鵜川左俣・滝山・トビ岩

トビ岩


平成24年11月13日(火) 晴      長岡山人

コース
JR北小松8:00―鵜川左俣8:50―嘉峯ヶ岳南縦走路11:40―滝山11:55―東南尾根北小松下山分岐12:20−オトシ13:00−東南尾根北小松下山分岐13:55−トビ岩分岐14:30(往復60)−JR北小松16:20





 比良山系・鵜川左俣は、渓流遡行の場所だとばかり思っていたが、草川啓三氏の近著『登る、比良山』で歩行路もあることを教えられ、たどってみた。

 JR北小松に降り立ち、湖岸道路を北上。同志社大学の施設入口のすぐ北に、左斜め上に登っていく舗装された農道がある。防獣フェンスとJRの下を抜けて進む。2.5万地図の実線が消えるところから道は地道になる。しかし使い込まれた太い道で、潅漑用パイプが横を走っている。右岸山裾に沿って、鵜川を高巻いて進んでいく。

湖岸道路からの入口 パイプが走る道を登っていく

 鵜川の両俣が分かれるところは、谷が深く、両岸の木が生い茂っているためわかりにくい。対岸を走っているはずの林道も見えない。進んでいくと、川との高低差は少なくなり、同じになったところにパイプの取水口がある。鵜川の渓流はきれいで、沢登りの初級体験場とされているのもうなずける。夏ならさぞ爽やかであろう。

取水口のある小滝の左横を登っていく きれいなナメ

 ここから道は悪くなる。川沿いのコケの生えた石は滑りやすい。道自体ははっきりしていて、迷うことはない。山仕事に使い込まれた道で、立派な石橋も設置され、労働の場所として重視されていたことがうかがえる。

でっかい石橋 川を横切るところも随所に

 320m地点で左からの谷と合流する。本流はまっすぐに行くのだが、すぐ先に10mと6mの二段の滝がある。そのため、道は左の谷に入るように付けられ、すぐに右の山肌にバックして登っていき、滝を高巻くようになっている。

左に入ってすぐ右上に登る 6mの上段の滝

 その先、道は何回も流れの右岸、左岸に渡り返したり、水際をへつったりして登っていく。変化に富んであきることがない。ただ、雨後の増水時には避けた方が賢明なルートであろう。谷は長く続き、約500m地点から植林帯に入る。

川に沿って道は登っていく 植林帯の中の道

 ここから谷は浅く、平坦な登りが続く。左右から谷がいくつも入り込んでくるが、流れの太い、道がたどれる方を選んで進む。ようやく、稜線が見えてくる。最後の谷分岐の左を選んで登り詰めると、谷入口の標識があった。

稜線直下の疎林 稜線からの入口の標識

 そこが嘉峯ヶ岳(かねがたけ)南方の、リトル比良の縦走路である。滝山までのひと登りが急である。登ったところに標識があり、縦走路は右に90度曲がって進んでいく。その標識の後ろをひと登りすると滝山である。自然林が美しく、黄葉が見事であった。

標識の後を登れば滝山 見事な一面の黄葉

 滝山から東南に延びる平らな尾根を進んでいく。踏み跡は明瞭である。北側の展望が開け、リトル比良・鳥越東尾根縦走路や琵琶湖がきれいに見える。650mのピークまで進むと、右に明瞭な尾根が分かれる。木にテープも付けられ、踏み跡もある。(この尾根をあとでたどろうとしたが失敗した。)

滝山からの尾根はなだらかで快適 右尾根分岐のテープ

 北小松に降りるには、650ピークを直進してその先の小ピークまで進む。そのさらに先の左に、谷に降りていくように道が付けられている。

 しかし今日は、その前に、最近の昭文社地図で追加表示された破線路をたどって、一度、オトシまでの道をたどってみることにする。先の北小松への下山路に入らず、南方の尾根をたどっていく。入り口がわかりにくいが、尾根を忠実にたどれば踏み跡が出てくる。黄色の二重テープが随所に付けられているので、それが頼りになる。踏み跡が無くなり、ヤブこぎが始まったら進路を間違えているので、明瞭なところまで戻って、踏み跡とテープを探すことである。

ピンクリボンが北小松への下山路分岐 黄色二重テープが目印

 662mピークの手前は生え込みがきついが、ピークの左(東)側から回り込むようにしてたどり着く。その先は90度進路を変え、西に踏み跡が続く。谷状の地形になり進路がわかりにくくなるが、2.5万地図の650mにぽつんと記された極小ピークをめざす。大きな岩がある。その右を周り込むようにすると明瞭な踏み跡があり、尾根に沿って降りていく。その後、踏み跡は谷をたどるようになり、わかりにくくなるが、降りていく。

622mピークで西に転じる 快適な谷を下る

 オトシに降りた点には、登り口の表示は無い。大きな岩の左脇の細い木に色あせたテープがあるがわかりにくい。そこからわずかに下った所に、正規の登山道があり、「涼峠・寒風峠」の標識がある。

下山地点の大岩。左の木にテープ 正規の登山道標識

 再び、オトシの谷底を遡る。実は、先に書いた、650mピークから西に延びる尾根を登り返したかったのだ。しかし、目的とした尾根の登り口の選定に失敗し、一つ手前の尾根を登ってしまった。結果的に、先ほど下った尾根の途中に登りつき、進んだ。

 先ほど見送った、北小松への下山路まで帰り、下山する。道は最初は明瞭だが、谷に近づくと生え込みがきつくなって脇をたどったり、倒木を迂回したりして不明瞭になるところもある。しかし、古道の続きに帰り、古道から離れないように進んで行くことがポイントである。左からの谷が合わさる地点で渡渉して、道は谷沿いから山沿いに変わり、再び明瞭になる。

 尾根の鼻先を周り、牛山の長大な東西尾根の下を東に緩やかに下っていく。途中、谷で三角形に曲がる地点が、「扇の間」と呼ばれているらしい。その先で道は下り始める。480m地点で、右上方に分岐する道がある。これがトビ岩への分岐である。

倒木もある下山路 トビ岩への分岐のペンキ印

 20mほど登って、道は東方に進んでいく。これはトビ岩往復のための道で、辛うじて通れる程度の道である。水平道が終ったところから急路を下っていく。50m下るとそこがトビ岩だ。突然飛び出す大展望。天候が悪くなって遠望できなかったのが残念だ。トビ岩往復には約1時間かかり、急路もある。時間配分をよく考えて登山計画に組み込まなければならない。しかしその苦労をする価値のある大展望だった。

トビ岩へは細い道を進んでいく トビ岩からの大展望は雨模様で、
写真ではイマイチ

 元の分岐まで帰り、再び下り始める。道は太くて明瞭だが、雨で洗われて岩がむき出しになり、倒木もあって歩きにくい。しかし道は丁寧にジグザグに付けられており、着実に高度を下げていく。尾根を下りきった鞍部で両側に道が分かれる。右を下るとすぐに北小松ヒルの別荘地に降り着く。別荘地の東側外周道路の東北角の地点である。登る時の入口はわかりにくいが、ピンクのテープがある。北小松の駅まで、舗装の急路を下っていく。

北小松ヒルからの登山口 楊梅滝への道から北小松ヒルへの進入口

 比良には、まだまだ知らない、良い谷、良い道、良い森、良い眺めがあった。


                                 【 長岡山人 】