小てつのよも山話(No.103)

「山に物を残すということ」

廃村八丁東尾根


2014年6月20日(金)                       小てつ






 先日来、okaokaさんや、小てつ達がやっきになっている「美山トレイル」なる得体の知れないテープの問題。近郊の山にしか行かないと言う読者の方々には、「何をやっきになってるんや。」と人ごとかも知れません。お願いや注意喚起だけでは、内容と現状がわからないと思いますので、ここで現状の解説をしておこうと思います。

 「美山トレイル」なるテープが、登山道脇の木々にくくられているのを見たのは昨年の秋のこと、佐々里峠から南へ「ダンノ峠分岐のピーク」にかけてだった。あまりに細かくつけられていたので、美山町のどこかの小学校登山でもあるのか?と思ったくらいだった。行事が終われば外されるだろうと、その時は思っていたのだった。

 で、今年になって、いつもこの季節に訪れられる、okaokaさんたちがお得意の小野村割岳で、佐々里峠にも増しておびただしい数のテープを見られることになったのだ。その後、小てつたちが三国ヶ岳からP927にかけて、同じようにおびただしいテープを見ることになる。

小野村割岳

 okaokaさんのホームページ上での呼びかけに呼応して、読者の方からも情報が寄せられ、他には、

1) 地蔵峠→三国峠
2) 三国峠→野田畑峠
3) 野田畑峠→杉尾峠

 にもつけられているとのことだった。結局、杉尾峠より、京大芦生研究林の中を通り、地蔵峠から高島トレイルと重複して三国ヶ岳を通り、天狗峠をかすめて、小野村割岳を通り、okaokaさんの調査では「雷杉」まであったということだから、下手をしたら赤崎中尾根を芦生側に降りた可能性があり、非常に困ったことになっている。

 何もテープくらいと思われる読者の方々もおられるだろうし、一部の方は、たくさんテープがついていて迷わず済んだ、ありがたいとおっしゃっているレポも目にした。ところがである。テープのついているコースを今一度思い描いて欲しいのだが、遭難が相次いだことから、現在京大研究林への入林は、西の須後側からだけ認められていて、東の地蔵峠からは進入禁止になっている。なのにテープは、地蔵峠を抜けてついているのだ。そのことを無視しているのか、知らない連中なのだろうか?

 また、佐々里峠の八丁側についているテープに至っては、佐々里峠からダンノ峠まではまあ普通としても、その先八丁に向かわずに、稜線上を卒塔婆峠に向かっているという。okaokaさんはつられることはないだろうとおっしゃるが、絶対に無いとは言い切れない。

 愛宕に通っておられる方なら想像してほしい。例えば地蔵山の反射板から、「○○トレイル」なんて書かれたもっともらしいテープが、滝谷にむかってついていたら・・。おまけにその先、滝谷から芦見川林道に向かってついていて、その先また細野まで続いていたら・・。つられて歩いて行ったら悲劇である。バスはないし、民家に助けを求めるしかない。テープに恨みを言ってもダメ、つられた自身が悪いのである。それと同じようなことなのだ。

ソトバ峠

 八丁で道迷いになり、テープにつられて卒塔婆峠になんて行っても、広域林道を「下の町」や「尾花町」側に降りられたらいいけれど、反対側の深見トンネル側に向かってしまったら・・、南の小塩側に降りてしまったら・・、と考えるとゾッとする。天気の良い日中の話ではなく、陽も落ちていたり、雨も降っていたりのことである。

 民家のあるところならまだいいが、地蔵峠のテープにつられたりしたら、もっとおおごとになるだろう。高島トレイルを歩いているつもりが、野田畑峠に引っ張られるんだから大変だ。以前okaokaclubのメンバーの方が天狗峠に行き、どこを間違ったか、二ボケか三ボケあたりの芦生側に降りてしまい、仕方なくそのままトロッコ道を須後まで歩いて、民家からタクシーを呼んでもらい、車の置いてあった久多まで、料金1万5000円のタクシー大旅行をされたこともある。

 テープのつけられている状況はそんなところであって、またそのつけ方は異常である。間隔といい、場所といい、全く節操が無い。おまけに色が悪い。誰が作ったのか、全然山に同調しない。一言で言うと「ケバい」のである。高島トレイルのテープは、色も熟考されたのだろう、若葉色で山に溶け込む。迷いようの無い一本尾根などには、ほとんどつけられていなくて、迷いそうなところ、例えば水坂峠から湖北武奈ヶ嶽への取り付き付近の、尾根を乗り換えなければならない場所などには、細かくつけられていたりする。山を理解した人がつけると、状況は全く違うのだ。

 さて、こんな非常識で、無知とも思える行動をする連中はどんな団体であろうとネット検索するも、主団体には全くヒットしないのである。そこでまた我々より以前から、この問題について調査をされていた方からの情報が入り、その情報に驚愕し、また憤慨することになる。

 その情報とは、美山観光協会が「美山トレイル」という、高島トレイル最終地点である三国ヶ岳から、美山町の頭巾山を結ぶトレイルを作る構想があり、現在その調査をしているというものだったのだ。しかし、その件について、美山観光協会に問い合せても、あくまで市民からの自然発生的なボランティア活動であって、協会側は「あくまで支援しているだけです。」という立場をかまえている。支援はしているが、責任はとらないという意味だろう。

 京大研究林や、京都府立大久多演習林の関係各所に問い合せても、京大は「構想は聞いたことがありますが、実際に整備を行う話は聞いていません、許可もしていません。」とのこと、京都府立大は「何も聞いてません。」とのことだったそうだ。研究林や演習林の中に、トレイルが走るなんて、絶対に許可されるはずは無い。

 しかしながら、一度「美山町観光協会」のホームページから、芦生研究林の中のトレッキングツアーの案内を見ていただきたいが、研究林なのか、観光地なのかと見間違う勢いで、京大のものか、美山町の観光資源かわからないほどに紹介されている。こんなのが既成事実で通っているのだから、今度のトレイルも、既成事実の重ね技で、無理やりやるかも知れません。

 とか、のんきことを言ってると、また情報が入り、何かのマップには「美山トレイル 27年度開通予定」とあるそうだ。どこの許可も取れていないトレイルが、もう来年開通するそうだ。呆れるばかり!

 また、去年の南丹市の市議会において、既にこの話題が発言されていて、

 「美山の観光協会もいろんな取り組みをされておりまして、1つにはエコツーリズム、また美山の山歩きということで美山トレイルと言って尾根をずっと歩いていわゆる自然を楽しむという形の調査をされて、3つほどコースをつくって今取り組みをされております。そういう形で民間が行政ばかりに任すのではなしに率先してそういう取り組みをされておりますので、その取り組みに対してもやっぱり市として何らかの人的な応援なり、いろんな形でのいろんな助言をしていただいて、これからその国定公園が指定されるということは一つ観光についてはいい発展の材料でございますので、いいあれを観光振興に生かせるような取り組みを市としてもまた取り組んでいただきたいと思います。その後、いろんな形で観光客がふえますと、一番いいのは来ていただいて泊まっていただいて、いわゆる変な話お金を落としていただくことが一番ありがたいことなので、そういうことをしていただくとなるとやっぱり宿泊施設等が大変重要になってくると思います。」

平成25年第4回南丹市議会12月定例会会議録(第4日)
平成25年12月5日(木曜日) 木戸 徳吉 氏の発言から原文のまま抜粋

 と、最終的には国定公園化計画を匂わせながら、ここでもあくまで民間からの自主的な取り組みとなっていて、行政も観光協会も責任をとらない・・。じゃあ誰かが、勝手に声をあげて、テープを自費でつくって、山に撒き散らしているというのだろうか?

 いや、雰囲気ではそんな感じではなく、テープをつけている連中は、自分達は'町のために頑張っている正義の人'という意識でおこなっているのだと推測できるのだ。テープだって、観光協会がお金を出して作ったに違いない。これは始末が悪い。まわりから見れば、踊らされているだけである。計画がうまくいけば、観光協会はバンザイだろうけど、計画が途中頓挫しても行政も協会も知らぬ存ぜぬですむ。

 調査をし、知れば知るほど呆れるような構想を持ったトレイルであることが判明してきたのです。

 小てつお気に入りの高島トレイルにも、全く問題が無いというのは嘘になります。小てつがお知らせしているように、高島トレイル最終地点である桑原のお堂の地主の方は、後をたたず勝手に駐車されることに不満をお持ちですし、生杉の地蔵峠林道入口付近には「もっと奥に駐車してください。」との多くの看板を見かけます。高島トレイルのツアーを運営している関係者まわりには、ある程度の金銭収入の利があるでしょうが、登山口まわりの住民には、全く利は無く、治安や早朝の車の音、ゴミの廃棄(勝手に村落のゴミ置き場に捨てていく登山者がいる)など問題だらけです。

 京都一周トレイルについてもそうです。誰が思いついたか、外回り一周トレイルが作られ、そのコースに設定されてしまったため、毎年楽しみにしていた茶呑峠近くの「クリンソウのお花畑」は消失してしまいました。たいして歩かれてもなさそうなトレイルのために、何年もかかって作られた、そこにしかない箱庭のような自然が踏み潰されなければならないのでしょうか?

 南丹市は、金をかけずに自然相手で遊ばせて客を呼び込み、お金を落としてもらおうという勘定なんですが、付近の山を見れば良いと思います。高島トレイル内では、赤坂山の崩れた木道。駒ヶ岳の森林公園跡の赤と緑のスプレーがかけられた無残なブナの大木。三国峠の崩れた木道。美山のほうでは、八ヶ峰ののっぺらぼうみたいな尾根道。人間が考えたチャチな計画の跡地がどんなになっているのか・・。

 書いているとまた腹がたってきたので、今回はこのへんで・・。また経過を見ながら、お知らせいたします。

植林に


                             【 記: 小てつ 】