品谷峠(品谷側古道)

「朔風が梢に満ちる清明の品谷峠」(金久昌業氏)


平成27年6月4日(木) 晴              長岡山人


コース:
菅原バス停下車9:40−ダンノ峠10:30−佐々里峠分岐11:00−品谷山11:25−品谷峠11:40−支尾根下部13:00−品谷峠14:00−佐々里峠15:40−広河原バス停16:30





 品谷峠の品谷側(北側)の峠道は歩かれた記録が少ない。古道は崩壊しているものの、かなりの痕跡を発見できた。山腹を大きく巻いていく作道は古人の知恵が感じられた。

 菅原でバスを降り、ダンノ峠から取り付いた。金久氏の『北山の峠』上巻の表紙写真であるブナの巨木は、枯れても峠を圧倒していた。尾根を進みながら、桑谷山、峰床山、比良連峰、三国岳、芦生の山々、若丹国境尾根、美山町西境尾根が順に見られる良い尾根だ。自然林が多く、ブナの巨木、ヤマボウシの白い花を見ながら、品谷山で涼風に吹かれる。何回来ても山歩きの最良のエッセンスが感じられる尾根道だ。

ダンノ峠の象徴の枯れたブナ 北山のど真ん中である品谷山

 品谷峠は、金久氏が書かれているとおり、「平坦で気分の良い疎林になっており、風光的に優れた詩情は群を抜く。」峠の中央よりやや東に立ち、品谷側をのぞき込むと、右側の山腹をカールして降りていくかすかな踏み跡が発見できる。山腹を利用して少しずつ高度を下げる作道である。

品谷峠の乗越部分 峠道の降り口

 H760mまで高度を下げ、右に尾根が透けて見えるところに杉がある。そこが折返点で、今度は左下に下っていき、谷のほぼ中央、炭焼窯跡のあるH750mが折返点である。右下に同じくらい下り、炭焼窯跡のあるH740mが次の折返点である。左下にわずかに進み、H735m地点が折返点である。

折り返し点の杉 H750m炭焼窯跡の折り返し点

 ここまでは何とかわかったが、次の折返点を探すが発見できない。小さな岩塊がごろごろする中を、しかたなく適当に降りていくと、H710m付近で再びかすかな踏み跡が発見できた。この間の高度差約30mの経路が課題として残った。高度差10mごとに折返点が作られている感じである。

生え込みで道がわからない 岩が多く歩きにくい

 4回ジグザグを切り、H675mで方向転換したあとは、谷をまたいで左山腹をかなり進んでいく。H663m地点で方向転換する。再び谷を越え、今度は右山腹をゆったりとかなりの間進む。下に見える谷底は狭く、流れと岩と急傾斜のため道は造りにくく、そのため支尾根を利用した道が考えられたようだ。H625m地点で尾根を乗り越す。尾根の手前はかなり生え込みがあり、逆方向から来た時はわかりにくいだろう。

山腹の踏み跡は危うい 高度を維持して巻いていく

 尾根を乗り越してH616mまで降りた地点で折り返す。再び尾根の鼻先、H600m地点で岩にぶち当たるので折り返す。わずかに下がった地点で、かなり踏まれた水平道に降り立つ。これは植林管理道のようで東の谷沿いに道はつけられている。逆方向から来たとき、この取り付き点がわからないだろう。倒木のピンクテープのすぐ横が折返点である。

支尾根を越えた北側の道 目印のピンクテープがある倒木

 水平道を西にわずかに進むと、支尾根の鼻先となり、行き止まりとなるので、下に見える谷川に降りる。道はなく、歩ける所を進むと、降りてきた谷との合流点となる。下から見ると、谷沿いは傾斜と岩と流れで遡行しにくい。やはり支尾根を使った峠道が必要である。

川に降り立った所 登り口の目印となる立木のピンクテープ

 ここから本来の品谷の川沿いの道が始まる。釜ヶ原まで下ってみたい気持ちが強いが、谷は荒れ、道はわからない。時間的にも限界であり、再び来た道を帰った。 昨夜の作業だろうか、生々しい熊の皮剥の跡が随所にあった。鈴を忘れた僕は、大声で歌いながら探索をした。

品谷の下流方向 爪痕も生々しい皮剥の跡

 昔、小てつさんは、この峠道で大変な苦労をされたようだが、とてもわからないと思う。国土地理院の間違った峠道が修正されたのは、遅きに失したが正解である。

 帰りに、発見した踏み跡を正しく歩くと、息も乱れず、すんなりと峠に登りつけた。金久氏が書かれているように、鯖街道として交流の役割を果たしていた可能性は強い。

品谷峠北側の古道探索図

                             【記: 長岡山人】