親父の山歩き報告 (NO.27)
初心者オヤジ憬れのジャンダルム
西穂〜奥穂稜線踏破


やっとたどりついたー奥穂山頂



2008年 9月27〜29日  洛西伊達オヤジ






▼ こんにちは、お久しぶりです伊達オヤジです。
山歩きをしている者、特に日本アルプスを歩く人達にとって、西穂〜奥穂の稜線とゆうのは、一度は挑戦してみたいコースらしいのですが、オヤジもアルプスのガイドブックを読んだ時に、その圧倒的な迫力と峻険さに心を奪われ、一度は挑戦したい思いに駆られていたコースです。

 今回直接のキッカケは、山屋で流されていた山渓のDVDで、若い女の人が二人でこのコースを歩いているのを見て、ネーチャン二人で行けるのやったらオヤジでも行けるやろ、といつもの単純な発想で行く事になったのですが、今回ばかりはいろんな事情が重なり、悲壮な決意で行く事になりました、

 えらい又大層なやっちゃなあーと、思われるのは当たり前ですが、実は本来もう一月早く挑戦の予定が8月の最初体調を崩し、その後原因不明の足痛(アキレス腱)で長い事山歩きが出来ない状態が続きました。しかし今年行くなら絶対九月中に、と言いますのも去年10月の最初、北穂の小屋で初雪に遭い下りるのに、心配した経験からです。

 九月中に行けないと来年まで無理だなあーと、痛みの取れない足に情けない思いをしながら、何とか一週間ほど前に坊村から御殿山コースで、武奈まで試し歩きしました。さすがに足はケイレンするし、息は切れるしひどいものでしたが、心配したアキレス腱の痛みは翌日になっても出ませんでした。後は天気予報とにらめっこで今回の挑戦となりました。

 ただ気になるのは、此処にきて大陸からの寒気が入り込み長野で10度の気温、当然山は零下の世界でしょう、衣類は冬支度です。リュックは重くなり足に不安を抱えるオヤジには辛い展開です。そこまでして、なんで行くのや、わかりません、行きたいからとしか、アホや、そうなんです。前説が長くなりました、今回のコースです。

(行程の内容です)

・一日目27日(土)
高山ーバスで新穂高温泉ーケーブルー西穂高口ー西穂山荘泊まり

・二日目28日(日)
西穂山荘ー西穂独標ー西穂岳ー間の岳ー天狗岩ー天狗のコルージャンダルムー馬の背ー奥穂岳ー穂高岳山荘泊まり  朝4時前出発、穂高岳山荘15時45分ごろ着 約12時間弱の行程になりました。めちゃ掛かりすぎです。

・三日目29日(月)
穂高岳山荘ー涸沢ー横尾ー徳沢ー上高地バスと電車乗り継いで松本、名古屋、で帰ってきました。



  朝、新幹線に間に合うように、JR向日町の駅までカーチャンに送ってもらいました。「気いつけや、危ない事したらあかんで」「ハイハイ、ほないってきます」オヤジいつもより顔つきが緊張していたかも。車と違って交通機関を利用しての山行きは楽です。土曜日とゆうこともあって、心配したほど新幹線も混んではいませんでした。名古屋で乗り継いで来た高山、車では何度か来たことはありますが、JRでは初めてで雰囲気が変わり、観光客気分です。新穂高までのバスは温泉客と山行きの人とが半分ずつでしょうか、さすが土曜日ほぼ満席で出発しました。

 奥飛騨の最深部、新穂高のケーブル乗り場、さすがに山行きの人が多いです。今晩の山小屋が心配です。ほとんどが西穂山荘泊まりだと思うのですが、(その不安は的中でした)並んでいたら、オヤジのリュック見て若いお姉さんが「こちらのハカリに、乗せていただきますか」「8キロ以上ございますので、300円でございます」「ハイハイ」オヤジおとなしくお支払い当たり前やろ、そやけどあのオッチャンのも重いと思うんやけどなあー。

ガスっている千石平 登山口西穂の山荘に向かいます

 やがて二つケーブルを乗り継いで千石平に、時刻は12時半ごろで高山の駅で買ってきたおにぎり食べます。この時点でガスが出てきて、寒さが増します。一般の観光客は震えて気の毒なくらいで、先が思いやられます。さておにぎりも食べたし、登山口からエッチラです。足が気になりますが、息も切れます、やはり50日ものブランクは辛いです。1時間チョットで西穂の山荘に着きました。今日は此処まで受付をする前に、明日の西穂岳への取り付きを確認しておきます。明日は真っ暗の中歩かなければならないので、必要なんです。山荘の前では寒いのに早くも団体さんが宴会をしています。

 中に入り受付をします、(本日は、布団一枚にお二人です)の案内、アチャー心配していたとうりです。その後も来るは来るは、団体さん、個人さん、こんなにたくさん泊まれるのかい、夜食は3回に分けて、入れ替えのたびに食堂の前は、満員電車のごとく混雑を極めます。これだけ多くても西穂から奥穂に行く人は、10人もなかったのではとゆう気がします。

西穂の山荘前ではガスって寒い中
団体さんは宴会です
まだ真っ暗の独票です

 部屋に戻るとオヤジの布団の相棒は、もうもぐり込んでいます。それが又ガタイのでかい奴で(失礼、方で)上布団抱え込んでいるので、オヤジは上着をもう一枚、靴下ももう一枚、着込んで寝る破目に成りました。とにかく冷え込んで、布団抱え込むのはわかるのですが、横になったら今度は直立不動で寝ているようなもの。このままエコノミー症候群になるんと違うかいなあーと思うほど、おまけに反対のオッチャンはいびき、もうこれは睡眠ではなく行です。どうせ寝られへんのやったら今から歩くかーと思いますが、まあ、横になっているだけでもましかあーと、ひたすら3時になるのを待ちます。

 皮肉なもので2時を過ぎてからウトウトする始末、ようやくセットしておいた腕時計のアラームが鳴り起きて抜け出し、玄関の広い所で準備です。他にも2〜3名もう起きて準備をしています。この時間帯やはり奥穂までなのかなー、黙々と準備して口は利けません。一度表に出て服装のチエック、洗面を済まし、朝食はおにぎりを作ってもらっているので、食べずに出発時間は4時少し前、こんなに早いのは初めてです。久しぶりのライトを頭に着けて、昨日確認しておいた取り付き口からエッチラです。

やっと明るくなってきた前方に
これから挑む稜線が
ピラミッドピークゆうらしいです

 登り出してまもなく服装の甘さに気がつきます、風です。相当強烈に吹いています、風はこの日一日オヤジを苦しめます、気温はおそらく零下、体温を奪います、もう一度やり直しです。手袋を変え、頭から防風用の頭巾を被り、又歩き出しますが、丁度風に向かって(北ないし北東から、吹いています)歩くので辛い事に。何とか第一目標の独標に辿り着きましたが、まだ真っ暗で東の空も日の出の気配もありません。ただ星は綺麗に見えています。すぐに西穂の山頂に向けてエッチラです。

西穂岳山頂完全に夜は明けました 西穂からの眺め、まだ余裕がこの辺りでは
あります。下に上高地が見えています。

 風は時には強くなったり弱くなったり、止む事はない状態です。独票から西穂岳に向かう途中東の空が明るくなると、やっと足元も見えるようになり、やれやれです。但し日の出を見ている余裕などなく岩がゴロゴロで、これからの難儀さを想像させます。山荘を出て約3時間弱で西穂岳に着きました。

 丁度、御殿山コースで武奈ヶ岳に登った感じでしょうか、まだ先7時間以上の歩きが待っています。(実際はもっと掛かったわけですが)それとあの山屋で見たDVDは、ここから始まっているのですが、この3時間は詐欺やろと思います。此処で風を避けて高山で買ったおにぎりの残りを朝食に食べ、小屋のおにぎりは昼用に、(エライみみっちー話で、すんません)冷たくて冷蔵庫から取り出したまま食べている感じですが、とりあえず食べ終えて先に進みます。

さあいよいよです、西穂岳から先少しのところ 同じく赤岳、間の岳もちろん
南アルプスのではありません

 さーこれから先なんですが、地図を見てもらうと判るのですが、赤岳、間の岳、進むにつれ、恐い名前の箇所が出てきて、垂直なクサリとか、逆スラブ状にクサリとか、ナイフブリッジとか、いろいろ出てきますが、そんなことは頭から飛んでしまい、ただただ目の前の岩にしがみつき、クサリにつかまり、急斜面をよじ登り、降り、進むしかないのです。恐怖心にかられてもよじ登るしか、あるいはへばりついて下りるしかないわけで、時には、こんなとこにクサリがないのは犯罪やろと思いつつ、なんであと1メートルクサリがないのやとぼやきつつ進みます。

 そのうちなんか左の手がしくしく痛いので見ると、ワー袖口が血で真っ赤や、どうも手袋と袖口の間、手首を岩の鋭利な部分で切ったようで、何ぼシンドイゆうても、恐いゆうても自殺しとうないでと、風を避けて応急処置です。血の量の割には傷はそれほど深くなく、一安心、又進みます。今回の報告、実は写真が極端に少ないのです、早い話カメラを構えている余裕がないのです。本当はもっと臨場感溢れる写真いっぱい撮りたかったのですが、腕もさることながら、余裕がないのが一番の原因です。

間の岳後から追いついてきたアベックの
若者にシャッターを頼みました
天狗岳山頂バックに槍ヶ岳が見えています

 そのうち奥穂から向かって来る人にすれ違います。お互い情報交換、ホットします。相対に奥穂からの方が下りが多いからでしょうか、進行が早いみたいです。シャリバテしないようにおにぎりも食べて進みますが、ジャンダルの手前、天狗のコルからの急斜面辺りからオヤジの歩きが極端にペースダウン、やはりブランクと昨夜の寝不足、感じんなところでこたえてきたみたいです。

天狗のコル、コース中唯一エスケープ
(岳沢に)コース分岐
天狗コルからの急斜面この辺りから
バテが目立ってきました
畳岩と呼ばれているらしいのですが
又聞きでよく判りません
こんなとこ歩くのは犯罪やで

 それまではオヤジなりに、途中ケガの治療などしても歩けていたと思うのですが、息が上がってダウン寸前、幸い足の痛みはないので、気力でヨタヨタ行くしかないのです。強烈斜面を降りてやっとジャンダルムの分岐、迷ったのですが戻ることになるらしいので、リュックを岩陰に置いて登ります。リュックがないとこんなに軽いのやー、憧れのジャンダルところが上ってみると何もない所、当たり前なんですが又少し前から風が強くなり、シャッターを頼む人もなく、三脚で自動シャッターをと思ったら、ぶっ飛んでしまい早々に退散する事に。従って記念写真無しの状態、しかしその時はそんなことどうでも良い心境で、あたふたと元来た斜面を下りて分岐を奥穂に進みます。

又聞きロバの耳真偽は不明 これなら歩けるほっとする状態
馬の背から奥穂が 馬の背から前穂が

 いよいよ最後馬の背です。此処はどうゆう訳か大きくペンキで、岩にウマノ背と書いて矢印が示してあります。なるほど馬の背とはしゃれではなく、うまい事いった物で馬の背にまたがったように進まないといけない状態を表したもので、今日のように強風の時は立って進むなど絶対無理です。実際は背の頂上に手をかけて、横を足場を確かめながら進むことに。そしてやっと目の前に奥穂の山頂が、もちろん最後下りて又厳しい登りがあるわけですが、あそこまでやと思うと気力が涌いてきます。

 やっと辿り着いた奥穂の山頂、時間は予定を遙かに過ぎて、早朝の出発から11時間を過ぎています。丁度穂高岳山荘から上って来た若い人が「西穂からですか、すごいですねー 私も一度挑戦したいとは思うのですが、なかなか勇気が出なくて」オヤジは記念のシャッターを頼みながら、やったなあーとしみじみ実感が涌いて来ました。「下の小屋はどうです、込んでいますか」とオヤジは気になり聞きますと「ええ結構多いようですが、昨日よりは少ないとゆうことでした」との事で一安心、もう今夜は布団一人で寝たいです。

 若者と一緒に山荘に向かったのですが「バテているので、先に行ってください」と告げると、「そうですか、じゃあお先に山荘はもうすぐですから」と駆け下りるように先に行きました。うらやましいなーと思いながら、ヨレヨレになって山荘に到着15時45分、地図に載っている行程時間(西穂山荘から約10時間)を遙かにオーバーして、12時間近く掛かりました。最後はカタツムリのごとく歩いていたとゆうのが実感です。

奥穂側から、ジャンダルム 最終日朝、穂高岳山荘前心なしか
ほほがスマートに、都合のええように

 受付を済ませて部屋に行くと、なんと先客が一人いるだけ「コンニチハ、二人だけならラッキーですねー」「こんなものじゃないですか、月曜日だし」「昨晩は、ひどい目にあいました」「どこだったんです、」「西穂の山荘です」「エーじゃあ、ジャンダル越えですか、そりゃ凄い」「いや凄くないです、バテバテで12時間近く掛かりました」そんな話をしていたら、もう一人若い男性が入ってきました。その男性は槍沢ロッジから天狗原、南岳、大キレット、北穂、でここ穂高岳山荘まで来たそうです。それも凄いコースだと思います。去年オヤジはキレットの経験があるので、思い出しながら話をしていると、5人ぐらいの団体が入ってきました。やはりこれで部屋は満員です。

 団体さんは韓国の人達で、最近多いのです。何処の小屋でもハングル語の案内が目立つようになりました。それでも今夜は何とか布団一枚に寝られそうで良かったです。穂高岳山荘は節電が徹底、テレビも天気予報の時間だけ。食事を終えたあと6時50分ぐらいになると、皆がテレビの前に集まり、天気予報を待ちます。残念ながら明日は長野地方は9時頃から雨、山荘の人によるとおそらく雪になるのではとの事、今日でなくてよかった。明日はオヤジは奥穂まで戻り、吊尾根から前穂、重太郎新道から上高地に降りる予定でしたが、朝起きてからの判断に。オヤジはさすがに7時過ぎからお休みなさいです。3時に忘れていた前日の腕時計のアラームが鳴り、目が覚めると後は寝られませんでしたが、昨日より気分は良いです。

 朝食の5時半ごろから山荘の人が行っていたように、雪になり奥穂への取り付きも白くなってきました。同部屋の若い男性と(その男性も、オヤジと同じ予定で、前穂に行くつもりです)「どうしょうかなあー」と迷っていたのですが、オヤジは足の調子も良いので「前穂にいくかー」と支度をして出発。ところが寸前先に15名ぐらいの女性が主体の団体さんが取り付きに、奥穂への取り付きは山荘から少しだけハシゴとクサリがあり、後は山頂まで比較的に常識的な上りなのですが、そのスタートで停まってしまったのです。リーダの人が「行けー行けー、なに恐がってるのやー」叱咤してもなかなか進みません。「後ろの人、先に行ってください」とも言えない状況で詰まってしまいました。

 オヤジもなんか出鼻くじかれたみたいで、しばらくボーと待っていたのですが雪もだんだん強くなり、「やめた、涸沢にしよう」と小屋の前に戻ると同部屋の若者も出てきて、二人で涸沢に降りる事に成りました。涸沢はまだもう少し紅葉には早いかなーとゆう感じですが、上部は雪で薄化粧、それなりの雰囲気が味わえました。でも涸沢を過ぎると後はひたすら下りるだけ。

涸沢に向かいます、ヒュッテが見えています 雪で薄化粧の涸沢カール

 やがて、小雪が小雨になり二人で話をしながら下ります。二人ともなぜ前穂に行きたかったかと言いますと、有名な横尾から徳沢、上高地の3時間歩きのダルさが嫌でしんどいのは判っていても、前穂から上高地に行きたい思いがあったわけで、しかしベテランいわく「重太郎新道から岳沢、上高地も同じようなもんやで」との事。初心者オヤジにはよくわかりませんが、やはりダルい歩きです。おまけに三日目心配していた足の方が少し痛み出しました。若い男性に先に行ってもらうように言いましたが、「いやそんなに早く着いても、バスの時間がまだ相当待たないと、付き合いますよ」と一緒に歩いてくれました。

 徳沢で12時を過ぎたので、名物ラーメンを食べて温まり又チンタラと上高地を目指します。それにしても山の上で痛くならなかった足が、平地に下りてきて痛むとは良いような情けないような。やがて観光客が増えてきて、雨とゆうのに河童橋の上はいっぱいの人、やはり上高地は人気のスポットです。バスターミナルに着いてみると、男性の勘違いで2時の新宿横浜行きのバスがギリギリ間に合う状態。(若い男性は横浜の人でした)後で思うに判っていてオヤジに合わしてくれたのかなーとも思いましたが、いずれにしても、山での出会いはオヤジが大切にしたい一期一会の思いです。

 オヤジも何とかすぐに出発の、新島しま行きのバスに乗れて電車乗り換え、松本、名古屋、と乗り継ぎ帰ってきました。ガムシャラな意地と行きたい思いだけで挑戦した今回の山行き、帰りの汽車の中で反省してみると、恐怖心と時間ばかりが気になり楽しむ余裕などはなくて、憬れていたジャンダルムもあんな有様では。写真も少なくこれはあかんでと反省、本来の山歩きの原点に戻るのが大切かなあー、又師匠や先輩に怒られるなあー、今度は体調を万全にして余裕を持って、ジャンダルだけにでも行きたいなーと思いながらこれを書いています。


               【 記: 洛西オヤジ 】