東谷ノッコシを探す旅


尾根道は慎重に歩かないと迷う



2008.11.29(土)晴れのち雹雨・曇り 6℃ ikomochi 東谷ノッコシMAPへ


コース:
7:45出町柳発広河原行バス→ 9:40広河原着=10:18出発〜ネジリキ谷〜ホラノ谷10:45=雷杉尾根へ10:58〜西行き古道分岐11:10〜東行き古道分岐11:17〜大滝の谷源頭部11:30=東の尾根に11:58〜尾根〜古道12:12〜ノッコシ着12:40=12:50出発〜南支尾根の分岐13:19=休憩13:30発〜南支尾根〜サエ谷右俣へ下る13:45〜サエ谷右俣着地14:30〜左俣合流点14:50〜ネジリキ谷合流点15:00〜広河原15:15=16:00発出町柳行きバス


okaokaclubからのお願い

◆このレポートにある「トチノキの鞍部」は、古道の乗越のひとつであり、
登山道の「東谷乗越」ではありません。間違えないように注意してください。

◆古道の乗越から南北へ通じる作業道の先は、現在崩壊していますので、
踏み入らないようお願いします。

                    【 サイト管理人 哲郎 】



 小野村割岳尾根道にある『東谷乗越』の場所はいったいどこなのか? 結構気になって探している方がいるという。わたしもその一人。そもそもは、911ピークの西側にある大きな南支尾根の分岐に、プラスチックの標識があり『←小野村割岳 東谷乗越→10分』と書いてあったのが、マジックの字が薄れその上に書き込まれた『東谷乗越』の文字が一人歩きしたのが始まりだ。

 小野村割岳の記録を読むと、どの方もこの分岐を「東谷乗越」と書いている。わたしはプラ標識の作者の意図は違うと考えるので、本当の東谷乗越はどこか?とても気になってしまった。古い「北山2」エアリアマップを持っている方からも、サエ谷から登ったところが「東谷乗越」らしいとの情報も寄せられた。地形図を見ても、今みなさんが東谷乗越と信じている場所は、どうみても東谷へ乗り越す地形ではないのが気になる。一番近道のサエ谷に下る方法もないし、「ノッコス」というには無理があるんだよねえ・・・と頭を悩ましていた。

 そして決定的な、北山の主Oさんとの出会い。Oさんに幾度も尋ね、大体の場所が分かりかけてきたのだが。先週、Oさんと一緒に稜線を歩いた小てつさんから、嬉しい連絡が入った。東谷乗越の場所にあるプラ標識に、書き込みをしてきましたよ・・と。先日Oさんにお目にかかった折、気になる巻き道について尋ねたら、「それはな、ノッコシに行く古道のひとつだよ」との教示も受けていたので、ここは是非行ってみなあ。

 出町柳からのバスはグループで満員、北大路駅から乗り込んできたokaokaの哲さん道さんやJOEさんと、満員バスの中で再会を喜び、早速情報交換に忙しい。ナッチョに行くJOEさんを見送り、廃村八丁に行くokaokaさんが下車すると、バスは2人だけの寂しさ。紅葉期に大人気の小野村割岳や品谷山も、今日は静かそう。

 広河原の庄兵衛さんでコーヒーをよばれ、おしゃべりに花が咲く。「猟師さんが入っているから気をつけてね」と奥さんに注意されながら、ネジリキ谷にむかった。

初冬の広河原 ホラノ谷から尾根へ

 出発は10時18分、青空の広がる明るい林道を進み、ホラノ谷分岐到着10時45分。今日は川の水が増えているので、雨が降り続いたのかもしれない。ホラノ谷の林道終点から、首吊り尾根に取り付く。この取り付きが分かりにくかったとの話があったが、確かにテープも古くなっており、よく見ないと判らないかもしれない。しかし、踏み跡は心なしか依然よりもはっきりしている。okaokaさんが紹介して以来、通る人が増えているのかも。

 林道から尾根へと、杉林の中をジグザグに登る。取り付きは踏み跡がいくつもあってわかりにくいが、道に乗ってしまえば目をつぶっても辿れるくらい道型がはっきりしている。最初の急な登りでぐんぐん高度を上げてしまうと、10分もしないうちに、周囲の稜線が目の前に迫ってくる。汗も流れる。濡れた落ち葉で滑りそうになるので、隠れた木の枝や木の根に注意しながら、慎重に登っていく。

 尾根上の道は1本道で、快適だ。ここも、踏み跡が広くなってきたなあ。尾根から西へと、谷を巻く道に出合う。きれいな道なので、どこに出るのか気になるところだ。さらに10分ほど尾根を登ると、こんどは東側の谷へと、巻き道が分岐する。この道が『ノッコシからの古道』とOさんが教えてくれた道。落ち葉が堆積しているけれど、道型ははっきりとしているし、道幅も人一人ゆったりと歩ける。獣道化しているわけでもないので、現在も村の道として健在なのかも。

東へ古道が分岐 隠れ谷の稜線は雷杉 大滝を望む

 見下ろす東の谷間深く、時々水面が見え、滝がある様子。この谷間に何気なく入りこんだKさんは、まさかの連続する滝登りに初めのうちは興じたものの、最後は万事窮すの大滝にぶつかり、運良く垂れ下がっていた藤蔓にぶら下がってターザンもどきでよじ登ったという曰くつきの谷だ。(沢登り経験者のKさんだったからクリアーできた谷なので、くれぐれも、入りこまないでください。)

 水音がごうごうと聞こえるのは、その大滝が近くなのだろう。 尾根の分岐から古道を20分余り歩くと、谷の源頭部に出た。ちっとした隠れ谷の風情。小さな谷間だが、炭焼き窯の跡が幾つかある。赤や黄色の落ち葉が厚く堆積し、鹿の足跡や糞がある。人の足跡も無数にあり、意外と人が入っていそう。頭上の稜線には雷杉がある。稜線に直登する踏み跡がある。流れの上流は分岐し、そのまま急激に稜線下へと続く。苔むした岩や倒木、大きく捻じ曲がった木々が、厳しい冬を思わせる。

 小さな流れは、下流へと鋭く落ち込んでいる。滝の上部だろうか。上から覗いてみたが、深い谷間と岩が見えるだけ。ごうごうと響く水音は、かなりの落差があるようだ。谷間から、さてどう行こうか?と、しばらく道を探す。東に張り出した小さな斜面に取り付いてみると、滝の落ち口付近から巻き道が続いている。細い道だが崩れてもいず、ゆるゆると巻いていくと、足下の深い谷間が急斜面の下に続いている。滑り落ちないように、慎重に歩を進める。木の間越しに水が見え、大きな滝が姿を現した。10m以上はあろうかという、幅も高さも水量も堂々たる大滝である。Kさん なんぼなんでもよく落下もせずに、ご無事だったことよ。(真似しないでくださいね)

孫を肩車の木 穏やかな巻き道 ノッコシへ一歩一歩

 滝を見ながら、わたしは隣の東の尾根に上る。尾根の踏み跡は幅も広く、獣たちだけの道ではないのが明白。小野村割の稜線の真下には、こんな古道が幾本も走っているのかもしれない。炭や薪、はたまた山の幸や生活必需品などを背に、村人が行き交ったのだろうか。芦生が敦賀と京を結ぶ交易のコースだったように、ここらもにぎやかだったのかも。思いがけない発見をしてしまい、嬉しい。

 尾根の広い道を少し登ると、また東へと巻き道がある。のんびり歩いていくと、緩やかな源頭部の真上を横切り、倒木の下をくぐり、そして・・・出ましたよ、ノッコシの鞍部。目の前に落ち葉で一杯の鞍部があり、道は緩やかに登っていった。鞍部の端にある木に、目指すプラ標識があり、小てつさんが書いた「東谷ノッコシ」の字が読める。ばんざーい。苦節○年(おおげさな)やっとたどり着きました。嬉しさの余り、セルフタイマーで記念写真なぞ撮ってしまいました。

ノッコシ標識 ばんざーい 来たあ

 時は12時半、お腹も空いてきたが、帰路予定の南尾根分岐に先に行ってしまおう。ノッコシに立つ大栃やくねった木たちを振り返り振り返りしながら、次のピークへと登る。大きな台杉がさまざまな姿で迎えてくれる稜線。数回アップダウンを繰り返し、30分後、バイケイソウ群生地を通り抜けて、やっと分岐に到着。ここでも記念写真。いづれきちんとした標識を掛けに来るつもり。これで、みなさん ここの場所は東谷乗越ではないと、認識してくれるでしょう。

 なんという名にしましょうか。南尾根分岐 バイケイソウの分岐 わらび原の分岐?さあ ゆっくり昼食でも食べようかと座りかけたら、急に風が強く吹き始め、いきなりぱらぱらと雹が降ってきた。先ほどまで明るい空が、雲に覆われ、当たりにガスが立ち込める。慌てて大きな木の下に避難し、おにぎりを口に放り込みながら、雨具を着けた。

ノッコシは栃の鞍部 古い台杉がたくさんある 問題の標識に到着

 気温が急激に下がり、冷える。13時半、急ぎ足で南尾根の道を南下する。この尾根にもいろいろな姿の台杉があり、ひとつひとつ確認しながら歩いていく。尾根の中心に道があったはずなのだが、踏み跡がいろいろあって、尾根をはずさないように歩くのに手間取る。腰掛の木を通り過ぎ、朽ちた木と頭の取れた台杉が野外美術館のオブジェのような木を眺め、時々若い杉の藪に入りこみ、慌てて稜線上の道に戻り、そんなことを繰り返しているうちに、あれれ、なんかへんだぞ。まだ分岐から15分しか来ていないのに、こんなに早く藪が出てきたっけ?しかも急激に下っていくけど?コンパスを見ると南を指している。

腰掛の木 オブジェ

 ま、南わずか西だと方向はあっているけど。そのまま藪に突入し、最後は木の根を掴んでは急斜面の上から尾根の上に道を修正し・・・足下に沢が見えるので、下れそうな場所から沢に降りることにした。最後は、落ち葉の斜面を尻セードで滑って、沢に着地。どこかなあ?桃ノ木谷に降りてしまったのだろうか。それにしては時間が早すぎるけど。でも、方向さえあっていれば、いづれ林道に出るでしょう。

 降りた沢は緩やかな流れで、踏み跡があるし、周囲も荒れた様子ではないので、歩きやすい。すぐに沢の合流点を過ぎ、少し広くなった沢には広い道が現れ、どんどん歩けるので、これはいい道を見つけたと、内心喜ぶ。沢沿いの道、なんか見たことがある、歩いたことがある道。そうそうこっちから回りこんで、そうそうこの浅瀬を渡って行けるんだよね、わたし、この道歩いたことあるかも・・・不思議なデジャブ感。水量が増えているけれど、躊躇していられないので、浅そうなところをバシャバシャ渡る。革靴でスパッツだから靴下まで濡れずにすんだけど、次第に水を吸い重くなる靴。あーあ、小てつさん発明の軽量長靴、リュックに入れてくればよかったなあ。山は何が起こるかわからない、なんでも持ってきたら役に立つもんだなあ。

紅葉 サエ谷右俣源頭部

 さらに、大きな合流点を渡ると、炭焼き窯の跡。そして、薄暗い林の先に林道がありました。古い林道を進むと、目の前に見えるのは、えーっ 朝通ったサエ谷の橋ではありませんか。どこをどう間違って下ったのかは、ゆっくりと検証するとして、ここまでくればバス停までわずか。3時なので、庄兵衛さんでゆっくり休めるなあ と先を急いだ。

サエ谷右俣左俣合流付近の尾根 炭焼き窯跡
変形十字路のサエ谷橋 桃ノ木谷分岐

 3時15分に庄兵衛さんに到着。奥さんが、「おかえり」と迎えてくれた。着替えなどしていると、尾花谷からokaokaさんたちが帰ってきました。バスの時間まで、お互いにどこを歩いてきたか、報告に忙しい。わたしのサエ谷コースも一体どこだったのか? 哲さんとああでもない こうでもないと話すが、まとまらない。 「あーまた新しいコース発見やわあ」というわたしに、道さんが「へーそういう風に考えるんやなあ」。大笑いでした。『南尾根の稜線上は、東側を歩かないと迷いやすい』と哲さんが言うように、わたしは西側を歩いたために迷ったんですけどね。

 ネジリキ谷を幾度も歩いているうちに、少しづつ様子がわかってきました。人里離れた恐ろしい所と思っていた谷は人の手が奥まで入り、静かな谷は素晴らしく、ますます何があるのか知りたくなります。やっと探しあてた東谷ノッコシ、次はサエ谷方向へと道を探したいものです。たくさんの発見があって、充実の一日に満足満足。

 * 今回登った通称「首吊り尾根」ですが、わたしは勝手に「雷杉の尾根」と呼ぶことにします。庄兵衛さんの奥さんから、「そんな怖い名前じゃなく、他の名前で呼んでよ」とリクエストされたのと、せっかくの古道の呼び名には申し訳ないと考えるので。

 後日、『地図の上では東谷乗越はもう少し東なんじゃないか?』と質問がいくつか寄せられた。わたしも確かめようがなく、さてはて?と悩んでいたのだが。答えは、Oさんの一言で決着『ノッコス時には、一番低い場所を通るのが当たり前』!そして、サエ谷側のノッコシ古道を、Oさんに案内してもらう約束もできました。やったあ!!



                          【記: Ikomochi】






たこの木