小てつのよも山話(NO.5)
小父さん、赤ペンキに怒る


2008年7月15日 (火)        小てつ









「小てつさん、宮島の記事が載っとったやろ。」

小父さんが、言う。

「宮島って、広島のか?」

と、私。ピンとこない。

小父さんの話では、広島県は宮島に弥山(みせん)という500mほどの山が
あり、原始林で、一部は世界遺産に登録され、国立公園の特別地域に指定もさ
れているという。その山の「登山道」に矢印や、丸印など赤ペンキが吹きつけ
られていたという。登山者が、道しるべとしてスプレーで吹き付けたとみられ
ると管理者が言っているそうだ。
小父さん、政治や芸能ネタは無頓着だが、山情報は、早いし、よく知っている。

「あんたが、よく行く愛宕山にもあるやろ?」

「そりゃもう。地蔵山の越畑の取り付きには、石垣にまであります。」

愛宕山、それも裏側には、赤ペンキはひどい。最初は、知らなくて、愛宕名物
とまで、思った。

「赤ペンキは、あかん。ずっと残りよる。」

と、小父さん。

「それに、テープも、無いほうがいい。」

と、小父さん。
「山は、地形図と磁石を持って歩くもの。」「テープなどに頼るな。」と、堅い話
ではなく。実際の話。

「テープを、つけた人と、目的地が同じやといいんやが・・
 それに、いつまでたっても、道、覚えへんやろう。」

と、小父さん。
そりゃそうだ。それに、間違ったコースについているのもあるし、あると変に
安心して、地図を見ようとしなくなる。

「わしも、標識はつけるんやがな。」

小父さんの標識は、山道でよく目立つ。しかし、風景を邪魔しない。それに、
なんと言っても「ここというところにある」のである。
分岐や、不安になりそうなところに、「ぶらさがっている」。

ある場所の標識などは、最初、目に入ったときには違和感なかったのだが、
よく見ると地上4mほどのところにぶらさがっているのである。ということは、
身長のこじんまりした小父さん、3mほどの積雪時につけたということになる。
小父さんならではの芸当・・・。(3mの積雪時に入ってるんや。)

「ついたテープを、はずしてまわるのを趣味にしとる奴もおる。」

と、小父さんの標識以外は、軒並みはずしてまわっている人もいるらしい。
実際、小父さんの小屋のまわりの山には、テープが少ない。
だから、きれいだ。

城丹国境尾根など、名物の鉄塔のボルトにまで、テープがしてある。一体、
なんなんだろう?首をひねる。
最初、小父さんの小屋のまわりの山がきれいなのが、何故かわからなかったの
だが、数回通ってわかった。
わずらわしいテープが無いのである。
やはり、山道にベタベタのテープはそぐわない。
城丹国境尾根の一部にある、迷いそうにない踏み跡のしっかりした尾根に、
5mごとのテープ。あれなら雪になっても迷わない。しかし、大体、積雪時に
踏み込む覚悟の人が、そんなテープに頼るとも思えないし。

「木の標識は、ええ。
 みなが、道を覚えたころ、朽ちて無くなる。」

と、小父さん。
まるで、「北山での自分の役目」みたいなことを思っている?
しみじみしているのかと思った途端。

「大体、登山道に頼るのもいかん。
 小てつさん、あんた「ケモノ道」ちゅうのを知っとるか?」

「いや、「ケモノ道」は、まだ・・・。
 「人間の道」すら危ういのに。」

「山にはな、尾根道、谷道があって。それをつなぐ・・・・」

小父さんに、どんな道に連れて行かれるのやら・・・?


暑い夏の、ひとときの休憩でのはなし。



                        【 記: 小てつ 】

赤ペンキ