小てつのよも山話(NO.25)
「ターゲットは小父さん」


2008年12月22日(月)        小てつ








 先日の歩きは、森林軌道跡、「平地」である。
 ターゲットの歩きの秘密を探るのには、うってつけの道だ。
 早速、捜査員Iがターゲットに取り付く。

 この捜査員Iは、その類まれな探究心と、男性顔負けの行動力により、
 あちらこちらから、一目も二目も置かれている隊員である。
 今日も、早速にターゲットの動きを掴む為、直後の位置をキープした。

 捜査員Kは、二人の後につけた。
 捜査員Iの動きを見ていると、何やら色々やっているのが、よくわかる。
 ピッチを併せてみたり、歩幅を併せてみたり。
 捜査員Kも、同じように併せてみるが、少し気を抜くと、いつの間にか
 離される。
 景色に見とれ、写真など撮ろうものなら、駆け足しなければ追いつけない
 ほど離されている。

 秘密の解明は、謎のまま歩きは終わり、後日、捜査員IよりKに報告が入る。
 報告には、彼女の並々ならない洞察力が見て取れるが、注目すべき点は、

・ 歩幅は狭く、足裏全体をベッタリ地面に着いている。
・ 腰から下は、柔らかくしなっているが、蹴りはゆるい。
・ まるで「能楽師」の様。

 と言うものだ。それに加え、驚くべきことが・・・。
 捜査員Kは、気づかなかったが、ターゲットは、捜査員Iに、このような
 言葉を告げていたのである。

「イコモッチャン、山を歩く時は、音をたてんように歩くんやで。」

 何と大胆不敵。自分の技を、盗み探ろうとしている捜査員に対し、この言動。
 まるで、わかってましたよと言わんばかり、盗めるものなら盗んでみよと、
 言うことだろうか・・・。

 数日後、今度は捜査員Kが、単独でターゲットを追尾できる機会を得た。
 今度は、尾根歩きである。森林軌道とまではいかないが、十分、その秘密を
 探れる道である。
 捜査員Kは、そこで驚愕の事実を知ることとなる。

 捜査員Kは、捜査員Iの報告を踏まえ、よりいっそう、その歩きに注視して
 いたが、その結果、
 
Wターゲットは、踏み出さないW

 ことを掴んだ。

 ターゲットは、普段から少し前傾姿勢である。それは、「腰の曲がった」では
 無く、「ボッカ姿勢」とでも言うべきか。背中は真っ直ぐであるが、やや前傾
 している。
 だから、重心はやや前にかかっているか・・・。
 ターゲットを見ていると、どうも、その重心よりも前には足を運んでいない
 ように見えるのだ。
 踏み出した足は、重心付近に着いているように見える。そこから後方に蹴る。
 
 捜査員Kも、やってみるが、うまくできない。
 平地歩きに慣れた足は、体の前に踏み出してしまう。
 登りなら、なんとか形にはなるが、平地では足踏みしているだけになるよう
 だし、自分の思うほど腿が上がっていないのか、地面を削る。
 当然、歩幅は狭くなり、ピッチはあがる。
 足の筋肉も、違うところを使うのか、いつもと違う場所が張る。

 だが、これが長年の歩きによる成果なのだ。
 研ぎ澄まされた結果なら、これを使わない手はない。
 まだまだ、我々の調査では、解明できない点も多々あるが、
 今のところの中間報告として、このレポートを送る。
 

 超豪華メンバーによる山歩きの時の話



                        【 記: 小てつ 】