりです、本当に本当にお久しぶりです。今回の報告又大層な見出しを付けやがって、と思われる方がおられると思います。例に拠って長くなりますが、少しご報告させていただきます。

 今年4月17日(日)、オヤジは自分の不注意(考えられない事ですが、バイクの居眠り運転)でガードレールに単独で激突。両膝の靭帯を損傷、特に左は脱臼した為、前十字靭帯と外側靭帯断裂内側と後十字の靭帯を損傷、右も断裂こそないものの損傷をしてしまいました、人生で一番の大怪我です。

 約1ヶ月の車椅子での入院、その後近所の病院に通う事になりました。当初手術が必要と言われましたが、転院しても(膝の専門医を紹介してもらう事に)最初の診断は手術のタイミングを観察しますとの事でした。しかし幸いな事にそれまでの山歩きの所為か、比較的に膝周りの筋力がついているためでしょうか、順調に歩けるようになり、7月の最初ぐらいから、ボチボチ近所の山、ポンポン山や愛宕山に行きだしました。

 もちろんヨチヨチ歩きもいいところで、特に下りはひどいもので時間を掛けてユックリユックリ下りる、それこそリハビリ歩きをはじめました。情けない思いで歩いていましたが、担当医やリハビリの先生は、驚異的とゆうか考えられないことや!と言われました。

 しかし、歳が歳だけに手術しても以前のようになる確約はなく、「好きにしたらええわ」となかば諦めて診ているとゆうのが現実です。8月に入って比良に行きだしました。もちろん歩く時は両膝に保護用具を装着しての歩きです。

 なんでそこまでしてと思われるかと思いますが、オヤジは昨年の甲斐駒での途中リタイアが、どうしても悔しくて、入院中もそのことが頭から離れませんでした。当初は山歩きなどは1年以上後のことで、手術の結果では、もう山歩きは諦めないといけないかもと言われていたのですが、執念とゆうか、意地とゆうか、もちろん考え付くリハビリには努力しました。

 両足に1Kずつウエートをつけて、リュックに20Kの石を入れて近所の11階建ての階段を登ったり、朝晩のウオーキングも時間を30分ずつ延長してみたり、リハビリの先生いわくそれは「リハビリではなく拷問や!」それでも今回、やっとこの山歩き報告させて頂く事になりました。オヤジとしては、特別の思いの山歩きの報告です、御笑覧いただけたら幸いです。





 さて今回の行程です、前回は山梨県側から入ったのですが、今回は長野県側南アルプス林道 バスで北沢峠を目指す事にしました。

 27日、20時頃駐車場に到着したオヤジ、すぐに寝袋にもぐり込んでオヤスミなさいです。28日、初日4時半に目覚ましかけて起床したのは良いのですが、バス停に向かうオヤジに、同じく車中泊している男の人がトイレに起きてきたらしいのですが「早いですね〜今日は6時の始発ないですよ、8時が始発ですよ」、オヤジ「エーそうなんですか」ガク然とするオヤジ。

 しかしオヤジだけではなく、オヤジの他にもまだ二組の人達も6時の始発を待っていました。6時始発は、この時期土日だけは運行されているのですが平日はないのです。オヤジはネットで検索してきたのですが、他の人達もやはりネットで検索したとのこと。印刷した時刻表、なるほど詳細に見ると記載がありました。しかしわかりにくい記載です。

早朝の仙流荘前

 それはともかく、やはりドジで始まる山歩き、相変わらずです。丁度オヤジが起き出してゴソゴソ支度をしている時に、軽いジョギングをするような恰好をした男性が「おはようございます、今日は良い天気みたいですね〜」と声を掛けてきました。オヤジ「えらく軽装ですが、どちらへ行かれるのですか」、はい「北沢峠まで行き甲斐駒に行こうと思っています」。オヤジ「じゃあ同じですねー」、男性「はい、じゃーお先に」とウオーミングを軽くして走り出す雰囲気、オヤジ「あのーまさか走っていかれるのですか」「ええそうです、北沢峠まで20Kぐらいですかね〜」、オヤジ「20Kぐらいといっても1000M以上の標高差ありますよ」、男性「そうですね、もうチョットあるかもしれませんが、アスファルト道でしょう、まあボチボチ行きます」と走り去っていきました。

 唖然と見送るオヤジ、この男性とは後に驚く状況で再会する事に。さて8時05分の始発の為2時間予定より遅れて北沢峠を出発、前回と同じ駒仙小屋の前を通って仙水峠を目指します。

北沢駒仙小屋
なんか改築の相談しているみたい
(野次馬やの〜)

 小屋の前の橋を渡り沢沿いを行きます、いくつもの堰堤を通過、天気が良いので心地よい沢歩きです。

綺麗な沢に沿って気分は良いです 仙水小屋です

 やがて仙水小屋の前に出てきます、早く甲斐駒に行く人はこの小屋を4時頃出るそうです。そして山頂まで行き北沢峠に降りて、その足で仙丈に向かい途中の馬ノ背ヒュッテや、その先の仙丈小屋まで行くそうです。それがどのくらい凄い事か思い知らされる事になるわけですが、まだ、余裕を持って何とか標準の1時間半で仙水峠に到着しました。

仙水峠手前の岩場です
去年も同じアングルで撮りました
進歩がないですな〜
仙水峠です
此処までは比較的楽なんですが
此処からが 本番です

 さて此処からが本番で岩場の多い急な登坂が続きます、今のオヤジには辛い状況です。ボチボチ上からの降りてくる人達に出会います、聞くとほとんどが仙水小屋出発です。4時半頃に出発の人達が多いです、ヨレヨレになって駒津峰に到着のオヤジですが、その少し手前で、なんとあの仙流荘の駐車場を走って出発の男性に 出会いました。「エーホンマかいな」とゆう感じでした、聞くと2時間半掛かったそうです。

 7時半に到着してすぐに甲斐駒に向かったそうです、現在12時過ぎ、なんとここまで5時間ほどです。下まで1時間掛かったとしても6時間で往復、なんといっていいのか、世の中には凄い人がいます。その40代と思われる男性いわく「いやーこの山は初めてなんですが、なかなか厳しいですね〜、特に此処から山頂までが厳しいです、これを登れば自慢できますよ」「じゃあ行きます、気をつけてお先です}と又駆け下りていきました。 脱帽、です。

 見送りながらオヤジはヨレヨレで駒津峰に到着、目の前の甲斐駒の姿が去年の悪夢を思い出させます。今回はユックリ時間を掛けて昼食、よし何が何でもいったるぞ〜。

駒津峰から見上げる甲斐駒
いったるぞー、去年も同じ思いでは
あったのですが
駒津峰です時刻は12時を過ぎています
やはり岩場の登り今のオヤジには応えました

 駒津峰からは岩場を急降下して六万石の岩場に、その先が去年倒れた直登コースと巻き道コースの分岐です、今年は巻き道コースに向かいました、ザレ場が多く気を使います。

今回は去年倒れた直登コースはやめて
巻き道で登ります、こちらはこちらで
ザレ場が続き靭帯の無いオヤジには
神経の使うコースです。
山頂ですが甲斐駒山頂の案内の文字が
消えています、それにしてもピーカン
最高の天気です

 下ばかり見て神経を集中して歩いていたら、山頂への分岐を通り過ぎて摩利支天の方に来てしまいました。あ〜あ時間が無いのに、しかしこの際同じかと、変哲も無い山頂から又分岐まで戻り山頂へ、やっとたどり着いた山頂、思えば永い、一年越しの時間の掛かった登頂です。ジーンと来るものがありますが、まあセンチメンタルな気分はそこそこに、時間が遅すぎます、14時をはるかに回っています。

 この時間誰もいないと思っていた山頂ですが、男性が一人食事をしていました。早速シャッターを頼みました、お互いに遅いですね〜と話したところ「そうですね〜」と余り気にしていない様子、よっぽどのベテランかオヤジ同様初心者か、オヤジが降りる時まだ悠然と食事をしていました。

鳳凰三山観音岳の向こうに見える富士山です
地蔵岳のオリベスクも辛うじて見えています
甲斐駒山上から富士山を撮りましたが
なんだかね〜イマイチデス

 余り感傷に浸っている時間はありません、もう15時前です。下りは直登コースを降りようか迷いましたが、急がば回れの実践、特に今のオヤジには必要だと自分に言い聞かせて、元来たコースを駒津峰まで戻った時には、もう4時を少し回っていました。北沢峠まで2時間の案内、今のオヤジは下りは普通の人の1.5倍は掛かります。そうなると6時を回る事になり、この時点で多少なりとも経験のある双児山コースで降りる事に、それとヘッドライトはつける覚悟で点検して、下りのガレ場を急ぎます。

こちらは白峰三山です北岳に雲が掛かって
います、右が間の岳、農鳥岳と続きます。
又もう一度いきたいな〜双児山の手前から
双子山を過ぎて、少し降りた辺りでやはり夕暮れが迫って来ました、同じならもっと綺麗な夕焼けが見たいところですが
中央アルプス方面

 やはり下りは時間が掛かります、6時を回るとライトをつけて歩かないとヤバイ状況に、なんとかやっとたどり着いた長衛荘、食事も終了していて、受付してもらったのは18時20分でした。食事はもう無理とゆうことで、朝食用の弁当(朝食は弁当で前夜のうちに配られる)を二つ頼みますかとゆうことでしたが断り、一つだけ頼み、たまたま残していたオニギリがあったので、それと非常食のカロリーメイトで何とか済ましました。

 小屋は最近改装したそうで、一人ずつカーテンで仕切りが出来るようになっていて、なかなか快適、特にトイレは綺麗な水洗で、紙もそのまま便器に流してよいとゆう事でした、山小屋では珍しいです。

 オヤジが最後の到着者と思っていたら、消灯時間を(20時)過ぎてまだ一人たどり着いた人がいます。寝床にもぐりこんでいたオヤジですが、声の感じではどうも山頂で悠然と食事をしていた男性のようです。オヤジより1時間半以上遅れての到着、中々の人物です。相当不安だったようですが、まあいろいろな人がいます、だから山は面白いのですかね〜オヤスミなさいです。

29日、2日目

 小屋の朝は早く、4時になると回りがガサガサとざわつきます。高いびきで寝ているつわものもいますが、オヤジも5時前に起きて、そそくさと朝食弁当を食べて支度に掛かります。6時前には出発出来ました、有り難かったのは不要な荷物は預かってもらえたこと、親父も着替えなど預けました。気分的にリュックが軽くなった気がします、長衛荘の前の登山口から、又ヨタヨタと取り付いていきます。

天気は良い気配です
気分の良い樹林帯をヨタヨタと
五合目の分岐です
直進が尾根コース、右に谷コース

 今日も天気は良さそうです、樹林帯の中ではイマイチ判りません、気配は感じられます。自然と気分も良くなってきます、やはり早く出発できた事も影響しているのでしょう。結構きつい樹林帯が続く登り、ヨタヨタと五合目に到着。さて、尾根コースに行くか沢に沿っていくコースにするか、小屋は三つほどありますが、すべて谷からのコースにあります。オヤジはどの道周回するつもりでしたので、例に拠ってストック任せ放り投げた結果、尾根コースで登る事になりました。

 これは正解でした、尾根コースは結構厳しい登りで、岩場も厳しい状態の所があります、(甲斐駒に比べたらマシですが)降りてくるのは、オヤジには辛かっただろうと思います。ボチボチ、バテてきたオヤジの目の前に、森林限界を過ぎ綺麗な青空と、素晴らしい展望が開けてきました。ラッキーよかった、よかった、それにしてもバテテきたな〜。

森林限界の辺りから展望が開けます
前方に昨日行った甲斐駒岳がそびえます
鳳凰三山の遠望です

 尾根コースの厳しい登りにヨレヨレになりながら、何とか小仙丈岳に到着前にそびえる仙丈ヶ岳、いやーまだあそこまでいくのかいな〜、いくしかないな〜。

北岳と富士です 仙丈ヶ岳山頂、空の青さは怖いほどです

 尾根コースなかなか厳しいものがあります、しかし昨日の甲斐駒とは違い踏み込まれたコースとゆうのでしょうか、山頂近くになるにしたがって階段状に整備してあったりして、バテたオヤジのように体力のない登山者にはありがたいです。標高は甲斐駒より高いのに短時間で登れる所以でしょうか、しかしオヤジにはそれでも強烈でした。ヨレヨレデたどり着いた山頂、雲ひとつ無い360度の展望、イヤ〜これがあるからくそエライのに来るのでしょうね〜。

中央アルプスの山々と
右奥に北アルプスの一部が見えています

 昨日と違い時間に余裕があるので、久しぶりにラーメン炊いてユックリ食事です。しかし又もやドジっているオヤジ、そうや標高3千やな〜ガス通常のカロリーやな〜、炊けるのかなあ〜高カロリーのボンベ持っているのになあ〜(家に)アホか、以前ものすごく時間が掛かったのを思い出したオヤジ、しかし心配をよそに少し時間は掛かりましたが、ラーメンは無事炊けて、いただきま〜す。

 山頂にはオヤジのほかに女性二人連れが二組、そのうち一組は親子連れで、もう一組の女性達も「いいな〜うちの母親なんか絶対無理」とうらやましそう。結構家族と来たいな〜と思っているのや、二組の女性達は意気投合して「今度何処かご一緒しましょう」と早速メールの交換、いや〜とにかく最近山への女性達の進出は凄いものがあります。

 しかも若い女性たち、登った時間など聞くと、それはそれは、オヤジなど足元にも及ばないタフさです。山ガールなどとゆう呼び方は失礼な気がします。さてお腹も膨れて展望も満喫、ボチボチ下りましょう、目標は15時のバスです。帰りは谷コースです、比較的足場もよく今のオヤジには助かる状態で、とはいえやはり下りは辛いオヤジ、慎重に時間を掛けてヨタヨタです。

山頂直下にある仙丈小屋です
今年改装したての綺麗な小屋です
今度は泊まりたいです
馬の背ヒュッテもなかなか魅力のある小屋です
山小屋らしい小屋です

 丁度仙丈小屋の手前で上の方から微かに「オーイ」と呼ぶ声が聞こえます。見上げると先ほどの親子連れではない方の女性達が、上の稜線から手を振っています。オヤジも喜んで手を振りますが、本当は「オーイ」はだめなんですね〜「ヤッホー」でしょうね〜、まあそんなうるさい事はいわないで、ひたすらうれしがるオヤジです。

 慎重に時間を掛けて、やっと5合目の分岐にたどりついたオヤジ、先ほどの女性達はどうしたのかな〜と、実際はそんなものはるかに先に通過していた彼女達。後ほどバス停で合って聞いたら、オヤジより1時間ほど先に下りて、長衛荘でビール飲んでいたとゆうから、いやはやマイッタマイッタ。

薮沢から見上げる甲斐駒ヶ岳、
人間欲がでるもので
もう少し紅葉してくれていたらなあ〜

 そんな事はつゆ知らず、ひたすら15時のバスに間に合うように降りるオヤジでありました。何とか14時45分到着。やれやれ、長衛荘に預けていた荷物を引き取り、バスに乗り込んでいると先ほどの二人連れの女性達、が乗り込んできました。今回の山歩き、オヤジとしては格別な思いがありましたが、世の中凄い人達がいるな〜と実感させられた山歩きでした。

 この女性達の若さ溢れるパワー、マラソンで甲斐駒に駆け上がった男性、今のオヤジにはうらやましいかぎりですが、その反面オヤジは今までの山行きにはない満足感が胸に涌いてくるのを感じながら、バスに揺られて戻ってきました。

 仙流荘の湯船に浸かっていると、やっぱり山歩きはエエなあ〜、もう次の山歩きが気になるオヤジではあります。

 今回の山歩き、昨年リタイアしたのが悔しくて意地で登った甲斐駒ヶ岳、しかし山は、大自然はそんなオヤジのちっぽけな意地や見得やうぬぼれを、素晴らしい展望の彼方に吹っ飛ばしたくれました。なにより大怪我をしてベッドで打ちひしがれていた、オヤジを温かい言葉で励ましていただいた、師匠はじめ、友達、家族、担当医先生、リハビリの先生、すべての人に心から感謝、感謝、


                             【洛西オヤジ記】


  後記:
登頂おめでとうございます。 怪我をされてから、つらいリハビリを乗り越え、よくここまで回復されました。こちらこそ、オヤジさんの回復経過のメールが励みとなりました。これからも無理をなさらずに山歩きを楽しんで下さい。 「親父の山歩き報告」ありがとうございました。

                                              道子