京都北山を中心とした山々を楽しむ okaokaclub

比良イン谷の滝めぐり 
2023.3.21

堂満岳を望む


日程:
・ 2023,3,21(火)  曇りのち雨  ikomochi

コース:
JR京都駅8:18→比良8:58着=バス9:10発→イン谷口9:22着=10:00~大山口分岐~隠れ滝~青ガレ取付き~金糞滝~イン谷口=イン谷口バス停15:25発→比良駅15:35=JR比良駅15:53→京都駅16:31





金糞峠 滝巡り




午後から雨予報、3月18日から春のバスの便が始まったイン谷へぶらぶら行ってみた。


 最近の降雨予想はほぼ的中。昼過ぎには雨が降り出すというので 山頂まで行くには時間がない、山でさ迷うにも中途半端な時間、こんなときにしか行かないかなあと比良イン谷の滝めぐりに出かけた。

 イン谷口まで同乗した登山者は、滝めぐりしようかと思いますとカマブロの滝から神璽の滝に向かうという。イン谷口手前で数台の消防車とすれ違い、なにごとか?と眺める。

 バス停近くの広場では、たくさんの消防隊員と車がばたばたとなにやら準備中。隊長らしき人が無線アンテナを立ててどっかと座っている。ごくろうさまですと声をかけてイン谷へと歩いていると、比良管理小屋に車が止まっている。

なにやら物々しい 救助へり

 小屋の前で登山届を書いていると、人が出てきて「どこに行くの?」と尋ねた。「雨が降りそうなのでその前にと遊びにきたんです。青ガレのあたりまでで引き返そうかと。」としゃべっていると、上空でばらばらばらとヘリコプターが接近してきた。

 管理人さんが「日曜日に遭難が2人いて、一人は道迷いだったけれどもう一人がまだ捜査中。今朝7時からヘリが飛んで釈迦の下で発見したというから今機動隊が下から歩いて向かったところなんです。」とのこと。イン谷口の物々しさはこの救援隊のためであった

 「釈迦やったらワンゲル道ですかねえ?あのあたりはどこも急斜面だしねえ、、、」と二人で安否を心配しあった。「ところでもう一人はどこでの遭難ですか?」と聞くと、「金糞峠です」とのこと。「ええ なんであんなわかりやすい峠なのに迷うんですか?」というと、「あそこの尾根は微妙に分かれていて結構道迷いが多いんです」 とのこと。

 「比良は遭難事故が増えてますよね、去年夏に蓬莱で行方不明の方はまだ見つからないのですか」 と尋ねると、「雪解けになったのでそろそろ臭いもわかるので、犬を連れて捜索に行く予定なのです」とのこと。「蓬莱の遭難場所はどこですか?金毘羅峠の崖か それとも谷に迷い込んだのかと話しているんですよ」と聞くと、「金毘羅峠の谷だと考えている」とのことだった。「あのあたりはほんと崩れがひどくて怖いですよね 以前も滑落ありましたよね?」「尾根が分岐しているところに迷い込むことも多く、道も危険なのでもう登山道としては閉鎖したほうがいいかもと検討しているのです」 との話だった。

 立ち話をしている間も、ヘリコプターが轟音を立てて釈迦からイン谷を飛び回っていた。「今回の遭難者は単独で届が出ていず、どこを捜索したらよいのか分からない中からの捜索で大変なんです」との話だった。わたしもついつい出さずに登るけれど、何かあった時には届が手掛かりとなって迅速な捜索となるのだなあと、改めて提出の大切さを考えた。

飛び回るヘリコプター 大山口

 「毎年遭難事故が増えているけれど、今年はスピードが速いです。気を付けて行ってきてください」 という管理人さんに、今日は午後から雨なので峠まで行かずに帰ってきますから と言いおいて 正面谷へと歩を進めた。

 頭上では爆音が響き、旋回している様子のヘリ。そのうちに、釈迦から南へと飛び去り、また飛んでくるというピストンを何回か繰り返す。きっとヘリの発着場がある琵琶湖バレイ駐車場へなにかを運んでいるのだろう。遭難者は無事に救助されたのだろうか?見上げる空はどんよりと灰色の雲に覆われ、もうすぐ降るぞのサインいっぱい。

 雪解けの終わった正面谷には新芽が芽吹き、春の兆しが見える。この冬はとうとう雪道を歩かずじまいやった。せっかく大枚はたいて修理したMSRも出番がなかった。(ゴムやプラスチックなどの劣化が進み修理に出したら、なーんと35000円もした。けど、新品は6万円とのこと、えらい値が上がってしまったとロッジの店長も嘆いていた)。今年は大雪やと喜んだのに、天候や日程が合わず週末は山に出かけられなかった。今日も雨予報やけど、短時間でも歩けるときは歩こうと、イン谷に来たらこの騒ぎで気が重い。

 大山口を過ぎると隠れ滝の標識が木に掛けてある。このあたりはいつも足早に通り過ぎ、帰路はとぼとぼ通り過ぎで、一度も立ち寄ったことがない。丁度良い機会だった。

隠れ滝へ 水音が聞こえるが

 河原へ下り細い流れを渡渉する。踏み跡がいくつもあるから対岸の奥へと進む。大きな岩壁を回り込むと、轟々と音がして、頭上の滝口から水しぶきをあげて大量の水が落下していた。高さ18mの直瀑とある。壁の裏にある隠れ滝。ウエ谷へと続く滝の横の岩場は、よく使われているようで踏み跡がある。岩をよじ登れそうだけれど、途中で立ち往生するんやろうな。登るのは滝屋さんにお任せしよう。しかし立派な滝だなあとしばらく見とれていた。

堂々たる滝が現れた 滝口に登っていけそうだが

 登山道へ戻り、青ガレを目指す。途中下山者とすれ違ったので、どこに行ったんですか?と声を掛けておしゃべり。毎月山中2泊を楽しみに登っておられるとその方は大きなザックにテント一式と水、何より大事な命の水(お酒)も持参で15キロ以上担いできたとのこと。今回はコヤマノ岳泊。残雪はあるけれど、コヤマノ岳の広場の雪のないところで楽しまれたそうだ。とっても嬉しそうに話してくださった。いいなあ テント泊。お連れがいたらそのうちやりたいものだ。(後日ユッキーさんによると、多分同じ男性に出会ったのだろう、新鮮なアジの開きを買ってきて山であぶって食べると 嬉しそうやったよ~)。

登山道方向を見る 河原に残雪があるが

 河原に大きな雪だまりが残っている。へえ?と眺めて登山道に戻ると、大量の岩が崩れていて道はその下にある。斜面の上は切り立った岩場。いましもまたなにかの拍子に崩れそう。よくみると、岩の下に白い塊がある。わあ 堂満岳のルンゼから雪渓がなだれ落ちてきたんや。この雪が溶けて足元が崩れたら怖いなあ と大急ぎで通り過ぎた。

ルンゼからの雪崩で崩落,
足元には雪の塊が隠れている
崩落が続いているようだ

 青ガレ手前の広いところで昼食にする。岩に座って食べていると、さっき追い越していった中年男女2人連れの登山者が下ってきた。 「もう下山ですか?どこまで行ったんですか?」と声を掛けると、「今日は久々の山なので足慣らしにきました。青ガレ取付きでピストンです。これから飲み会です」「わあ それはお楽しみですねー」というと、「仲間がだんだん年取って減ってきて、残ったのは飲み会が楽しみな人ばかりです」「それはそれはいい山登りですねえ」と3人で笑いあった。ガンガンピークを目指すばかりが山じゃない、3人3様 それぞれの山があればいい。

山弁当で休憩 青ガレ登り口の堰堤を登る

 早い昼を済ませ、雨が落ちてくる前にもう一つの目的地へと向かう。青ガレ取付きの堰堤を渡渉せず、そのまま堰の横をよじ登る。するとそこは荒れた広場が広がっていた。青ガレ側の岩壁に2段滝の金糞滝がある。近くに寄って全容を眺める。8メートルの高さは垂直に切り立った崖で滝口から立派な水量が落ちる。滝つぼの周囲は湿気ていて、苔がたくさん生えている。

対岸は青ガレ取付き 正面谷から流れ落ちる金糞滝

 この滝の前を上流から1本の流れが続くので、たどってみた。大岩小岩 堂満岳の急峻な岩場から転げ落ちてきた岩場が続く。流れの奥には2mほどの小さな滝があり2段となって水が岩を濡らす。滝の横は滑りそうだけれどよじ登れそうでもある岩場。この奥は谷間になっている。右岸にはロープが垂れていて、ここも堂満ルンゼのコースのようだ。堂満ルンゼは雪山登山の練習場、ピッケルワークや尻セードの練習地だが、S先輩にとうとう教えてもらわず終いだった。

荒れた谷が続く 谷の奥には2段の滝がある

ロープがぶら下がり 登れそうだが 金糞滝全容

 流れを引き返し金糞滝へ。雨粒がぽつぽつしてきた。滝の前を沢に沿って下り、堰堤上から青ガレ取付きに下った。雨脚は強くなってきた。

流れに沿って行くと
青ガレ取付きにでる
堰堤の上から登山道を眺める

 今日はここまでにしよう。雨傘を指してのんびり歩く。足早に追い越していく下山者。どこまで行って来たのか尋ねると、坊村からブナへ登り、コヤマノ岳から金糞へ下ってきたそうだ。ブナの積雪はほとんどなかったが、コヤマノ岳へのくだりが怖かったと。この人はブナは不慣れなようで、人が少なくて驚いたとのこと。残雪期のブナに登る人はまだ少ないですよと話すことだった。あまり情報を持たずに来た人のように見えた。その後もぐっしょりと濡れた雨具の下山者が、数組足早に下っていった。

 雨の中を比良駅まで歩く気もなく、3時のバスに乗るつもり。大きな木の下でシートを広げてコーヒータイムとする。雨宿り効果はたいしてなくて結局葉先からの滴りでぐっしょりと濡れてしまったが、静かな正面谷の河原でのんびり。

雨がきつくなった ぶらぶら歩いていると泡をふく木が

 河原の樹を眺めていると、木の根に白い泡がどんどんたまっている。なにやろ?なにかの卵か、カエルにしては早すぎ、樹皮に石鹸成分を含んでいるのか?と近づいて観察。木の中から湧き出ているようでもなく、泡は次々消えていく。不思議やなあ。調べると「樹幹流」といって木の表面に付着したいろいろな物質が流れ落ちて起こる現象のようだ。が、どんな条件でどんな樹に起きるのかははっきりしていないようで、稀有なものを見せてもらったなあと嬉しい。こんなのんびり観察歩きもいいものだなあ。

 2時半ごろイン谷口のバス停に着いた。救助隊は既に撤収していて、いつもの静寂に包まれていた。比良管理小屋のボードには死者1となっていた。あかんかったのですね。

残念ながら本年度も事故者が 春を呼ぶバイカオウレン

 後日ユッキーさんの情報では、釈迦岳下の旧リフト山上駅のがけ下に滑落されていたそうだ。あそこらへん足元危ないし石段も急だよね、ずっと急斜面の下山で足が疲れてたかなあ と話すことだった。山友に比良でヘリが飛んでてね~と話すと、ええっ!また遭難現場にいたの?と叫ばれたけれど、選んで行ってるわけじゃないし……。

 事故なく無事に帰宅できるように、十分に事前準備をして無理な登山はやめて気を引き締めて歩こう。登山届もちゃんと出そう。改めて思った日でした。










トップへ