仏主峠・地蔵杉


 
尾根を左右に乗り越す仏主峠


平成27年4月16日(木) 晴              長岡山人

コース:
和知駅バス発8:02−仏主バス停8:30−谷を遡行開始9:20−仏主峠10:20−地蔵杉12:20−仏主峠14:10−西谷林道14:50−岩江戸バス停16:10−同発16:39−和知駅着17:05





 仏主(ほどす)峠は、和知町仏主と美山町川谷を結ぶ峠である。地域間交流の機能を越えて、舞鶴と京を結ぶ物流機能も果たしたのではと、金久氏は推測される。藪こぎが予想されたので、生え込みのないこの時期をねらって探索に出かけた。

 バスを終点の仏主で降り、南のオマツ谷に沿って、舗装された近畿自然歩道を歩き始める。舗装道が谷から離れ、山腹を巻き始めるところで、谷に入り、遡り始める。道らしきものは見あたらない。歩きやすいところを選んで、川を渡り返しながら、詰めていく。

舗装路から谷に入る すんなりとは歩けない谷筋

 詰めていくが、地図を見ると、右山腹に取り付くことになっている。しかし、取り付けそうな地点が発見できない。このまま流れを遡ると、峠から北にずれてしまう。谷も険しくなってきた。しかたがないと、傾斜の緩い谷を選んで、とにかく登っていく。写真以上に急な斜面だ。稜線と空が見えるとほっとする。最後のがんばりで稜線に飛び出した。

最も登りやすい谷に取り付く 稜線直下の急登

 峠より北に登ったことはわかっているので、南にわずかに進むと、峠の地形があった。金久氏の『北山の峠(下巻)』を読んでいたから分かるポイントだ。わずかにくぼみ、東南から西南にU字型に稜線を乗り越す道型が残っている。予想に反して表示の類はなく、白いひもテープが一つあるだけである。歩く人はごく少なそうだ。P831への踏み跡がはっきりしているので、ピークを越えて縦走する人はあるようだ。

仏主峠から東南尾根への道 P831が透けて見える

 峠の真下には、舗装道が見える。だから地理院地図表記より南の位置になる。金久氏は、「道は曲り鼻から左に振って支尾根に乗る。この支尾根はピーク八三一から西に派生する小さな尾根で、峠道はこの尾根をジグザグに下り、(中略)谷の合流点に下りる」と書かれている。地図で見ても、現地で見ても、それが自然な道の造形である。今日、歩いた感覚からも、地図の破線路は違うと思われる。本来の峠道は、舗装路がジグザグに登っている尾根に付けられていたのではなかろうか。

かすかにわかる仏主への下り道 仏主側から見た峠

 さて、峠の探索だけでは時間が余るので、この機会に登っておきたい山、地蔵杉(898m)をピストンすることにした。仏主峠から東北方向に大きく見える。尾根は生え込みが少なく、歩きやすい。自然林がきれいだ。ただ、実際に歩いてみると、結構、小ピークがあり、累積高度差は約300m、急登も何カ所かあって、あなどってはならない縦走路であった。

歩きやすい尾根 見上げる地蔵杉は大きい

 特に、地蔵杉のすぐ手前にやせ尾根の岩稜帯が二カ所連続してあり、そこは注意が必要である。岩稜中央は生え込みで歩きにくいところもある。無理に岩稜中央を歩こうとせず、よく見ると岩稜の脇に巻き道が発見できる。道ではなく、かすかな踏み跡だが。南の岩稜は西側を、北の岩稜は東側を巻くように付けられている。

岩稜帯が連続する 岩稜を巻く踏み跡を北側から見たところ

 地蔵杉直下の急登を登り切ると、頂上である。三角点があるだけで、表示板はない。西には長老ヶ岳、南には丹波縦貫林道の山々、北にはかすかに若丹国境稜線が見え、東方にも重畳たる山々が見えるが、かすんでいて同定はできなかった。ピストンして帰る。円錐形の頂上なので、最初の下りだけ、方向を間違えないよう、注意が必要である。

地蔵杉直下の急登 地蔵杉の頂上と三角点

 仏主峠まで戻る。そこから東南方向に巻き道を進む。かなり崩壊し、かろうじて通れる状態である。歩く人はほとんどいない感じである。四角錐の一面を横断する感じでP831の東尾根までたどり着くと、美山町大野から登ってきた登山路に出会う。

仏主峠から東南への巻き道 美山からの登山道の合流点

 美山からの登山道は太く立派だ。長老ヶ岳への登山路としてよく使われている。金久氏は、この三叉路を峠のポイントとしたいようだが、峠の字義からみて、どうであろうか。

東から見た分岐点 長老ヶ岳への道はよく踏まれている

 古道の風格十分な道は東の尾根を下っていく。すると間もなく、道は右手(南)の山腹を下るように方向転換する。おかしい。地図の破線が示す右折地点より大幅に手前だ。しかしその先の尾根筋には踏み跡がなく、どう考えてもここから下らざるを得ない。道は丁寧にジグザグに切られ、まさに古道のお手本のような道である。

立派な尾根道 道の太さから間違いはない

 快適な自然林帯から、よく手入れされた植林帯に入り、三角形の斜面をジグザグに降りていく。右には大きな岩も見える。600m地点で太い林道の終点に降り着く。以後は林道を下っていく。何カ所か案内板があり迷うことはない。

山の仕事師の余技 このプレートが案内

 川谷の集落を経て、のんびりと岩江戸のバス停まで下った。農家の庭には丹精を込められた花がたくさん見られ、暮らしにゆとりが感じられた。しかし、バス停で出会った大野小学校の先生は、「生徒数は29人、複式学級で、今年度で廃校。町にあった5校が一つに統合される」とおっしゃっていた。美山町は合併せずに残って欲しい町だった。

仏主峠付近の歩行地図と仏主側への推測旧道


                           【 記: 長岡山人 】