八丁遡行 トチヤナギ谷周回 |
新緑にむせる |
2009.5.23(土)小雨のち曇り 22度 小てつさん Ikomochi
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◆「ikomochiさん 八丁川で額縁の木を見ましたか? えっつ見てない! それはぜひ行かねば・・・」小てつさんの案内で、額縁の木に会う旅に出かけました。
ってわけで、またまた八丁川に行った。今日は稲妻号で林道終点まで行くので、八丁川遡行トラ越峠経由トチヤナギ谷の周回である。「あのね Oさんがいこもっちゃんにはトチヤナギの下り道が危ないかもしれんから、先にトラ越に登って川を下って来たらどうや?と言うけど、川下りはつまんないよね」小てつさんの判断で、トチヤナギの急斜面はなんとか下れるんじゃないか ということになり、計画通り遡上することに決定。 佐々里から八丁林道を走る。岩の崩落があちこちあり、結構ひやひやであるが、谷と若葉が心地よいのでどんどん走る。一枚岩を流れ落ちる布滝を見物。まっすぐに白布のような水が滝つぼに落下するさまは、小気味よい。この滝の上は、どうなっているのかなあ。 弓削方面との分岐を、『馬場滝』と標識のある林道へ入る。地道は水溜りと落石で荒れており、時折枯れ枝が跳ねたりする。『馬場滝』の標識で見物。3段に折れ曲がった滝が見事だ。滝の手前の苔蒸した階段を行くと、さらに奥に30分で『百間滝』があるそうだが、またの機会へと滝見物は見送ることにした。
八丁林道の終点には、車が1台すでに駐車。車の様子では、渓流釣りの人だろう。さて、今日は、小てつさんが調達してきた新兵器使い初めである。先週革靴での渡渉で、帰ってみたら靴の内部にうっすらとカビが生えてしまった。しかし、長靴でよさそうなのがイマイチないなあ と案じていたら、「いいもん見つけました!」小てつさんが京北町まで行って買ってきたのは、『田植え用長靴』。これが履き心地いいのです。膝下まで長さがあり、靴底は柔らかく、これだと沢の小石を踏んで歩いても、大丈夫そう。初歩きの今日は、守備や如何にと期待にわくわくです。 小てつさんは、田植え長靴にスキー用ストック(なぜかロシニョール)を両手に持ち、万全の渡渉スタイル。スキー用ストックは、Oさんお奨め。確かに、ジョイント部分が途中で抜けたり縮んだりしないスキーストックは、丈夫で安心かも。車利用だと、長いストックが人に迷惑をかけるわけでもないしね。
11:00小てつさんを先頭に遡行開始、うん じゃぶじゃぶ歩けて、これはいいかも。水深を気にしなくてよいので、どんどん道のりははかどります。先週よりも一層緑が濃くなり、山のあちこちに白いかたまりがたくさん。シャンデリアのような栃の花、大きなホウノ花、ヤブデマリ、ガマカツなど白い花々が一斉に咲き乱れ、蜜を求めて蜂がぶんぶん舞っている。 幾度も渡渉を繰り返しながら遡ること30分、「額縁の木が分かるかな?」と小てつさんが指す林に目を凝らすと、見えました!四角い穴。渡渉地点からまっすぐ伸びる山道の脇に、細い幹の不思議な形の木が立っています。先日は、その木の手前から川沿いの道を探すのに目を奪われ、視野に入らなかったみたい。近づいてよくみると、二股になった枝が四角い窓を作り、また上部で合体しています。Oさんによると、『地上近くで枝の間に石がはさまったまま成長し、そのうちに石が落ちたのでは』とのことだが、想像するだけでも稀有な光景だ。 額縁の間に顔を突っ込んで、記念写真を写そうとするが、幹は意外や背が高い。一生懸命背伸びをして、半ば首吊り状態になりながら、やっと額に入った顔写真を撮影しました。緑の葉が茂るこの木は、葉の形や幹の様子から図鑑で調べ『ウリハダカエデ』じゃないでしょうか。
額縁の木から対岸へ渡ると、大好きな大木の森。巨岩の壁が今にも崩れてくるんじゃないかとこわごわ歩き、ノコギリ谷分岐を過ぎ、緑のトンネルを歩く。昔観た映画『リバー・ランズ・スルー・イット』若く光り輝くブラッド・ピット主演で、フライフィッシングの美しい映像が今でも印象に深い。まるで、ここらはその映画を思い出させる風景だ。小てつさんも映画を観ており、しかも渓流釣りもやっていたというので、ひとしきり話が盛り上がる。(しかし、小てつさん いろんな趣味をお持ちで、なかなか只者ではありません) そうこうするうちに、一人の釣り人に出会った。まだ食いがないとのこと。しばらく話して、先を急いだ。 先週は岩場を這い渡った大きな淵は、今日は長靴で浅瀬を探して左岸を伝った。すぐに小さな滝の上にでて、そこからの眺めがまたいい。いいなあ いいなあとシャッターを押しながらバックした途端、ずでんと岩の上に尻餅をついた。岩が滑りやすいのだ。岸辺にあがって、肘や肩にサロンパスをぺたぺたありったけ貼って、応急処置。幸い打身だけのようだ。
しばらく岩場が続き、ふくらはぎくらいまで水に浸かりながら、沢を渡っていく。新兵器は滑り止めをもう少し万全にすれば、軽く防水はしっかりで、なかなかの優れものだ。炭焼き窯の跡地を越えると、もう馬場谷口。2時間を少し切るくらいで到着。頭上でキョロロロローン、あっ あかしょうびん。時を置いてまたキョロロローン・・・、涼しげな鳴き声が山中に響き渡る。
右岸の林の中をそのまま進み、小学校跡地の向かいで、川を渡った。広場には、若者グループがザックを広げ遊んでいる。声を掛けると、京大生を中心にしたアウトドアサークルとのこと。キャンプするそうだ。わたしたちも小屋の前のテーブルに陣取って、昼食。小鳥の声が響く。しかし、この若者たち、至って静か。バトミントンやボール遊びは、なぜか男子同士で遊んでいるし、向こうで輪になって話しているのも男の子たち。女の子は女同士で話していて、「えらい変なグループやなあ なんで男女混ざって遊ばへんのやろうか きょう日の若いもんはどうなってるんや」と小てつさんはヤキモキしているのだが、「まあ 最近は草食系男子とかいうらしいしさあ、こんなもんかも」と、中高年おじさん おばさんは、若者の生態について評論を戦わすのであった。
13:50若者たちを眺めていても限がないので、そろそろ出立しよう。広場の裏から川を渡ると、トラ越峠の登り口があった。林の中をジグザグに上る。今日始めての急な登りが応える。登り道はすぐにトラバース道に変わるが、崩落気味の足元は急斜面で、滑り落ちないように慎重に歩く。14:15KGCの標識があるトラ越峠は小さな鞍部で、品谷峠から下ってくる尾根と合流する。峠をそのまま乗越し、西側の谷へと下る。すぐにV字の狭い谷道に出て、倒木の間を下っていくと、道の先が落ち込み、滝の上に出た。
このまま滝の脇を下ることも出来るそうなのだが、身体を支える木もない崖とのことなので、迂回路を下ることにした。よくみると踏み跡がある。滝上部の手前で北側の支尾根の先端に乗り、大きくジグをきりながら下る。こちらの斜面も急なので、慎重に歩を進める。炭焼き窯の跡などもあり、15分くらいで、トチヤナギ谷に降り立った。谷の両岸は急斜面で立ち上がっていて、深いV字の底に沢が流れている。見上げる滝は、20m以上はあろうか。滝の脇に踏み跡がある。が、まばらに木が生えているだけで、足場は悪く、長尺ロープがあるならまだしも、地面にしがみついて登り下りするよりほかない。
森の旅人さんは、『滝の脇を身を低くしてへばりつくように』と自称村長に教えられ、かなり苦労して下られたそうだ。「そりゃ この高度じゃ 生きた心地しないよね、いったん足を滑らしたら、下まで滑落するよね。よく下らはったよねえ」「トラバース道があるのに、なぜそっちを教えないんやろうなあ?」Oさんが心配したけれど、ジグザグ道はゆっくり下れば、わたしでも大丈夫でした。でも見下ろす谷間は、結構な高度差で、恐ろしいです。
岩間を走る清流で顔を洗い、一服。この谷は苔が多く、滑らないように慎重に進む。西面の斜面は岩盤で覆われ、東面は植林だが、こちらも急斜面。頭上に広がる広葉樹の葉を透かして、光が見える。紅葉の秋も素晴らしいことだろう。岩の谷間を下っていく。西側の斜面から、清流が滝になって流れ落ちている。黒い岩盤の上を走る水、濃い緑色の苔や植物がたくさんで、この狭い谷間は心地よく落ち着く。地形図にある破線の道はどこ?滝上部の取り付きあたりはすでに道型が薄く、細い獣道程度だったのだが。見上げる斜面には、かすかに道の名残らしいものが散見されるが、もう崩落したのかな。 ずんずん下っていくと、急に岩がごろごろ散らばった場所に出て、きれいな朱色の岩がある。ここらしかないのだそうだ。さらに下ると、東面に深く掘れた道型が現れ、目で追うと、確かに北上するトラバース道がある。が、途中で崩れていた。炭や薪を担いで谷底を歩くには、足元が危ない。かつて、巻き道は整備されていたことだろう。八丁の小学校の先生たちも、本校のある弓削間を越木峠から八丁大道を使って行き来したというし。
V字谷が平らになると、すぐに八丁川本流との出合いだ。広く浅い流れに夕陽が射し、きらきらと輝いている。ずっと眺めていたい、そんな光景だった。車のところで装備を解いていると、釣り師たちも引き上げてきた。釣果はわずかだったそうだが、にこにこしておられた。
広河原の庄兵衛さんに立ち寄り、久々おしゃべりに花が咲いた。奥さんは元気にしておられた。今年は鹿の害が少なく、花々が咲いたと、嬉しそうに案内してくれた。クリンソウやサラサドウダン、ベニドウダン、モチノキ、オダマキなど珍しい草木が花開いていた。 品谷山から廃村八丁一帯の景色が中国雲南省に似ていると、『北山を歩く3』で澤潔氏が書いておられる。雲南省に行ったことはないが、映画『中国の鳥人』で観た、山また山の山紫水明な奥地のイメージが濃い。八丁川周辺は、ただの深山というだけではない雰囲気がある。澄んだ水と重なる尾根ときらめく緑の光景が、絶妙に配合された魅力に溢れている。わたしも、その魅力に惹かれる一人になりました。 気温が低かったせいか、小雨にも関わらずヒルの被害がなく快適な一日だった。小てつさん、別天地を案内してくださって、ありがとうございました。 【記: Ikomochi】
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