貴船から芹生峠を周回しました

 
大パノラマが広がる


2013年6月8日(土)晴  29℃  ikomochi

コース:
出町柳8:30発(叡山電車)⇒貴船口着8:57=9:00〜奥貴船神社(鼓ヶ岩)9:50着=10:00発〜ザラ谷〜途中休憩〜二ノ瀬ゆり道合流12:50〜滝谷峠13:10=13:25〜尾根道〜芹生峠分岐14:25〜芹生峠15:00=16:00〜貴船神社17:00⇒タクシーで帰路へ








 足の痛みも治ったし、トレーナーに計測してもらったら身体の力がだいぶ抜けてきて歩き方も楽そうになってきたらしい。軽くて足に合った靴も手に入れた。ヒルが湧き出す前にひと歩き、貴船からぶらぶらと尾根道を芹生峠へと歩いてきました。

 かつて家族と一緒に直谷から柳谷峠の尾根に登り、芹生峠、滝谷峠へと周回を試みたが、暑いのと思ったより時間がかかりそうだったのとで、芹生峠を見下ろすピークから来た道へと引き返したことがあった。以来、ピークから滝谷峠への道が気になっていたので、リハビリには手ごろそうだと行ってみた。

貴船へ 川床も始まって

 貴船の手前で気温は21度を示し、空天気が続く今日も暑くなりそう。貴船口から貴船行きバスがいたが、靴慣らしも兼ねて、川沿いの車道をぶらぶら歩く。さすが京都の奥座敷、貴船川の川面からひんやりと冷たい風が吹き、空気がしっとりと心地よい。貴船神社を過ぎたあたりから、料亭が立ち並ぶ。軽トラが走り、職人さんが大勢行きかっている。植栽の手入れや川床の準備が始まっているようだ。すでに川床に机が並び、お客を迎える準備万端の店もある。残暑にかけて涼を求めて大人気の貴船は、渋滞の季節を迎える。

小町藤 つづみヶ岩

 奥貴船神社の鳥居手前、大きな岩「鼓ヶ岩」までひたすら足を運んできた。一旦腰を下ろして、靴の調整をする。舗装道を歩いて来たためか、足先が痛むので、裸足になって足指体操でほぐす。もしやの用心にヒル避けスプレーを入念に吹きかけ、手袋、スパッツもつけた。

古道へ 倒木で荒れている

 鼓ヶ岩のトイレ横からザラ谷を登る。地形図に破線の道で描いてあるこのコースは、今西先生たちもゆり道や直谷への道として歩かれたようだ。今はゆり道へ直接つなぐ急登がよく使われているようだが、ゆるい谷間を辿るこの道がわたしは好きだ。谷間には堆積した杉の葉陰にヒルがうじゃうじゃいて、梅雨以降はお勧めできないが、今日の地面はかっさかっさで、ヒルの姿はない。

 小さな流れ沿いに15分も歩くと、木の橋がかかっている分岐だ。踏み跡を辿って、右側の谷間へ入る。早速、倒木の山を踏み越えて進む。以前よりも倒木が増え、さらに荒れている。倒木を越えるのもめんどくさくなって、斜面をよじ登って支尾根の先端に直接登ってみよう。等高線が込み合っているものの、以前も斜面を登ったしと、鹿の道を辿りながらよじ登ったのだが。

 新しい靴は、まずもってケラバがないので蹴こみができない。乾燥した土に靴底が乗っかってくれない。おまけに、下草がほとんど枯れていて羊歯の茂みを頼りに登ったものの、3分の2くらいのところで、乾いた地面と急斜面に立ち往生してしまった。いつも履いている皮靴ならエッジをたてながら無理やり登っただろうが、このいかにも頼りなさそうな靴ではすべってしまいそう。せっかく20分ほど奮闘したのを諦めて、5分でまた先ほどの谷間へ逆戻り。

萱の大木 木の間越しの緑

 緩やかな谷の源頭部をゆっくり登る。先ほどの奮闘ですっかり腹ペコ。腹が減っては戦が出来ぬ。倒木に座って早昼とした。大きなおにぎりがお腹にしみる。遠くでカッコウ カッコウとしきりに鳴いている。近くではホーホケキョ。いいなあ 山って と嬉しがっていたら、すぐ上のほうでしきりに「ワンワン」とか「ゴゴゴーッ」と大騒ぎ。誰か動物がいて、警戒しているのかもしれない。イノシシか 抱卵中のヤマドリかな。誰も突進してくる様子もないので、しばらくのんびりくつろいでから、東側の支尾根頂上に行ってみる。尾根の背一杯に根を張った、大きな萱の木がある。しっかり踏み跡のある支尾根の先端から鼓ヶ岩の方に直接道が続く。この先は行ったことがないので、また調べるとしよう。

 支尾根の付け根の鞍部から眺めると、北方向に緑一杯の稜線が続く。目の前の大きな塊は今日の目的地だ。わくわくする。花びらが落ちているので辿っていく。頭上には白い花をたくさん吊り下げたエゴノキ。この花に初めて出会ったのは、卒塔婆峠からババ谷へ下ったところだった。毎年見に行っていたが、卒塔婆峠の広域林道が開通してから、とんとご無沙汰している。どうしているだろうか。周囲を見渡すと、エゴノキがたくさんあって、どれも花ざかり。貴船の谷から吹き上げる風が心地よくて、木の下に座ってしばし和む。カッコウや鶯の鳴き声が響く。こういう時、山に来てよかったなあ と幸福感を味わうのです。

初夏の花 エゴノキ 気持ちいい!

 ザラ谷だけでもう12時を回ってしまった。随分とゆっくり過ごしてしまった。ピッチをあげよう。杉林の斜面をしばらく登っていくと、いきなりポンとゆり道に出会う。いつも思いがけずという感じで、あれ?と戸惑ってしまう。

植林地を登る ゆり道に出る
滝谷峠

 今日もあれ?と見回していたら、滝谷峠方面から女性二人がやってきて、いきなり現れたわたしにびっくりしている。その後も男性のグループがやってきた。滝谷峠でも女性2人が休憩中。三重から来たというその方たち、山の様子が分からないので不安です と話していた。鈴鹿と違い、標識もないしと。貴船口駅へ下る近道を教えたが、分かっただろうか。

 滝谷峠から尾根方向を見上げると、雑木林の中に一直線に山道が見える。かつては、笹に覆われて道も定かでなかったように記憶しているのだが。

 杉林が多かったゆり道から一転、柔らかな若葉越しの陽を浴びながら、緑のトンネルを歩く。緩やかな登りで、鞍部には大きな松などそびえ、明るい源頭部が広がり、奥山に来たようだ。 しかし、さっきから気になっているのだが、紐にビニールテープにと印がべたべた多すぎる。紐類は劣化して切れるし、少し緩めれば幹を圧迫することも少ない。が、ぐるっと巻きつけてあるテープはどうにもならない。またぞろテープ撤去にかかる。いつも思うけれど、すでにある印と同じようなところにべたべたと更に印をつける人たちは、どんな考えで歩いているのでしょう?疑問。

若葉のトンネル

 テープをはがしながら歩いていたら、男性二人連れが下ってきた。「掃除してくれているんですか?」「ええ、このテープが曲者なんですよね」「そうか 幹を圧迫ね。でも、テープがないと歩く人が困っちゃう」「いやあ こんなはっきりした道は大丈夫ですよ。地図持ってきてくださいね」そんな会話で別れたが、帰宅してネットでこの尾根の記録を読んだら、「標識のない道なのでテープを頼りにして歩く」とあった。紐は撤去していないので、これからも充分安心して歩けますが・・・。テープ頼みの怖さを、ご存知でしょうか?

 支尾根を登り詰めると、伐採地に出た。魚谷山が目の前にどーんと迫ってくる。鴨川から眺めると丸い山頂が覗くが、ここから眺めると迫力がある。南西に目を転じると、愛宕山の大きな塊、遠くに小塩山など西山の山並み、その奥にうっすらと見えるのは、高槻の山とか半国山とかだろうか?思いがけない大パノラマに驚いてしまった。しかし、暑い!気温は30度はあるかも。2リットルほど持ってきた飲み物もわずかしか残っていない。登りで腿が痙攣するたびにポカリを含み、休み休み登ってきた。

芹生峠一帯は大伐採中 ジャケツイバラ

 山道を西へ直ぐに、芹生峠への分岐に到着。先ほどからぶーんぶーんと響いていた機械音、なんと峠の東斜面が一面に伐採されているではないか。眼下には、峠の車道と標識がはっきり見える。尾根の稜線から峠側が大伐採中だ。一帯はどこか会社の持ち物だと聞いたことがある。杉も戦後植林して50年以上経ったし、伐採の時期ではあるが。あまりの光景にびっくりしてしまった。

芹生峠へ下る テンナンショウ
芹生峠

 分岐をさらに稜線まで登る元気もなく、間伐材が転がる杉林を下った。すぐに峠の車道に降り立った。峠の脇にはユンボやら運搬用のクレーンやら設置されていて、当分続く大作業のようだ。どんなところまで作業しているのか、少し芹生のほうへと下ってみた。車道脇に広がる草むらには、二人静の群落が咲き、タニギキョウ、テンナンショウなどの花も細々と咲いていた。でも、ここもいずれ伐採で荒らされるのかもしれない。

 草むらで、ブヨの軍団に取り囲まれてしまった。顔やら耳やら狙ってくる。刺されると痛いので、タオルを振り回しながら追い払うが、汗くさい匂いに引かれてかしつこくつきまとう。タオルを振り振り、峠から貴船を目指す。バイクがぶーんぶーんと走る。どうも峠の上り下りを楽しんでいるようだ。暑さとエネルギー切れで疲れた足を引きずりながら、長い長い坂道を下る。時々車が通り過ぎる。「乗せてくださーい」ヒッチハイクをしたいところだが、みなさんカップルで楽しそうに走り去る。

 この峠の下りは毎回疲れ果てていて、楽しい思い出がない。コース取りを逆に、帰りが山道のほうがよかったかなあ と悔やみながら、幾度もカーブを曲がってやっと芹生峠のお地蔵さんに挨拶して、それからまた延々と下って安造ヶ谷の入り口に着いたらもうすぐ滝谷峠の入り口。ゆっくり遊びすぎたので、貴船に着くのは5時を回ってしまう。バスも終わってしまう。

ミズタビラコ タニギキョウ

 あー 貴船口駅まで遠いなあ。とぼとぼ とぼとぼ歩いていたら、目の前をふうわりと飛び去ったのは えっつ アサギマダラじゃない!ほんと? ご褒美やったかな? 奥貴船神社を越えてしばらく、やっと自販機があった。冷たいポカリをごくごく飲み干すと、なんだか元気が出てきた。ま 仕方ない、歩くか と貴船神社にむかって歩を進める。

 連なる料亭は夜のお客がちらほら到着し始めたようで、なんとなく華やいでいる。いいなあ 食べたいなあ と眺めながら前方を見ると、今しも客を送ってきたタクシーが引き返そうとしている。あー 天の助け。大急ぎで手を振って、車上の人に納まった次第です。エネルギー切れのわたしは、そのまま上賀茂御薗橋の中華「サカイ」まで直行し、ラーメン餃子ライスで生き返りました。(ここの冷麺 美味です)

 ぶらぶらと長時間うろついてしまった。足先も痛いし後日の膝痛も怖い。トレーナーが、まずはアイシングして炎症を抑えるとよいですよと教えてくれたので、保冷材をたくさんタオルにくるみ、冷たさで痛く感じるくらいまで、膝や腿、足先など痛い箇所を冷やした。いつもは銭湯で温めてマッサージだけだったのが、逆効果だとのこと。20分も冷やすと、熱が取れた感じ。足がうずくこともなく、ゆっくり眠った。翌日膝も痛まなかった。

 足の痙攣は、筋肉疲労を起こしているせいで、まずは立ち止まってストレッチする。冷えピタなどで冷やすとよい。最近は、塊を叩けば氷の替わりになる製品もあるのだとか。シップ薬は、帰宅してから治療として使うそうです。

 トレーナーの先生が、「三浦雄一郎さんのように、具体的な目標を持って具体的なトレーニングをしながら、目標にむかうことはとても大切ですよ」と、お尻を叩く。わたしも、また回を重ね思考錯誤しながら、山歩きを楽しもう。


                        【 記: Ikomochi 】