ずっと気になっていた喜撰山へ初登頂

 
喜撰山ダム


2015.7.25(土)晴れ 35℃      ikomochi

コース:
宇治橋12:20⇒仏徳山うろうろ⇒自転車で天ケ瀬ダム13:30⇒志津川神女神社14:00=14:20〜喜撰山登山口15:20〜喜撰山山頂15:50〜分岐〜喜撰洞16:10〜分岐〜登山口16:40⇒自転車で神女神社16:50⇒三室戸17:20








 今夏は昨年よりも猛烈な暑さで連日37℃が続く。あまりの暑さに外へも出たくない。昨夏熱中症になって半年ほど体調を崩した母は、京都の夏にすっかり懲りて、暑さが厳しくなる前に故郷へと避暑退散。

 やれやれである。しかし、もうひとつの懸念材料、16歳の愛犬はやっぱり7月に入ってすぐに脱水と食欲不振で倒れ、医者通い。ここ数年、夏を無事越せるかなと心配しながら過ごしてきた老犬こまち。できる限りのことをしてやろうと腹をくくった。

 毎日のように点滴に通い、暑さでよろよろしながら近所を散歩。後ろ足が弱ってひっくり返るのでバスタオルでお腹を引っ張り上げながら歩いていると、まあみなさん声を掛けてくださること。「わしと一緒やなあ がんばりや」と酸素吸入器を引っ張って歩くおじいさん、「うちの犬も最後は一緒の姿やった がんばってね」と車を止めて声を掛ける方、大勢の声援に励まされ、こまちも頑張って徐々に回復し、なんとか寝たきり状態にはならないでいる。

 そうなると私のほうが身体の調子が悪い。5月に北漢山で捻挫してから1か月ほど歩くのを控えていた。転げまいと相当踏ん張ったのだろう、足だけじゃなく身体全体を捻ったらしく次々と痛みが出て、やっと調子が整った7月である。

 そろそろどこか歩きたいけれどこまちも気になるので、短時間で行ける近場に出かける。宇治橋の仏徳山にはまだ未探索の道がたくさんある。電車で行くよりも自転車で行った方が小回りが利きそうなので、家からペダルをこいだ。

木陰の宇治川右岸道 コマツナギの花

 宇治橋を過ぎ橋姫神社手前にある蕎麦屋「しゅばく」をひょいと覗いたら、丁度開店したばかりで席がありそう。いつも開店前から行列ができていてなかなか入れないので、ラッキーとさっそく椅子に座った。ここの新蕎麦は翡翠色で美しい。細切りの頼りないような麺だがするすると喉ごしがよくて、上品。のんびり味わって外に出たら、暑い中に行列が待っていた。

 宇治川は先日の大雨の影響か川幅いっぱいの水であふれそう。増水のため塔ノ島は立ち入り禁止で、夕霧橋は門扉が閉まっている。この水嵩なら天ケ瀬ダムは全開して放流しているだろう。めったにない光景だから見に行こうと、ダム見物に自転車で走る。

天ケ瀬ダム放流中 清流志津川

 案の定、ダムの放水口からは大量の水が吐き出されていて川は白波立てて逆巻き、恐ろしい光景。カメラマンも大勢来ていた。ここまできたら志津川沿いに走ってみようかな。と予定はどんどん変わって、川沿いの車道を志津川まで行って、喜撰山ダムに登る道の様子を見にいってみた。

 2012年豪雨で炭山、志津川は氾濫と土砂崩れで大被害に見舞われ道も寸断された。その後、川沿いの車道は工事が終わっただろうか。天ケ瀬ダムの白虹橋下流では新しい橋の建設が進んでいて、志津川方面への市道ものり面の強化工事なのか通行規制があり、ややこしいことになっている。

ここにも愛宕山信仰 夏の花満開

 志津川沿いの古い市道をのんびり走る。鮎も獲れる清流の志津川も水が濁り水量が多い。集落の三差路を東へ池尾方面にむかう。村はずれの神女(しんにょ)神社で休憩しておにぎりをほうばった。この神社は明治の初期に村民が建てたという由緒書きがあり、きれいに清められた境内をみると今でも大切にされているようだ。

神女神社 神女神社由緒書

 池尾川の清流沿いに車道を登っていく。かつては車の離合も難しいような細い車道だったけれど、護岸工事をして道幅も広がったようだ。あとで知ったが、この道は斜度8%もある急坂が続く。当然自転車は立ちこぎもできないから、大汗流しながら押して登る。でもせせらぎ沿いの道は涼しい風が吹き心地よい。

池尾川沿いに登る 夏空

 どんどん登っていくと、道端に駐車している車が数台、通り過ぎる車も10分に1台くらいはある。歩いている人(登山ではない)もいて、この先数軒しか家のない池尾なのになんで賑やかなのかしらん?道がなだらかになり、巨大なコンクリートの建造物が川岸に横たわっている。苔むして年代ものだが、橋のようなそうでないような。(後で知ったが、これはトロッコ道の土台だったそうで、天ケ瀬ダム建設の折の遺構らしい。廃墟で有名みたい)。一帯には作業小屋の廃墟や、コンクリートの工作物などが点在している。

 北側に高い断崖絶壁が現われるが石切り場やったのかな?道は緩やかになり自転車を押すのも楽になった。谷間から見上げる空には真っ白い雲がぽかり。夏やなあとうっとり見上げていると、目の前を大きな鳥が音もなく滑空してきて、木の間に消えた。こげ茶と白のだんだら模様は、鷹じゃないしトンビでもないけど、鷹鷲の仲間だ。こんなところに?珍しいもの見たなあ。(これも後で知ったが、絶滅危惧種のハヤブサの営巣地があるらしい)

廃墟 喜撰山へ

 尾根を見上げながら最後の急坂を上ると、強風が谷から吹き上げてきて倒れそうになる。登り切ったところは喜撰山ダムのほとりだ。関西電力の水力発電用のダム湖で、ロックフィル方式という珍しい造り方がしてある。ダム湖からは堰堤しか見えないが、南側のダム管理所の方に行くと、ぎっしりと石を積み上げた堰堤が見える。コンクリートで固めたダムと違い、石積みの壁に美しさを感じる。またこのダム湖は冬になると鴨類が渡ってきて随分と賑やかになる。そんなこんなで結構好きな場所である。

 ダム見物にはたまに車で来ていたが、喜撰山に登ったことはなかった。ダム湖を囲むフェンスの端に、「喜撰山登山口」と木札がぶら下がっている。フェンス沿いに小道ができていて進む。どたんと大きな音がするので振り返ると、道端に停めておいた自転車が強風にあおられてひっくり返っていた。山に登る階段があり急斜面をよじ登る。

 そこからはダム湖を見下ろしたりしながら進み、最後は雑木林の道を一直線に登ると喜撰洞との分岐があり直進。すぐに三角点がある広場に着いた。見晴らしはなし。山頂からさらに道が続いているが今日は引き返す。先ほどの分岐に下り、標識が示す「喜撰洞」へ山道を進む。

登山道からダム湖が見える 喜撰山山頂

 山頂下をトラバースして道があるが、ところどころ大きく崩れていて、そこにはロープやらアルミの梯子がきちんと設置されている。大事に手入れしている方がいるのだろう。尾根を回り込み少し下ると、喜撰洞に着いた。喜撰法師が修行したというが小さな洞窟には人は入れるのだろうか?ちと怪しい。今は水がたまった洞の中に喜撰法師だろうか 一体の像が安置されている。洞の前はきれいに掃き清められ、小さな腰掛や掃除道具が整然と置いてある。お守りしている人の心が伝わってくる。

喜撰法師洞窟へ 喜撰法師洞窟

 静かに椅子に座って遠く広がる景色を眺め、喜撰法師の歌「わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり」を諳んじた。足音がして男性が下ってきた。この方も喜撰山は初めてで、バイクで登ってきたとか。フェンスのところに自転車がひっくり返っていて驚きましたと笑われた。男性と別れて山を下った。

洞窟から西方の眺め 洞窟内の像

 帰りの道は急こう配でキッーキーとブレーキをかけながらノンストップで女神神社に着いた。曲がりくねった狭い道で車にぶつかったらたいへんとスピードをセーブしたが、1台だけやってきた車はいきなりママチャリおばさんが現われてびっくりしていたようだ。

 登りは1時間、下りはたったの10分で風を切って走り、汗が吹き飛んだ。後日、「めちゃくちゃ気持ちよかったわあ」と若者に自慢していたら、「歳を考えて無茶しないように」と釘をさされた次第です。


                                    【 記: Ikomochi 】