寺谷峠

 
北側は立派な古道が残っていた


平成25年5月31日(金) 快晴             長岡山人

コース:
バス停大悲山口9:35−寺谷峠取付11:10−寺谷峠11:45−コクンド谷両俣分岐13:00−寺谷峠14:25−寺谷峠取付15:00−バス停大悲山口17:00





 金久昌業氏の『北山の峠(上)』に、鞍馬から滋賀県高島市への交易の道として紹介されている寺谷峠である。峠から北は歩いたことがないので歩いてみたが、立派な古道が残っていた。コクンド谷の砂防工事も一段落し、道も安定したと思われるので紹介したい。

 京都バスの大悲山口で下車し、東に舗装道を進む。大悲山峰定寺の前を通り、ナメラ谷分岐から寺谷を北上する。オコ谷、灰ヶ谷を左に見て進み、国土地理院地図に点線で記されている寺谷峠の取付に着く。ここまでの林道はきれいに再整備されている。

大悲山峰定寺 寺谷峠取付

 峠への取付地点では道は左岸なので渡渉する。渡渉点には以前はテープがあったが、なくなっていた。林道を横断する溝が切られている場所で、対岸には大きな杉の群落がある。地理院地図の位置より20mほど奥である。

 川を渡り、上流方向に進むとごく小さな谷があり、そこをまたいだところに尾根があり、尾根に取り付く。地理院地図と異なるので注意のこと。尾根を5mも上ると、道は川に沿って平行に斜面を横切って上っていく。崩壊が激しく、かろうじてわかる程度の踏み跡である。峠道でこの部分が最も悪く、道が崩れているので、靴の左エッジを食い込ませて足早に進む。(初心者は危険)

この尾根に取り付く かすかに踏み跡

 20〜30mも進むと、道は左に切り返し、斜面を登っていく。尾根筋まで戻ると道は少し安定し、あとは尾根筋をジグザグに上っていく。道が崩れて生え込んでいるところもあるが、注意して上っていく。植林地帯まで上ると道形がはっきりしてくる。

崩れた斜面の道 次第に道ははっきりと

 かって山火事があったらしく、黒こげの大木があちこちに残っている。道は地理院地図と異なり、尾根筋をジグザグに登っていく。傾斜が緩やかになると道形がようやく古道らしくなる。峠の手前で緩やかに右上に登り、峠に着く。

山火事の跡 峠のすぐ手前

 峠は東西尾根の一部といった感じで、峠らしいへこみはない。峠の東南には峰床山がそびえ、北側には木立の間にかすかに三国岳が見える。峠から西方向をたどると、桑谷山まで歩けるし、東方向には峰床山まで歩いたネット記録もある。(注:尾根沿いは歩きやすいが、方向転換点が多いので、地図でじっくりと確認しながら進まなければならない。)。

寺谷峠 登ってきた方を振り返る

 峠には、首のない地蔵があり、峠の位置と歴史を示している。金久氏が歩いた頃あったブナの木は枯れている。久多の村も全く見えない。峠のすぐ反対側には下に降りていく道がついているが、この道はすぐに消えてしまうので入らないこと。

峠のお地蔵さん 北側に乗り越える部分

 峠から東に10mも尾根を進むと、尾根を乗り越して北側の斜面に緩やかに降りていく道がある。注意して探さないとわかりにくい入口である。この乗越作道方式は、若丹国境尾根の知井坂、棚野坂、横尾峠と共通である。

北側から峠を振り返る 木の間を道は降りていく

 道はほぼまっすぐ斜めに、北の尾根に向かって降りていく。最初ははっきりしているが、降りて行くにつれ道は薄くなり、崩壊しかかっている区間もある。ただ、所々に赤テープがあり、道のあったところは木立が空間になっているので辛うじて判別できる。この部分が2番目に悪い。(この2カ所以外は問題はない)。

道が薄いところは赤テープに導かれる 古道の面目躍如

 この部分は地理院地図の通りであり、北に延びる尾根に着く。(逆方向から来た時は、尾根横の道が北側斜面に突き当たったところからがわかりにくいと思われるが、右斜め上に踏み跡を探しながら、地図の方向どおりに登ること。)。

 道は北への尾根に沿ってその西側を降り、尾根と同じ高さになったあとは、尾根をジグザグに切って降りていく。ここからは古道の面目躍如といった、良い道になる。よくぞそのまま残ってくれたと誉めたいような。金久氏は、この古道の良さを、「作為のない寂び」「古道の風情をそのままに持って、生きていた古道が荒廃なく停止したままのよう」と表現されているが、この表現に惹かれて追体験をしたいと思ってしまうのである。

古道は尾根に沿って伸びる 伏状台杉の古木

 途中には倒木が覆い被さる場所もあるが、親切な登山者があるようで、通れるように穴が空いている。大きな伏状台杉が残る休憩ポイントもある。。

 地理院地図の点線は、尾根の途中で東に降りているが、実際には降りず、尾根に沿って道は付けられている。林道の逆U字の地点に近くなってようやく北北東に緩やかに下り、林道に降り着く。林道に「徐行」の▽標柱のある場所である。

古道は林道に降りていく 逆方向から見た林道からの取付口

 本来の道は、ここから東の谷にジグザグに降りていたと思われる。現在はその下に砂防堰堤が作られ、そこへの工事用進入路(急傾斜)が造成されている。しかし降りたあとの谷筋が荒れているので、ここから降りるのは適さない。

 林道を北に進み、逆U字のカーブ点に、東南に降りる道が造られている。ジグザグに降りていくと、砂防堰堤のところに降り着く。工事用道路が新たな道になっているのである。

林道から谷への降り口 堰堤の横に降りていく

 そこから下流には左岸に道がある。その下にさらに砂防堰堤がある。そこを過ぎてしばらく進むと、右岸に渡り、コクンド谷の両俣出合の地点に着く。そこから林道が始まり、久多の下の町に続くが、帰りのバスの時間があるので、そこから戻った。。

堰堤から見上げる道 コクンド谷林道

 寺谷峠は北側に値うちがある。ただ、北側と南側の靴底の感触があまりに違う。南側は、かって、地理院地図の点線に沿って道があり、それが崩壊したあと、戦後の植林用に、一部は旧道を使いながら、現在の道が付けられた感じもする。

 もっと歩かれても良い古道である。寺谷峠を南北通しで歩いて、公共交通機関を使って行き帰りができる1日コースが設定しにくいのが難点だが。車利用なら、久多に車を置き、寺谷峠から東に峰床山、オグロ坂を回るとか、又は西に桑谷山、久多峠を回って帰る1周コースが可能と思われる。(熟練者向き)

歩行図南半分 歩行図北半分

                             【長岡山人 記】