京都北山を中心とした山々を楽しむ okaokaclub

滝谷峠
2024.05.25

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はああ 今も変わらずここは静かだ     滝谷峠

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日程:
・2024.5.25(土)晴れ ikomochi

コース:
・出町柳発鞍馬行11:00→貴船口着11:28=貴船行きバス11:31→貴船着11:35=お弁当12:10発~奥社12:40=お茶席13:20~滝谷峠分岐13:35~滝谷14:20~滝谷峠15:10=15:30二ノ瀬ユリへ~ザラ谷へ下る~植林地~ザラ谷の尾根分岐17:25~奥社18:25~貴船口駅19:20=叡電出町柳行19:23→出町柳19:52着

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 梅雨になる前にと、気になっていた滝谷峠を目指した。

 2018年の台風で北山は大きな被害を受け、滝谷峠も倒木による通行止めとなった。2017年4月に通ったきりで、ずっと気になっていた滝谷峠。先日5月11日に滝谷から下って来た2名の男性が「こわかったー」とほうほうの体だったので余計に気になった。

 ユッキーさんにその話をしたら、「倒木も多いし、ほんまにこわいよ!」というので、ますます気になり、雨の時期になる前に一度チャレンジしてみようと期を狙っていた。

 この春まで至って元気だった100歳の母と、17歳の老犬が4月末から突如歩行が厳しくなり、16歳の老犬もいて、毎朝一人と二匹のお世話に時間を費やす老々介護になり、なかなか早朝に出発できない。仕方なく貴船口着は昼前となった。

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叡電の駅員さんの
出発パフォーマンスがユニーク
貴船口バス停

 貴船までもピストン運行のバスに乗り、バス停の休憩所で昼食にする。観光客たちに交じって奥社へと急ぐ。連理の大杉「相生の杉」を見上げていると、賑やかなおばちゃんグループが来て「まあ、1000年も一緒に仲良くだって。わたしはとってもいやだわ。そんな長い間一緒なんて。ほかの人を探すわ」と言い合うので、そうだ、そうだとみんなで大笑い。多分結婚当初は一生一緒にいたいねえ なんて甘くささやいていただろうに、この現実的な豹変ぶりがおかしい。

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貴船神社 川床

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連理の杉 相生の杉

 大木に囲まれひんやりとした冷気が漂う奥社。赤い和傘を立てて毛氈のお茶席がある。お抹茶で気合を入れて峠に向かおうかな と、席に腰かけた。この前は若い男性が接客していたようだが、今日は高年の上品なおばさまが接客。お茶をいただいて寛いでいると、話しかけてこられた。

 なんでも海外であちらこちらでお茶席を設けてこられたそうで、徹子の部屋にも出演したことがあるとのこと。お茶のよさ、幻の古来種の茶を栽培し抹茶にしてもらっている話、などたくさんの話題で話がつきない。


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貴船神社奥社 お抹茶をいただく

 この奥社では前宮司さんに請われて奥社の湧水を使っての茶席とのことで、まろやかなお味でした。時たま奥社の茶席に来られるそうで、お目にかかったのは幸運だった。一体何者だろう?と調べたがわからなかったのが、最近ネットに上がり裏千家の小泉宗敏さんと判明。貴船に行かれる折は、立ち寄ってみてください。おばちゃんたちと笑い、お茶席で楽しくおしゃべりし気分良い。この調子ならば、難関の峠もクリアーできるかも。


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奥社限定 茶和会カフェ 茶和会 ご亭主 小泉宗敏さん

 滝谷分岐に13時半回って到着。登り口は少し荒れているなあという雰囲気だがまあこんなものでしょう。谷川沿いに少し登っていくと、対岸の岩場を越える入り口に着く。そこで、老夫婦がまさに岩の階段を下ろうというところ。峠ピストンだったそうで、荒れていて滑りますよ とのこと。


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滝谷峠分岐 第1の滝


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ちょっと荒れているけど 対岸の岩場を登る

 そして、もう一人中年女性も下ってきた。えっ 結構みんな歩いてはるやん。谷は後始末ができていない倒木がそこここに放置してあるが、登山道は確保されていて、ロープも設置してある。谷をトラバースする道が崩れていて、一部鉄板で補強されているが、まあ これも足場で支えてあるし、山側にはロープも張ってある。2017年に歩いた時と比べると、確かに谷側の崩落がひどい。


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倒木が増えてきたけど 2017.4.20の同じ場所


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ちょっと怪しい足元だけどロープもあるし 2017.4.20にはまだ崩落していず


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ずるずるの斜面で持つところもない 滝谷の滝

 でも、このあたりは、谷に落ちても高さがそこまでないし、むしろ沢に降りて歩いた方が危なくないかも。そんなこと考えながら、斜面のカーブを乗り越えたとたん、仰天した。滝谷の滝の真横の巻き道が、なんとまあ 北側の斜面が崩れてきてそのまま谷へと崩落、辛うじて残っている道は斜めに谷へと傾斜がありその先は岩の谷。


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滝壺の横をトラバースするけど
チョー怖かった
2017.4.20の滝の横はまだ普通だった

 いやあ びっくりした。実は、山の師匠S先輩が遭難したのはここじゃないかと考えている。もう10年も前で、奥様は滝に行くと出かけて帰ってこなかったとだけ教えてくださり、場所も分からず。しかし、先輩が歩く滝と言えば滝谷しか思い当たらず。訃報を聞いて後日歩きに来た。

 その時は今ほどではなかったけれど、やはり細く急なトラバース道は崩れが進行していて、谷間へと斜面が落ち込んでいる。先輩はここで足を滑らせたのだろうなと直感した。ましてや脳卒中後のリハビリでやっと山歩きができるようになったと聞いていたから、この細道のしかも砂地の滑りやすい場所では、さすがの先輩もちょっとした躓きで踏ん張りがきかなかったかもと思う。

 二ノ瀬ユリの行きかえり、魚谷山からの行き帰りに、直谷への行きかえりにと、この滝谷は最短距離で便利でたくさんの人が行き交ってきた。大雪の日もここを越えた。そんな思い出深い峠だが、26号台風の被害は爪痕が深く峠の姿を変えてしまった。滝の横を越えるにはたかだか3mほどの距離なのだが、まずは頼りのロープの端っこがどこにも固定していなくて垂れ下がっていた。

 山側は崩れて草も小枝の先もなく、掴めるものはざらざら崩れるむき出しの土手。ストックで片方を支え、片手で山側をつかんでとにかく足を滑らさないように一歩一歩這うように歩く。もう誰が見ていようが恰好なんて言ってられない。


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そりゃ この道なら下りに
滝見なんて余裕ないです
ここはロープがあるので助かった

 15分かけてやっと滝の上の杉林にたどり着いた。確かに怖い。登りならなんとかなるけれど、下りはご免こうむりたい。ましてや雨の日とか雨上がりは無理。あの2人組の男性が、「滝なんて見ている余裕はなかったです」と疲れ果てた顔でつぶやいたのがよーくわかった。


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滝の上部でやっとましな道に出てほっ かつての道はふさがってる


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坂道だけれど 周りは杉の木があります 古道の面影が出てきた

 滝の落ち口から先は細い流れで、岩のふみ跡も懐かしい古道の雰囲気だ。すぐに南側の尾根との間にふみ跡があり、これが地図の破線の道だろう。登るほどに倒木の残骸が増え、足の置き場を探しながら歩く。


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もうすぐ峠 峠手前も倒木

 この様子では、谷は一面の倒木に覆われていたのだろう。良く片付けて山道が確保されたと思う。尾根の上の木立から明るい光が差しもうすぐ滝谷峠だ。深く掘りこまれたくさんの人が行き交った印の道。ここも倒木の被害が大きく、最後は木の上を乗り越えてやっと峠に到着した。

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上から覗いた峠直下の道  やっと滝谷峠到着

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滝谷への下山口 2017.4の滝谷峠
(手前の大木が倒壊か)

 こわい思いをしてたどり着いた滝谷峠、ブナやナラの広葉樹林の森の木陰はやさしくて心地よい。直谷から吹き上げる風も心地よく、やっぱりいい場所やなあとしばらく座り込んでいた。帰りたくないけれど時間が遅くなる。神輿をあげて、貴船口方面に向かった。

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一服 貴船口方面に向かう

 ここからユリ道を辿って二ノ瀬まで時間がかかるので、途中ショートカットでザラ谷に下ろうと計画。おととし通った時にはザラ谷への降り口を通り過ぎてしまい、仕方なく貴船口の急降下の道を取ったが、ここも伐採の関係で道が変わっていて最後は無理やりだった。

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確か このカーブを曲がったとこかなあ ここから下るんだったっけ??

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違ったよー! 登り返しはきついので、横移動する

 そんな苦い経験もあり今日は下山口を間違えんとこときょろきょろ。あのこぶが見えてカーブを曲がったところやったなと、支尾根が平らになったところから下降し始めた。が、すぐに間違いに気づいた。ふみ跡はあるけれど、もっと明確な道だし、こんなに急ではない。が、すでに植林地の斜面の半分まで下りてしまい見上げる上部ははあああ 登り返すのかと力が抜けるほど。

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とりあえず南を目指して
素敵な谷間に着地
道があるよ

 この斜面を横に辿っていけば、きっとざら谷の支尾根にはぶつかるはずと、南へと進む。斜面の下を眺めると、道が見える。これはきっと破線の道やな と、少しづつ下降しながら谷間へと着いた。緩やかな源頭部の谷間は静かで明るい穏やかなところだった。

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芹生の尾根が続く なにか調査しているネットあり
ジャケツイバラ群生

 ふみ跡も続いている。次の支尾根の先端を乗り越えいったん谷に下り、次の支尾根に出ると、出ました、見覚えのある小屋。見覚えのあるざら谷の尾根。北側の斜面が開け、遠く近く花脊峠から芹生峠の山々が眼下に連なる。獣害検査中か ネットで囲ったものもある。くっきりと黄色い花の塊はジャケツイバラの群生地だ。下手にあそこに突っ込んだらいばらのとりこになって傷だらけ脱出不可能だ。

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ジャケツイバラ

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ざら谷の尾根に乗る アスナロの大木が立つ

 でも、ジャケツイバラの花は元気いっぱいでいいですよね。そんなこと考えていたが、さあ いよいよもう少しで奥社に着くと、アスナロの大木を見上げながら勇んで歩き始めたのだが、がびーん 行く手は倒木の山なのです。谷道も折り重なる杉の丸太で一面覆われている。


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倒木地獄です 乗り越え潜り進む

 そっか、滝谷峠は倒木の片づけを先行してくれたけれど、ここのようなマイナーな道にまでは到底手が回わらないのだな。きっと、このままずーっとこのままなのだろう。愛宕山の一山倒木地帯になったのもすごかったけれど、鞍馬もとんでもない被害だったのだと、改めて自然災害の力を思い知ったのです。

 尾根の倒木の山を潜り抜け乗り越え、とりあえず通れる道は作ってあるので探しながら下った。ザラ谷の入り口が見えたときはほっとしたが、毎度間違う失敗をここでやっちまう。支尾根の先端を奥社の方向へ下るのが正解だが、ついついすぐ下に沢が見えるのでそっちへ行こうとすると、ずるずるの急斜面でもつところもなくて四苦八苦することになる。


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支尾根の先端を下るけど間違い
本当は東側へが正解
ざら谷の沢沿いに出た

 尻もちつきながらなんとか着地。奥社への沢沿いを下った。あたりは薄暗くなっていて、神社の灯篭に灯がついている。観光客もすっかり見えず。夕暮れの静かな道を貴船口駅へと下った。

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灯がともる奥社 山のご褒美が!!

 カジカがころころころと喉を震わせ涼しげに鳴く。これもいいなあとぽくぽく歩く。草むらの青い一群が目に飛び込んできた。なんだ!近寄ると、くっきり鮮やかな青紫色のオカタツナミソウだった。わあ いいものに出会えた。ご褒美やと嬉しくなって、今日の苦労も吹き飛んだ、そんな一日でした。

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河鹿鳴くせせらぎ イノシシ電車

 滝谷峠がかつての姿を取り戻すことはもうないのか?新しいふみ跡が山道に代わり、安全に歩ける日がいつかは来ることを願っている。が、当分下りには使いたくない。(涙)



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