山科から炭山・笠取へ最短ルート?の
峠を探しに行ってきました。

 
山笑う 笠取の春


2015.4.18(土) 晴れ 24℃  ikomochi

コース:
山科から炭山・笠取へ最短ルート?の峠を探しに行ってきました。 京阪六地蔵9:45発⇒日野誕生院バス停10:00〜日野野外センター〜供水峠取り付10:20〜お香水11:00=11:35〜供水峠11:40〜谷道〜上炭山12:10〜引坂峠入口12:20〜引坂峠13:00〜峠道を探してユリ道へ〜ユリ道崩落13:40〜谷へ下って〜アクトパル宇治14:40〜引坂峠入口15:00〜引坂峠15:40〜上炭山16:00〜尾根道〜供水峠16:25〜お香水16:30=16:50〜日野誕生院バス停17:30=17:49発六地蔵行バス








 先週の膝痛がまだしっかり治っていないので、無理はしないでおこうと、1月に見つけた醍醐本宮ノ峰から続く笠取への峠道を探しに行くことにした。寒かったり暑かったりの天候だが、久しぶりに晴れ間が出て初夏の陽気。痛めた足をかばって今日は重いシリオじゃなく、(なんちゃって登山靴と呼んでいる)テクニカ軽登山靴を履いてきた。靴底が柔らかく軽いので、舗装道を歩くことになったときには足の負担が少ないと思う。

ヒメウズ ヒメオドリコソウ
ムラサキサギゴケ 代掻きが始まる

 日野誕生院バス停から、道端に咲く野草を見ながらのんびり歩く。日野野外活動センターを経て供水峠の道を登る。深く掘れた道は粘土質で脆い。それでだろうか、道には「バイク進入禁止」の文字がいたるところにあり、ついには倒木のバリケードが何か所も作ってある。この道は昔からオフロードの人たちがよく来ていたので、いろいろ揉めているのだろう。バイクが道を削ると、さらに道が荒れるので、進入してほしくはないが。

供水峠へ バイク通行止めがいたる所に

 鶯がさえずり若葉が光る道は気持ちよい。11:00峠下の地蔵堂に着いた。お香水は、岩場からたっぷり流れ出ている。手と顔を洗いすっきり。地蔵堂前の岩に腰かけて、早めの昼食にする。御堂の前は緩く源頭部を巻いた広場で、見下ろす谷の薄緑色の木々が美しい。この道はいつ来ても落ち着くなあ。ここを行き来する人たちは、昔から変わらぬ風景を同じように愛でていたのだろう。のんびり楽しんでいると、峠から男性が下りてきた。ちょっととまどってはるので、こちらから挨拶した。毎日散歩に来るという男性と、「ほんま ここはいい道ですよねえ」と同じような会話をする。

ミツバツツジが咲く 供水峠地蔵堂
お香水はたっぷり 山で食べるラーメンはおいしい

 今日は久しぶりに供水峠から炭山へ下ってみる。峠からすぐに左右に道が分かれ、谷道と尾根道に分かれるが、いかにも昔からの峠道という巻道を下って谷に下る。谷は3年前の大洪水の名残か、荒れが目立ち岩がごろごろしている。上炭山集落に出ると、谷の入り口には新築の家が建ち、古い農家は取り壊され更地になっていた。ここから正面に見える山の窪みが、今日の目的の峠だ。どんなことになるだろか。

新緑の供水峠 少し荒れた谷道へ
炭山から引坂峠を望む 供水峠入口の柿の木

 上炭山のお社とお地蔵さんにお参りして、直ぐの舗装路を沢沿いに進む。数軒の家を過ぎ、薄暗い植林地をどんどん行く。今日も狩猟許可証が張り付けられた檻罠の横を通る。檻の中は、土を盛った下にエサが仕掛けられているようす。イノシシが獲れるのかしらん。

引坂峠入口のお社 狩猟中の檻がある

 国有林の看板に突き当たると、道は沢の左岸に渡る。沢の突き当りで谷は南に振り、石組みの炭焼き窯跡がある。道は南方向にもあるようだが、地形図ではこの谷の奥は尾根になっているので、やはり峠は北側の窪みだろう。左側の斜面に作られたジグザグの道を登る。途中石組みの擁壁も作られているので、ここは峠道と考えてよいだろう。脆い石が谷まで崩れ落ちている。そんな箇所が数か所あり、気を付けながら進む。峠直下は、大きく崩れてしまっていて、木の根を掴みながらよじ登る。

ここは国有林 フイリフモトスミレ
炭焼き窯跡がある 引坂峠へよじ登る

 本宮ノ峰からの山道と交差する大きく掘れた峠を、笠取目指して下る。はっきりした道があるのでしばらく下ると、谷を巻いて南側に尾根を下る道があった。古いテープなどある。しかし、その巻道の手前に、北側にまっすぐ伸びるユリ道がある。倒木や枝が散乱して今はあまり使われていませんよ空気を漂わせている。しかし幅は1m50くらいはあり牛馬の道に匹敵する大きさ。本宮ノ峰の尾根沿いに北側向かってに等高線上に続いている。

 どっちに行くか?当然、謎のユリ道でしょう。もしかしたら本当の峠道かもしれないし。ってことで、どんどん進む。荒れてはいるけれど倒木だらけというわけでもなく歩きやすい。笠取へ下る大きな支尾根を2か所も通り越し、どこまで続くのだろうか?ひょっとしてこちらが本命かなあ と思い始めた矢先、道は一面藪に覆われた。ここを通り道にしている小動物の道が藪の中にぽっかり空いていて、わたしはさすがにくぐれないので藪をがしゃがしゃ乗り越して、怪しく崩れ始めた道を進む。すぐに、大きな植林地の谷間の上でいきなり道が消滅した。前方対岸には、なにやら立派な石垣に囲まれた屋敷跡のようなものが見える。

峠下に立派なユリ道が こちらが峠道のようだが

 いったん谷間に下り、石垣の近くまで登ってみたが、道は分からない。この先に突っ込んでいけば、醍醐寺まで行っちゃうかもしれないので、今回は最初の目的地笠取に向かうことにした。地形図をみると、この谷は本宮ノ峰南側の谷で、平坦そうなので下る。踏み跡がある。大きな杉の木が立ち並ぶ植林地を抜けると、雑木林が広がり、足音に驚いて飛び立ったのは雉の雌、鹿の白いお尻も走り去った。沢の脇でちょろちょろ姿を消したのはリス。野性味たっぷりの場所のようだ。

ユリ道の先には立派な石垣が 道は崩壊したので広い谷を下る

 ぶらぶら沢を下っていくと、急に谷が狭くなり、その先どうも滝があるらしい。覗いたが岩場があってよく分からないので、南側の支尾根に登る。獣道を辿って尾根の先端から下ると、目の前は笠取アクトパル宇治の駐車場だった。谷を遡る道はないか付近を探してみたが、よく分からなかったので諦めて、炭山に戻ることにする。

若葉が美しい アクトパルに出た

 人家の間から車道に出て、時折車が走り去る炭山に続く道をぶらぶら登る。尾根越えをして長坂峠に至る東海自然歩道に指定されている車道だが、結構登るし長いんですよね。うっとうしいなあ と思いながら、さきほど越えてきた峠への登り口はないものかと探す。沢の登り口らしきもの2本みたがどうもぱっとしないので、ぶらぶらと京都笠取国際射撃場の入り口を通り過ぎる。山中でパンパンバンバンと大きな音が響いていたのは、ここの音だったのね。

谷の入口にお地蔵さん 笠取射撃場の横に山道があった

 次のカーブで沢道を覗くと、ありました。よく掘られた道形。これかもしれないと少し入ってみる。さて、この道を進んでいくのがよいのか、おとなしく舗装道を帰るのがよいのか 迷ったが、まだ3時前なので夕暮れには時間がある。ダメなときは引き返して来ればいいや と、谷間に入っていった。最初は少し藪だがすぐによい道形が続き、沢沿いに緩やかに登っていく。

 わくわくしながら歩いていると、15分ほど行ったところで、前方から自転車を担いだ若者が下ってきた。双方びっくり仰天。話を聞くと、この人も峠を探していたらしく、ここは「ひっさか?いんさか?峠」という名前だという。宇治市の笠取の歴史として出てくるらしく、炭山に抜けるための隧道を掘ったという。しかし、脆い地盤のために工事は難航し、ついに諦めたという逸話の場所という。

沢沿いにどんどん行く 峠直下 ここにトンネル?

 彼はマウンテンバイクでまずは射撃場脇の入り口から入ろうとしたがどうも道ではないらしいと引き返し、次は上炭山の道を辿って峠から下ってきたそうな。「えっー あの崩落した場所を自転車を引っ張り上げて登ってきたんですかあ!」と驚くわたし。炭焼き窯のある谷も詰めてみたが行き止まりだったそうな。「この峠もどんどん崩れて消滅しそうなので、今のうちに通りたいと思って・・」と彼。「そうですよねーーここは山科や炭山から最短距離だと思うので、隧道を掘りたかったんですかね」とわたし。「しかし、こんな所で人に会うとは思いもしませんでした」と彼。今日はあちこち走って疲れたから最短の横嶺峠から醍醐に下るという彼と、峠越えの最短ルートで日野に下るつもりという私。お互いの健闘を讃えながら別れたのでした。

 いやあ 世の中 いろいろな形で同好の志がいるもんですね。嬉しい出会いでした。そこで考え付いたけれど、あのユリ道は隧道建設のためのものだったかも。機会があったら、資料館にあるという笠取の歴史を調べに行ってみよう。

供水峠へ尾根道を登る

 若者に別れ、沢沿いに道を探すが、最後はよくわからなくて北側の斜面に取り付いて適当に登ったら、さっき通ったユリ道に出た。正しい?峠道は南側の尾根のどこかにあったらしい。ここまで分かればまた探索に来ればよい。夕日が射す上炭山から今度は尾根道を登る。こちらの道の方が広くて歩きやすく、供水峠まで25分で上れた。

 地蔵堂のお香水で手や顔を洗い、しばらく休憩。ほんとうにここは心が休まるいい場所や。ごろごろ石の峠道は下りが苦手だったけど、足の調子がよくなった今は随分楽に下れるぞ。心配していた膝もひどくならないし、靴底が軟弱なテクニカでもなんとか獣道歩きができたし(一度なんちゃって靴で北山に行き、踏ん張りはきかないわ 滑るわ 石が足底にあたるわでこりごりしたけど)、よかったよかった。

 日野誕生院バス停から石田に出て、銭湯に寄った。ここのロビーではちょっとした軽食や飲み物を出すので、湯上りにおでんと生ビール一杯。おいしかったです!!

 峠の名は、引坂峠(ひきさかとうげ)といい、京都府総合資料館や宇治市歴史資料館の宇治市史に記載があるらしい。若者によれば、笠取側の峠下に空いている穴が隧道を掘ったあとではないか?とのことだったが、果たして真相は如何に。

 後日、近くの図書館で資料を見つけた。引坂道と呼ばれたこの道は、笠取や上炭山の人々の重要な往環道だったが、今は新しく造成された谷山林道(東海自然歩道)に役割を譲った。笠取側は下荘川西から上炭山に抜けるとあるので、少し位置関係が違ってくるが。地形図では下荘川西の谷を辿ると国際射撃場に出るので、峠の位置は合っていると思う。はてさて、お楽しみがまたひとつ増えた。


                             【 記: Ikomochi 】