京都北山を中心とした山々を楽しむ okaokaclub

比叡山大宮林道
2023.10.7(土)

新しく造られた村の墓地のようで、ここからは琵琶湖や上仰木集落を一望にできた


日程:
・2023.10.7(土) 晴れ 21℃ ikomochi

コース:
・京都駅10:18発→ JR比叡山坂本10:28着~京阪坂本比叡山口10:50~日吉神社11:10~本坂~大宮林道ゲート11:20~12:20昼食12:40~横川中堂14:00~定光院14:40~比叡山ドライブウェイ分岐15:10~元三大師道~上仰木墓地16:20~林道を下り野田畑へ16:40→車で送ってもらい県道に着17:10~仰木の里コンビニ17:30~JRおごと温泉駅18:00



比叡山大宮林道から横川



仰木・大宮林道  おごと温泉駅地図




 10月に入り猛暑も少しは和らいできたけれどまだ暑い。山中の川沿いなら涼しいかなと比叡山大宮林道に行ってみた。記録を見るとなんと19年ぶりだ。坂本へは京阪電車で行くよりもJRのほうが便利なので、湖西線で向かう。JR駅から日吉大社へと向かう参道がえらいすっきりしているなあと、きょろきょろ。道路が拡幅されて西側の家々が京阪駅に至るまでセットバックし、新築の店や家が立ち並ぶ。古い町並みの風景が一変している。

JR駅前から参道が続く 京阪坂本比叡山口

正月の巫女さん募集中 蕎麦屋はまだ開いていず

 石垣沿いの石畳の参道はいつ来てもほっとする。ひんやりとした清々しい空気に満ちている。朱色の大鳥居の向こうには、はるか八王子山に鎮座する奥宮が見える。

日吉大社の大鳥居と奥宮 石畳と石垣の道は心地よい

 4月の山王祭では、いったん山上の奥宮に担ぎ上げられた神輿が急坂を下りおりる。坂本の町は勇壮な祭りで興奮に包まれる。神輿の担ぎ手たちはお神酒が入ってすっかりべろべろで、錫杖を引きずりながら隊列を組み、見物人たちはのどかで華やかな祭りに酔いしれたものだった。もう長いこと山王祭を見ていない。今もあの雰囲気のままだろうか?

日吉大社 比叡山本坂へ

 日吉神社の大鳥居横から比叡山本坂への石段を上る。すぐに車道と合流し駐車スペースを過ぎると、大宮林道のゲートがある。石ころ道の林道の名残りのマツカゼソウの群落が生い茂っている。JR坂本からここまで1時間余り、湖岸からちんたらずっと坂を上ってきたので、汗が流れ出る。大宮川ははるか足下を流れており、あたりの空気はぬるい。

大宮林道ゲート 谷間の道を上っていく

 高度が上がり衣掛岩のあたりに着くと、渓谷の趣になる。滝つぼに水しぶきが舞い、冷気が漂う。小滝群を過ぎると流れは穏やかで、八王子山から下ってきた山道に架かる竹づくりの橋。これは千日回峰行の行者さんが通る橋。

岩場に滝群が続く 八王子山から回峰行の行者橋

渓流沿いの道は心地よい 河原で昼食タイム

 ここらあたりあたりから道はだらだらと登り坂になり、日差しが暑い。川の流れも緩やかで、石ころに覆われた河原に下りて昼食とする。顔や手を冷たい水で洗い、一息つく。大宮林道の中間地点から横川の直下はひたすらだらだらと登っていくので、結構しんどい。

 道端の叢に咲く花を見つけたり、群れ飛ぶアカネを追いかけたりとぶらぶら歩く。ぎゃっぎゃとけたたましく鳴くカケスたち。突然風を切る音がして、飛翔するカケスが空を舞う。咄嗟のことでカメラは間に合わなかったが、青色と黒色の美しいグラデーションの尾羽が、目の前を飛びさった。

 道の奥に小高い峰が見え隠れする。目指す横川だが近いようで遠い。林道が三石岳方面へ分岐する三叉路にでると、もう少しで横川の林道ゲートだ。頭上に続く尾根道から人声が聞こえるともう横川中堂はそこ。林道では誰にも会わなかったが、ここらに来ると登山者たちが足早に下ってくる。

長い道のりを黙々と進む 横川中堂

 横川中堂に14時着、JR駅からかれこれ3時間半ちんたら歩いてきたが、暑いうえにしんどかったなあ。よく考えると、JR坂本駅標高90メートル、横川の標高600メートル、500メートル登るのに緩い勾配をずっと登ってきた訳で、しんどかったはずだよね。急こう配を短時間でよじ登るほうがよほど楽かも。

 紅葉にはまだ少しはやい横川の中堂を通り過ぎ、今日は元三大師道を下るつもり。6月に横川の定光院から古道で雄琴に向かおうと行きかけのだが、途中ドライブウェイの車道の照り返しがあまりにも暑すぎて、早々に断念した。今日こそはリベンジしよう。

元三大師堂 定光院

 定光院のお庭は今日も清々しく、丹精こめて手入れされた秋明菊の花畑には白い花が咲き誇っていた。ベンチに腰かけてほっこりさせていただく。

住職丹精の貴船菊 修行僧は軽やかに駆け下った

 ほっそりとした体躯の僧形の若者が庭に入ってきたのと入れ替わりに、私は門前の坂道を下り始めた。すると後ろから僧が走って追い抜いていき、結構な急坂をあっというまに駆け去ったのだが、見ていたらジグザグに坂を下っていく。なるほどなあ 膝に負担がかかりにくいかもと なかばあっけに取られて後姿を見送った。わたしも真似してジグでくだったのは当然です。急こう配のジグ走行は膝にこないかな?

 さて、奥比叡ドライブウェイに出て車道のガードレール際を下ると、正面に広場が現れ車が停まっている。びわこ見晴台とあり、展望台へと向かう。眼下にびわ湖大橋を中心に大きな琵琶湖が広がり、遠く山々が連なるよい景色。展望台入り口のすぐ南側へ下る山道があるので辿っていくと、古道っぽい道になって尾根を下っていく。

ドライブウェイに出る びわ湖見晴台へ

見晴台からびわ湖を望む

古道を下る 元三大師道標識

 最後は木の根道を降りると、お地蔵さんが待っていた。元三大師道の表示がある。またドライブウェイに出て、ガードレールの際を下るが、次の山道への入り口がわからない。古い地図では、谷へ下るとなっているので覗き込んでみるがそれらしき道がない。仕方がないので、ガードレールの切れ目を乗り越えて次に現れた林道に向かった。

再びドライブウェイに出る ドライブウェイ

ドライブウェイから山道へ 崖の下に古道がありそうだが

 この道はいかにも新しく古道ではないので、山の中に入って谷に下れないか探す。きっと同じように考えた人たちの足跡だろうか、ふみ跡が幾筋もあちこちにある。谷底は薄暗くふみ跡もはっきりしないので、探索はあきらめて砂利を敷いた林道を下った。道なりに進むとドライブウェイに掛かる橋に出て、その先は墓地だった。新しく造られた村の墓地のようで、ここからは琵琶湖や上仰木集落を一望にできた。

 墓地の入り口に地蔵堂があり、古いお地蔵さんが幾体も祭ってある。ここも古道の道中なんだろう。大きな木の下には銀杏がたくさん落ちていた。小ぶりだけれどビニール袋いっぱいに拾い集めた。六躰地蔵尊のお堂から道は車道になり、下っていく。その反対側に森の中へと下る地道があるので、迷ったけれど地道へ行ってみた。尾根の上をどんどん下っていき、ところどころにお地蔵さんが祭られている。

またドライブウェイに出る ドライブウェイに掛かる橋を渡る

墓地に出る 六躰地蔵尊

銀杏拾いに夢中 地蔵堂から地道を進む

森の中に地蔵さん 進む道はどこ?

 薄暗い森の道を20分ほどで田畑地の真ん中に出た。遠くに車が走っているのが見えるから、あっちの方へ行けばいいのかな?と道を探すが、畑の周囲はぐるりとフェンスに覆われていて、車道の方向へ行く道が見えない。もう5時なので夕暮れ間近。このフェンスに沿って行けばどこかに脱出できるだろうが、フェンスの切れ目がない。生憎ここらの地図も手元にない。仕方がないので車道と反対側になるが上仰木の集落を目指すことにして、フェンス沿いに山道を下った。

 丁度畑で作業をしている男性がいたので、「あのう 雄琴駅に行きたいのですけどどう行けばよいでしょうか?」と声を掛けた。急に現れた私に驚いたおじさんは、いったいどこから来たのか?と尋ねた。お地蔵さんから尾根道を下ってきたんですというと、「ああ のた○○に出たんやな。うーん」としばらく思案いていたおじさん。「ここから駅までは3キロはあるよ。歩くのはたいへんや。」「いえいえそれくらいは歩けますから大丈夫です」 というと、「ちょっと待っててや 車でそこまで送ってあげる。駅まで送りたいけれど、外の車道は人を乗せたら違反やから村の入り口までな」 と言って、軽トラックの荷台に座る場所をあけてくれた。

トラックの荷台で 上仰木の集落

 畑地の中をくねくね走り多分農道なのだろう、快適な車道を突っ走ること10分余りで、集落の横を走る広い幹線道に出た。あのまま田畑の中をうろついていたら日没になっていた。「ほんとうに助かりました」とお礼を言って、トラックを見送った。

 50年ほど前、坊村から比良へ登ろうと職場の仲間と計画して京都バスに乗った。ところが今のように車道は広くなく、砂利道で舗装もしっかりしていなかったので、小出石のあたりでバスは崩れた路肩から田んぼに脱輪してしまい、走行不能なった。放り出されて途方にくれたが、とりあえず比良を目指そうと道を進み、途中越えの坂道を喘ぎながら歩いていると、後ろから来た軽トラックが停まって運転手がどこまで行くのかと声を掛けた。これこれしかじかと訳を話すと、じゃあ坊村まで乗せてってあげようと、それこそ荷台に乗ったのです。

 若い女の子ばっかり6、7人くらいがひーひー歩いていたのが目を引いたのでしょう。坊村の林業組合のトラックさん、今も忘れません。おかげで坊村からブナに登りもう薄暗くなった道を大騒ぎで下り。そのあとはどう帰ったことやら。だれもブナに登ったこともなく、道中足を痛める人も出て、ましてやヘッドランプなんてなくて、今思えば遭難しなかった方が不思議な無謀な計画だったけれど、荷台から眺めた途中越えの峠道とリンドウ咲く景色は今も脳裏に焼き付いています。

 後年 体調を壊した人は御殿山の登りでだったこと、リンドウは西南稜に咲いていたこと、薄暗い下りはダケ道だったと判明した。当時は八雲が原のスキー場もあり、北比良峠からロープウェイとゴンドラで下山するつもりだったのでしょう。トラック荷台の思い出でした。

 山歩きの様子をラインで家族や友人たちに送っていたので、荷台の写メにみんなびっくりでした。家々の灯りがともる道をぼっちりぼっちり歩いて、仰木の里の入り口のコンビニでコーヒーを買ってベンチで休憩、残照の比叡山を眺めてほっと一息でした。

仰木の里 コンビニで休憩 湖西線が到着

 かつて、大原から大尾山越で堅田を目指したことがあったが、滋賀県側の歓喜院に出て農道を歩いたものの、見渡す限り広がる田畑にくねくねした道、どっちに行けばちゃんと堅田にたどり着けるのやら。途方にくれて結局は現れた水路沿いに土地勘のあった伊香立南庄町の集落を目指し、バスに乗ることができたのです。湖岸に広がる田畑は、ある意味山で迷うよりも怖いものがある。見えてはいても、行けども行けども目的地に到着できないのです。

 帰宅して、古い地図を見たら、尾根伝いに出た田畑は野田畑という場所で、古くからの道が幾本も通っていた。野田畑から谷あいを進み詰めると、元三大師道に出ることも分かった。

 ユッキーさんたちもこの谷間の古道を探したらしいが、最後は怪しくなって諦めたそうだ。使われなくなった道は荒れて崩れて山に戻ってしまったのだろう。坂本を出発したときは今日は楽勝だと気楽に歩き始めたのに、最後は思いがけない展開となり、人の温かさに満たされてとても充実した一日となりました。

ナギナタコウジュ アキアカネ


アケボノソウ イヌショウマ


エゴマの花 サラシナショウマ


サワガニ ツバキ


ツリガネニンジン ツリフネソウ


ヒヨドリバナ ベニバナボロギク


マユミの実?











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