霧島連山最高峰 韓国岳1700mに登りました
2019.7.12


 
韓国岳山頂大パノラマ


2019年7月12日(金)  晴 25℃ ikomochi

コース
JR南鹿児島駅5:46発→鹿児島中央駅5:52着=日豊線6:27発→国分駅7:09着=霧島いわさきホテル行バス7:25発→終点乗換霧島連山周遊バス→えびの高原着8:56=韓国岳登山口9:40~迂回路を経て3合目10:30~5合目11:00~山頂11:50=12:30~5合目13:20~3合目13:40~登山口14:20~えびの高原荘入浴14:30~えびの高原周遊バス16:00発→丸尾16:26着=国分行バス17:02発→霧島神宮駅17:31着=JR霧島神宮駅17:40発特急→鹿児島中央駅18:31着





 今月も急きょ鹿児島に帰る用事が出来て一応は登山用具を持参するも、まだ梅雨明けでなくて、しかも毎週のように九州地方を襲う線上豪雨帯が連日暴れている。今度はどこも行けないかなあと諦めていたら、またまた幸運なことに曇り予報の日がやってきた。12日登山予定の日は曇りマーク。念願の霧島にむかう。

 早朝のJRに学生たちに交じって1人リュック姿の女性、おっつ あの人も!とマークしていたら、鹿児島中央駅で乗換を待つ間ベンチで隣同士になった。さっそく声を掛ける。やはり霧島に行くという。山仲間は膝痛や体調不良で歯抜けになりとうとう誘うのをあきらめて単独行を続けているという彼女、年恰好同世代だが、山歴を聞くと毎年のように屋久島縦断、アルプス縦断、ジャンダルムも登った、谷川岳の岩も登ったとなかなかの強兵だ。

 でも山に対する考え方は同じようで話が盛り上がった。霧島や鹿児島の山の情報をあれこれ教えてもらう。JRから霧島方面バスに乗り換える国分駅窓口では、1日周遊券乗り放題1100円で売っているよと教えてもらい購入した。国分駅から出発のバスこそ他の乗客がいたが、乗り換えた霧島連山周遊バスは私たち2人だけ。もっと混んでいるかと思ったのだが、登山者はほとんど自家用車で来るとのことだった。

 バスは深い森の中を快適に登り、目の前に高千穂峰が見え隠れする。硫黄の煙が流れる霧島温泉郷を抜け、彼女は大浪登山口で下車。大浪池から韓国岳を目指す彼女と、帰りの16時のバスで合流しようと約束して手を振った。

全国的に有名になった南鹿児島崩落地 爽やかなえびの高原

 えびの高原は気温25℃、高原を涼やかな風が通り抜け遠くでカッコウカッコウと声が響く。昨日までの暑さがウソのよう。青空に白い雲が流れ、なんというラッキーさ。いつ頃までだったろうか?どこかに行こうというと霧島、えびのというのが定番で一大観光地だったのが次第に寂れ大きなホテルが撤退、店も撤退、交通の便も悪くなりずいぶんとがらんとした雰囲気になったえびの高原。

霧島山案内
えびのから韓国岳を望む

 度重なる噴火活動の影響かなあ。しかし、澄んだ空気にゆったりした空は今も変わらない。すでに数十台の車が停まっているが広い駐車場はがらんとしている。きっと春や秋、夏のシーズンには満車になるのだろう。

 駐車場の片隅でのんびり腹ごしらえをし、服装を整える。雨も大丈夫そうなので、着替えや履いてきた靴など置いておくロッカーはないものか?探したがお店にもレストハウスにもロッカーはない。登山ガイドセンターで尋ねたら、係のおじさんが「また戻ってくるなら横にある棚に置いておいていいよ」と声を掛けてくれた。袋1個分を預け、少し軽くなったザックを担いで出発。

 250年ぶりに活動開始した硫黄山を通らずに迂回する道ができているという。硫黄山は水蒸気がシュウシュウ噴き出る噴気孔がいくつもあり、硫黄の結晶できらきら光る白い山でちょっと地球ではない景色。黄色い硫黄を拾ったり硫黄の臭いに巻かれたりして遊ぶ場所だった。硫黄山を抜けて韓国岳登山道はあるのだが、今は噴火口から1キロ以内立入禁止で、この2年余り韓国登山は大浪池経由でしか許可されていなかったのが、今年4月やっと迂回路経由での登山が許可されたところだ。

韓国岳登山口 登山者へお知らせ

 本来の韓国岳登山道入り口の脇にう回路ができていて、硫黄山の横の森の斜面を登っていく。カナカナカナと風にそよぐ声、あー天国。赤松や霧島ツツジの群落を縫うようにほぼ直登で登っていく。30分ほどで硫黄山からの登山道と合流し、いよいよ火山岩がごろごろしたガレ道を登ることになる。

迂回路へ進む 迂回路は木の根道だ
周囲は霧島ツツジ群生地 水蒸気を吐く硫黄山
登山道に合流 三合目
うつぎ ガレた岩道を登る

 3合目を過ぎ少し登った場所から、眼下にえびの高原や山々、青い湖面を見せる火口湖群を見渡す。直登道であえぎあえぎ登ってきた分、苦労が報われるパノラマだ。

3合目半からのパノラマ
四合目 ずっとこんな登りが続く

 一息ついてまたガレ道を登る。直射日光で暑い。11:00に5合目到着。隣でへたり込んでいた男性が「もう死ぬ」と叫んでいる。高校の遠足で韓国に登った時、級友が「もうダメ、わたしはここでみんなを待っている。」と座り込んで動かなかった姿が脳裏に焼き付いている。あの時5合目はもっと狭い山道の肩のようだったのだが、今は小広く整備されている。その友達をなんとかなだめて一緒に登頂したと思うが、なぜか鮮明に覚えているのは5合目の光景だけだ。わたしもしんどかったのだろうな。

五合目から山頂を仰ぐ 三池を見下ろす

 5合目から、緑に覆われた山頂がすぐそこに見える。相変わらず火山岩の道だが勾配が緩くなった分歩きやすく、灌木越しに周囲の山々が見えて気持ち良い登山になった。それにしてもびっしりと生えているのは霧島ツツジだろうか。五合目から上を隙間なく緑色が覆っている。春には全山がピンクに燃えるとは聞いているが、見事だろうな。

七合目 まだまだ火山岩の道を登っていく

 8合目に来ると、そこは火口の縁。足元は火口底まで急に切れ落ちていて足が竦む。火口には水は溜まっておらず、土色が広がっている。この火口底に下る道があるそうで、ネットにも出ていたが、笹とアザミの藪をコース取りして上手に下らないといけないらしい。火山岩のガレ場に突っ込むと一気に滑落だそうだ。火口縁から100mの高低差があり、登るにも急登で大変そう。底に下りたものの帰れなくなって救助される人もいるという。上から眺めていると、底に降り立ちたい気持ちもわかる。月面のような風景かな。

八合目 大浪池が眼下に
火口縁を回る山道になる 足元には火口底の断崖
火口をめぐる

 9合目は大浪池の真上、コバルトブルーの水面が濃い緑の森に映えて、なんとも言えない美しさ。霧島の火口湖はどれをとっても神秘的で静かで、人の心を魅了する。山頂下を巻いて進むと、目の前に高千穂峰がそびえている。この高千穂ほど神々しい山姿はないと、わたしは密かに思っている。雪を戴く富士山も清々しいが、薄く紫色がかった山の色といい3つの峰で形よく構成された姿といい、いつみてもほれぼれするのは私だけではなかろう。古代の人が、天孫が降臨した山と讃えたのも頷ける。鹿児島市内の高台から霧島は望遠できるが、冠雪した高千穂は素晴らしいと友人の弁。

九合目 霧島ツツジの密集地

 近年大暴れの新燃岳は今も白い噴気を吐いていて、火口は堆積物で溢れんばかり。黒く流れ出て溶岩流の跡も見える。新燃岳の麓には新燃荘という高濃度硫化硫黄泉が湧き出る鄙びた温泉がある。一時噴火活動で休業していたが再開しているそうで、入りに行きたいものだ。

大浪池分岐を通り 高千穂峰を目の前に山頂へ向かう
山頂は賑わっている 一等三角点

 黒い火山岩に覆われた韓国山頂。大勢の人が思い思いに楽しんでいる。登山中に一緒になったルーマニアの学生たち、噴火対策にヘルメットを被り楽しそうに歩いていたが、山頂で記念写真、はしゃぎすぎて山銘板の上に立ちあがり、登山者に注意されていた。

韓国岳山頂 山頂から北峰・爆裂火口を望む

 天気予報で強風が吹くとあった通りに強い風が吹き始めた。風に吹き寄せられて霧が流れ、時折大浪や高千穂が姿を隠す。霧多発地が霧島の命名由来だ。気温は20度と肌寒く、寒いから早く下ろうという声が聞こえる。風を避けて陽だまりでおにぎりをほうばる。先ほどからわたしの周りをひらひら飛び回っていたタテハチョウ、羽の先は破れかけ風に翻弄されお疲れのようだ。わたしの陰に隠れて地面に止まったので、しばらく風よけ役になった。

活動中の新燃岳火口 火口縁に周回路がある。
名残のミヤマキリシマの花 強風を避けて休憩するアカタテハ

 大浪池から韓国岳へは急登のうえ階段が設置されていて結構きついそうだ。時折そのコースをくたびれた様子で登ってくる登山者たち、朝の彼女はまだたどり着かないようだ。高千穂から新燃岳を経ての縦走コースは一般的で一度歩きたいと思っていたが、この火山活動では歩ける日が来るのだろうか。宮崎県側から獅子戸岳の縦走路も山上から望めるが、こちらは交通の便が悪く2台の車が必要と、朝の彼女の情報だった。

コガクウツギが咲く スズタケがびっしり

 山頂から遠く広がる大パノラマを眺める。生憎の梅雨前線で遠く桜島は雲に隠れている。わたしの山好きは霧島から始まったのだなあ と改めて思う。山頂から連なる峰々や森や海や遠くの町を眺めるときのわくわく感。今、北山や比良から延々と連なる山並みを眺めるときの嬉しさは、子供の時の霧島登山で知った喜びが基になっているのやなあ。

 登っている途中追い抜いた団体さんが登頂したようで、ひときわ賑やかになった山頂を辞す。次はいつ来れるか分からないけれど、十分に堪能させてもらった。12時半、眼下に広がるえびの高原の景色を愛でながらずんずん下る。しかし、岩だらけの道は薄い地下足袋の底に突き刺さって、まるでいぼいぼの健康器具を踏んでいるみたい。しばらく我慢してぴょこぴょこ歩く。分厚い登山靴の人たちがザッツザッツと追い抜いていく。

下山する 五合目展望台

 今お気に入りの地下足袋は職人さん用で、甲幅が広くて足になじんでいて登りには楽なのだが、下山時の体重の掛かり方は薄い靴底に響く。開聞でもそうだったが、持参していたエアークッションに履き替えなかったので、下りの石道はよちよち歩きだった。やはり底厚の地下足袋に履き替えた方がよさそう。

ヒオドシチョウ 赤色に染まる葉(名前不明)

 6合目で休憩して、地下足袋を履き替えた。10枚こはぜの着脱は結構めんどうくさいので、ついついもう少しとがまんしてしまうのだが。エアークッションに履き替えると、足裏への石の刺さり具合がぐんと楽になった。

 岩が直射日光で照らされ空気が暑く、気温は30度もある。風はあるもののたまらん。どんどん下って、2合目の手前で迂回路に入る。林の中で涼しいのだが、細かい木の根が地表に浮き出て気を付けて歩かないとつま先をひっかけそう。しかも湿った泥土は滑るし。登りはそう感じなかったのに、下りのう回路の長さはしんどかった。

迂回路は長くてしんどい 登山口に戻る

 まだかまだかとやーっとたどり着いた登山口。かなかなかなと涼しげに迎えてくれる声に混じって、がながながな。。。。??蛙にしてはかなかなっぽいけど、ヒグラシにしてはだみ声、結局正体は分からずじまい。えびのの名前の由来となったすすき野原を歩き(秋にすすきの穂がえび色に染まるさまが由来)、出発点の駐車場に戻ったのは14:20だった。

えびのの由来は黄金色のすすき野 温泉に飛び込む

 ガイドセンターのおじさんに預けた荷物を受け取り、温泉に入るというと、割引券をくれた、ありがとう。後で聞くところによると、センターには足湯もあるらしいのだが、昨今の硫黄山活動で観光客が減少し閉鎖も考慮中とのことだった。

 国民宿舎えびの高原荘、100円引きで420円の入浴料を払って、お湯に飛び込んだ。中途半端な時間帯のせいか、先にいた客も出て、広い浴場を独り占め、おまけに広々とした庭にある露天風呂の真正面には韓国岳がそびえ、はあ極楽極楽。足腰の疲れを癒してまったり。こんな山行は嬉しいなあ。

露天風呂からこの景色独り占めです

 お湯上りにビールにしようか、アイスにしようか迷った末に、アイスをなめなめバス乗り場に向かった。朝の彼女がベンチに座っていて、後片付け中。聞くと、3時前には下山したというからわたしのすぐあとだったようだ。彼女も、う回路のしんどさをこぼしていたので、思うことは私だけじゃなかったんだ。

 開聞岳についても彼女によると、開聞は簡単簡単というけれど、下山時の事故(捻挫、転倒)がとても多いとのことだった。100名山ツアーの物見遊山で、ただ付いて歩いているという人が多すぎるとこぼしていた。ある登山サイトで、開聞は登山道が舗装してありこどもでも容易に登れると書いてあって仰天した話をしながら、二人して、開聞に登れたら霧島はやさしいね と盛り上がることだった。イエーイ。

 16時のバスは乗客2人のみ。丸尾温泉でバスを降りた彼女は、乗り換えの50分の合間に立ち寄り温泉に入浴してくると行った。終点丸尾は温泉地の中心地なので店が立ち並ぶ。喫茶店があったはずと探したが最近閉店したそうで、コーヒーはコンビニに売っているとお店の人が教えてくれた。ここにもできたセブンでホットを買い、少し戻った丸尾温泉のバス停で休憩した。国分行のバスが来る頃、朝の彼女も温泉から戻ってきた。広くて安い日帰り温泉が最近できたそうで、流行っているようだ。

 お風呂上りはこれよとアイスを舐める彼女と、おしゃべりに花が咲く。そこでやっと自己紹介しあう。彼女が少しお姉さん、そして住んでいる場所も近い、さらに故郷も同じ町と奇遇に驚いた。鹿児島に帰ったら連絡するねと携帯番号も交換した。今夏はまだ登ったことのない中央アルプスに行くか、でもまた登りたい北岳にするか悩んでいるという彼女だったが、次回会ったら山の様子をいろいろ教えてもらおう。楽しみが出来ました。

 バスで終点国分まで行くとJRの乗り継ぎに時間が掛かるので、わたしは霧島神宮駅で下車して鹿児島行きの特急に乗った。えびのに下山した時、旧友を誘って夕食に行く約束を取り付けた。実はよく考えたら、あまり食べていなくてお腹がぺこぺこだったが、体調もいいしせっかくなので気心のしれた友に電話した。旦那さんが快く送り出してくれたという友と、馴染みのイタリアンで祝杯をあげ美味しい食事とおしゃべりで遅くまで笑いあった。ふるさとの山歩きはなかなか愉しい。次回はいつになるかなあ。


                             【 記:ikomochi 】