八ガ峰・知井坂

知井坂表示板


平成24年6月1日(金) 晴           長岡山人

コース
知見口バス停歩行開始9:10−八原登山口10:15−知井坂峠11:30−八ガ峰山頂11:50(昼食20)−こもれび広場12:45−堂本登山口14:00−「あきない館」バス停14:35





 八ガ峰とその南北に走る知井坂は行ってみたいところだった。金久氏の『北山の峠(中)』の表紙にもなっている。研究すると、公共交通機関利用でも1日で行けそうだ。

 7時7分に京都駅を出るJR山陰線に乗り、園部駅に7時52分下車、西広場から出る南丹市営バス宮脇行きに乗る。(注1)

 8時39分に終点宮脇で下車すると乗換バスが来る。知井行きの市営マイクロバスだ。終点の知見口に9時3分に到着。ここから知見谷川に沿って1時間歩き、最奥の八原集落に到着する。(注2)

 集落の最奥部の笠谷橋を渡ると、石碑が建つ登山口であり、大きな案内板が出ている。八ガ峰から南に延びる尾根の最南端から知井坂は始まる。尾根にジグザグに付けられた道はなだらかで歩きやすい。かって大八車が往復したと思われる幅の広さと緩やかな傾斜だ。

石碑と案内板のある登山口 うまく作られた知井坂

 植林地から自然林に変わり、傾斜がさらに緩むとスキー場跡地を経由する。大野ダム雨量観測所を過ぎ、道が尾根の西側から東側に移る頃、送電線の向こうに八ガ峰の前衛峰が見える。道の左には「南無妙法蓮華経」と書かれた石碑もある。

壊れた小屋が残るスキー場跡地 経文が刻まれた石碑

 真北に伸びる緩やかな尾根筋をたどり、若丹国境稜線手前の坂を一登りすると知井坂の峠である。登山口から1時間少々であった。北山の登山路の中でも、息も切らさず、こんなに自然な歩みで峠までたどり着けるところは知らない。西の鯖街道として物流の中心路であったことがよくうかがえる。登山路というより都大路の快適さであった。

峠の直前 登り着いた峠

 峠からは、東西に、若丹国境尾根縦走路がはっきりと付けられている。峠とはいっても乗越地形ではなく、尾根に沿ってしばらく東に進んだ後、知井坂は緩やかに下っていくが、その前に、八ガ峰に登らなければならない。

峠から西方の縦走路 峠から東方に続く知井坂

 峠から10mほど歩んだところに「知井坂」と書かれた表示板があり、そこから尾根のコブに5m直登すると、石仏と石塔がある。お参りしたあと知井坂に戻って進んでいくと、「八ガ峰」と書かれた分岐がある。そこからが八ガ峰への登りとなる。

峠の東方のコブにある石仏と石塔 八ガ峰への分岐

 山頂まで20分ほどだが、ここだけが1日で登りらしい登りであった。(それでも緩やかだったが。)関電送電鉄塔、前衛峰をすぎると、てっぺんが丸い八ガ峰山頂に登り着く。360度の素晴らしい展望だ。天気は良かったが、遠くがかすんでいて、若狭湾は見えなかった。八つの国が見えるのが名前の由来らしいが、はて八つとは………。南方には、先日歩いたホサビ山から平屋富士の稜線が見える。丹波山地、北山北部、芦生から百里ヶ岳に延びる山々が見渡せ、比良山系もかすかに見える。

八ガ峰頂上直下 八ガ峰頂上

 山頂からは東に若丹国境縦走路がはっきりと続いていた。近年は、車が使えるため、五波峠からのピストン登山が一般的なルートのようだ。

 おにぎりで簡単な昼食を終る。山頂から北方稜線を下る道もあるが、本日の目的は知井坂縦走だ。戻って下り始める。

頂上から東方、五波峠への縦走路 頂上から知井坂にバックする

 道は八ガ峰の北西山腹を緩やかに巻いて下っていく。するとすぐに、古道ではなく、ブルドーザでならした道に変わった。かっての古道の位置に忠実に作られており、道幅も狭く、だいぶ古くなって自然道に近づいてはいるが、足下の感触が全く異なる。残念なことだ。林業振興のためか、関電鉄塔の保全のためか。

 送電鉄塔を過ぎ、しばらく下ると平坦地になり、「こもれび広場」と案内板が出ている。ここから八ガ峰に直登する道も分岐している。シャクナゲがまだ残っていて、しかも真っ赤な色なのは始めて見た。

人為が加わった知井坂 知井坂と山頂直登路との分岐
こもれび広場の案内板 真っ赤なシャクナゲが残る

 道は北方に直進し、しばらくは幅の広い道となる。下っていくと間もなくさらに立派な林道に出会う。西の小松谷に降りる林道で、金久氏の本にも書かれているからかなり昔に作られたようだ。

しばらくは幅の広い道が続く 林道との出合。直進する

 林道を越えて尾根に忠実に進むと、再び古道が現れる。やはり来たかいがあった。掘りこまれた道が尾根に沿ってゆっくりと下っていく。途中に、東側の染ガ谷に降りる関電巡視路の分岐がある。国土地理院地図の点線路である。しかし尾根に沿って進む。金久氏は「巡視路から離れると生え込んで荒れてくる」と書かれているが、なんのなんの歩きやすい。相当の登山者が歩き続けているとうかがえる。

再び昔の知井坂が続く 染ガ谷に降りる関電巡視路分岐

 尾根先端で道は二つに分かれるが、東北に延びる支尾根を下る。降り口も巧みに道が造られ、自然な感じで降り着く。そこは染ガ谷川と槙谷川の合流点東側で、まさに尾根末端という場所である。

堂本登山口(石碑コース) 降りてきた尾根を振り返る

 降りたところが堂本の集落である。時間は14時。標準コースタイムで歩いたつもりだが、予想より相当早い時間だ。これなら一つ早いバスに乗れるかもしれない。国道162号まで急ぐ。トンネルの東出口に「あきない館」バス停がある。14時39分のバスに間に合った。(注3)

 JR小浜駅で降り、JRバスの近江今津行きに乗換え、JR近江今津から新快速に乗ると、17時57分に京都駅に着けた。

 今回は初めての道なので行程を急いだが、もう一つあとのバスに乗る予定(注3に注意)にし、ゆっくりと休憩を挟み、最後はバス乗場手前の「あきない館」で買い物の時間調整をするのもよい。その場合は京都着が20時過ぎになる。

 知井坂の語源は、流布しているような苦しさを表す「血坂」ではなく、澤潔氏が指摘されているように「茅(ち、ちがや)」の生い茂った地とするのが正しいと感じられた。(『京都北山を歩く(3)』参照)

 金久氏が書いた頃は、道の両側が笹に覆われた知井坂であった。今、笹はなく、きわめて歩きやすくなっている。その原因が、酸性雨と、鹿の食害と、原発電力送電線保守であるなら、それは果たして喜ぶべきか、悲しむべきか。



 (注1) バスの時間は、平日と土日曜で違い、またJRのダイヤ変更に応じてたびたび変わるので、自己責任で確認してください。 参考HPは以下のとおり。

JR園部駅・日吉駅〜美山かやぶきの里方面のバス案内
 ↓
http://www.city.nantan.kyoto.jp/www/event/104/003/003/1940/00003634001.pdf



  (注2) 知見口から八原までの南丹市営バスまたはオンデマンドの定時運行タクシーもあるが、時間が合わない。



  (注3) 平日は、16時56分と19時16分のバスもあるが、土日曜はこの時間が最終となるので注意。 参考HPは以下のとおり。

乗合バス(流星)運行時刻表
 ↓
http://www.daiwaobama.co.jp/images/pdf/ryusei_zikokuhyo.pdf


                           【 長岡山人 】