トチヤナギ谷〜P799周回


トチヤナギ谷分岐付近のカズヨンさん



2009.6.7(日) 小雨 20度 カズヨンさん・小てつさん・ikomochi
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◆「トチヤナギ谷からトラゴシ峠への道で迷ってしまいました〜」「えっつ あの20m崖 気づきませんでしたか?」「さああ・・どこがどこやら分かりませんでした」どこが?どうしてだろう?と現地調査に、再度のトチヤナギ谷。

コース:
出町柳発8:30 ⇒広河原9:30 ⇒林道終点10:20=出発10:45〜トチヤナギ谷〜谷分岐11:10〜トラゴシ峠取付き11:35=12:30〜トラゴシ峠13:00=13:40〜P776〜P82714:40〜P79915:30〜相岩谷の尾根〜伐採地15:50〜細谷入り口17:00〜駐車地17:15⇒広河原⇒京都市内19:00




 okaokaclubの読者 カズヨンさんが、トチヤナギ谷でえらい苦労されたと聞いたが、どこでわからなかったのか?場所の様子をやりとりするも話がかみ合わず、お互いにいまひとつ合点が行かない。カズヨンさんが遭遇したというOさん作のKGC赤白標識も、理解できない場所にとりつけてあったという。八丁界隈では、この赤白標識は信頼の出来る標識としてつとに知られているのだが、それにしては場所がおかしい。

 さっそく、Oさんに、小てつさんが確認に走る。と、『ここ5年ばかりトチヤナギ谷にOさんは足を踏み入れておらず、その間に紐が切れた標識を、誰かが別の場所に付け替えたらしい』と判明した。「標識が正しくついているのかどうか、確認に行く必要があるよねえ」と、小てつさんと相談していた矢先、5月23日のトチヤナギ谷紀行がUPされた。読んだ方が行こうと思われるかもしれない。記録を書いた者としては、責任もあるなあ。と、あれこれ考えた末、またまたまた八丁詣でとなった。

 当然、アッシー君は小てつさん。「えーーーっ なんで また、はっちょーに行かなあかんのーーー」と叫び声を上げながら、八丁林道の落石を上手に避けつつ稲妻号を運転する小てつさんである。もはや、通いなれた道である。

 林道終点で、先行したカズヨンさんが待っていた。カズヨンさんは、標識整備するのならご一緒しましょうと、参加してくださったのだ。これまでメール交換していたのだが、今日が初めてのお出会い。『カズヨシ』さんと信じて疑わなかったある日、実は『カズヨン』さんが正しいと知らされ皆でびっくりしたという、いわくつきの人である。マイナールート開拓に余念のない方だ。挨拶もそこそこに、さっそく遡行の準備にかかる。

またまた新たに開発 トチヤナギ谷へ トチヤナギ谷遡行

 今日はまた新兵器持参。あくなき探求者小てつさんが、なぜか高島市まで行って手に入れてきた『先割れ田植え長靴』それに『沢用ワラジ』を取り付け、これならば苔で滑ってお尻に青あざを作ることもなかろうという、万全な足元になった。

 さっそく、八丁川の中をざぶざぶ歩いてみる。足裏に馴染んで、なかなか具合がよろしい。 昔は地下足袋にワラジで沢登りしていたそうだから、原理は一緒ですね。10:45トチヤナギ谷に向け出発。長靴のカズヨンさん共々水の中をじゃぶじゃぶ越えて、トチヤナギ谷分岐に入る。わたしも小てつさんも、初めてのトチヤナギ谷遡上。見上げる風景は、見慣れぬものだ。谷に入ると最初は平たく広い部分が続くが、すぐに狭い谷底を歩くことになる。

 赤い岩がたくさん転がっている場所のあたり、右の山側に古い道型のようなものが見える。これが地形図破線の道か? 双眼鏡で斜面を見上げ、調査に余念のないカズヨンさん。深くえぐれた道型らしい場所が続くので、このあたりが破線の道の入り口であろうかと、3人で話し合う。以後、東側の斜面を見上げながら、道型を探すのだが、あるようなないような、なかなかはっきりしない。この破線の道は、いずれまた詳しい調査が必要になるであろう。

古道を探す(小てつさん撮影) トチヤナギ谷遡行

 先回はほとんど悩まずにすいすい下ってきたが、登るとなると「あれえ こんな岩越えたっけ?」「こんな滝つぼあったけ」と、目の前に次々に障害が現れとても新鮮である。 カズヨンさんが見かけたというロープや、標識も探しながらなので、きょろきょろきょろきょろと6個の眼で当たりを見回しながら、ゆっくり進む。谷の分岐があり、少し広くなった谷間に炭焼き窯の石組みが残っている。すぐに岩をよじ登ったり、小さな滝を越えたりと、渓流らしくなってくる。

 谷が狭まり険しくなったあたりで、「あれや!」頭上の枝にぶら下がっている一枚の赤白標識発見。この標識に釣られて、カズヨンさんは上まで高巻いてしまったそうだ。わたしたちは高巻きが1箇所もなかったので、話がかみ合わなかったのだが。標識の近くに上ってみると、確かに狭まった谷のヘリを通り抜けるには、一旦高く上ったほうがいいのかなあ、しかし、そこから下るには急斜面で怖いなあ。少し下段に、岩を抱きながらぐるりと回りこめる場所もあるので、さて この標識はどうしようか。

 思案した結果、標識は紛らわしいので撤去。その時々の水量や谷の様子も異なるので、進路は各人の判断に任せたほうがよいのでは・・ということになった。古いロープの残骸も撤去。木の根にくくりつけて垂らしてあったのだが、余計な印があると気をとられて、却って現場の判断が狂う原因にもなる。

紛らわしい標識や
ロープを撤去
ケルン(Oさん作) トラゴシ峠取り付き付近

 そうこうするうちに、左の斜面から水が滝になって流れ落ちる岩場に到着。「この角を曲がったら、現場や」と小てつさんが言うけれど、「そうやったけ?」ピンときません。が、果たしてどんぴしゃ、小てつさんの言うとおり、右手の斜面に20mの滝というか 崖が現れました。今日はまったく水が流れていず、滝とは言えない。「ここかあ、気がつかずに通り過ぎたなあ」とカズヨンさん。確かに、遡上していると視線は前方を向いているので、視野の端に入ったとしてもこの崖は目に留まらないかも。先回 わたしたちは下ってきたとき、この崖の上部から谷を覗きこんで怖いなあと感じ、強く印象に残っているのだが。

 さっそくザックを下ろし、周囲を探索する。まず、トラゴシ峠へのじぐざぐ道を再度確認する。カズヨンさん「そうか ここに道があるのか。気づかないで通り過ぎたなあ」KGCの標識は正しい場所にあるのか。まぎらわしいテープ類はないか、3方に分かれて、それぞれチェックする。小てつさんは、危険な崖の下や分かりにくいという峠への取り付きに、標識を作る作業。わたしは、危険な崖にリボンがぶら下がっているので、よじ登ってみる。 下からは、斜面を掴み、古い倒木をつかみしながら、なんとか上までよじ登れたが、やはり下りは傾斜が急すぎる。紛らわしいリボンを撤去し、斜面を北に回りこんで適当に下った。

標識をつけ道を整備する トラゴシ峠への道

 カズヨンさんはいつの間にか小さな鍬を持ち、分厚い落ち葉に埋もれた山道を一生懸命耕している。わたしが20mの急な滝と書いたもので、カズヨンさんはすっかりその気になって、カラビナやザイルなど登攀用具一式を持参。ザックが重い重いとこぼしていたのは、このせいか。20m滝も登りは簡単に行くが、下りにはロープがいるかも。使ってみはったら・・と言うも、この程度じゃ必要ないとカズヨンさんは道具を出さずでした。

 じぐざぐ道が少し山道らしく見えるようになったところで、トラゴシ峠に向かう。谷から緩やかに登ったあたりに、炭焼き窯の跡がある。そこから右へまた大きくジグザグしながら中腹に上った。カズヨンさんはどこを歩いたのであろうか。上から眺めると、少し谷を遡上したあたり、炭焼き窯のまだ北側に、緩やかな傾斜になった場所があり、どうもそこから取り付いたようだ。まっすぐに登ると、ジグザグ道の北側を通過するので、山道には気がつかないだろう。そして、そのまま稜線まで行ってしまったという。長い長い斜面である。

こんな標識もある 谷への下り標識 トラゴシ峠直下

 わたしたちは、トラゴシ峠への山道を進む。20m崖の上部付近は危険なので、トラバース道の案内板をとりつける。これで、登り下りに迷うことがなくなることだろう。狭いV字道に炭焼き窯跡がある。その南側に大きく窪んだ道型が尾根の先端へと残っており、たぶんここから破線の道が始まっているのだろうと、3人で話し合う。カズヨンさんは、破線の道に興味深々、きっとそのうち探索することでしょう。

 トラゴシ峠への登り、暗い杉林の中をえっちらおっちら登る。こんなに距離があったっけ。途中で息を整えながら、やっとたどりついた峠で、昼食。しばらくへたり込んでしまいました。静かな山中は、風の音と小鳥のさえずりがかすかに聞こえるだけ。3人3様 奥山の空気を楽しむひと時です。せっかくなので記念撮影。セルフタイマーでデジカメをセットするためカメラを置く場所を探していると、なんでも袋のカズヨンさんのリュックから出てきたのは、『ミニ三脚』15センチくらいの小さな脚、これは便利だ。わたしも欲しい。

P776付近 サワフタギの花 P827へ向かう

 そうこうするうちに、小雨がぱらつき、あわてて雨具など取り出す。さてと、神輿をあげて尾根に向かいますか。腰の調子が悪く、ここでピストンする予定だったカズヨンさんが、同行するという。これまでの登りもしんどそうだったけど、大丈夫かなあ。身体を気遣いながらも、ここまで来たら帰りたくない気持ちもわかるので、一緒に出発。

 峠から、一直線で尾根道が続く。P776まで緩やかな登りが、広葉樹林を行く。尾根の両側は植林地で、大きな杉が林立している。八丁の住民は森の番人だったというが、まさに昔から大切に育てられてきたであろう森が広がっている。P776の少し広い広場、手前近くに赤白の標識がある。「この標識の近くによじ登った」というカズヨンさん。トチヤナギ谷から一直線に、急な斜面を木の根を掴んでよじ登ってきたという。

 谷を覗き、その長い傾斜の急なことに驚きながら、「こんなとこ よう登ってきはったねえ」と奮闘を称えたのでした。P827まで、小刻みにアップダウンしながら、緩やかに登っていく。静かな静かな尾根道。真っ白の泡のような花があちこちに咲く。サワフタギだ。ヤマボウシの白い花も満開。濃くなった緑に白が映え、小雨に煙る幻想の世界。

尾根の標識 P827にて ガイドに昇格の小てつさん

 P827は品谷峠との分岐で、3方向に尾根が走る。ピークの手前を登っていると、いきなりピロロンと携帯メールが着信。えっつ こんな場所で電波が通じるの??3人の携帯を出して、それぞれ電波確認。確かに3本立ってました。でも・・・せっかく人里離れてきたのに、携帯が通じると・・。こういうときに限って、しゃべりたくない人からどうでもいい電話がかかってきたりするんですよねえ(汗)。幸い、メールはどうでもいいものだったので無視し、山を楽しむ。

 P827を西へ、少し行くと尾根の分岐。ガイド役の小てつさんが、「ここを間違えないようにしないと・・・」と、地形図を見ながら誘導してくれる。分岐を南西に振ると、防獣ネット沿いに細尾根になり、しばらく下る。ぶ厚く堆積した落ち葉が、足裏にふんわり響く。モヤの向こうからオブジェのような台杉やブナや楢が、ひょっこりひょっこり現れる。この尾根には太い幹の樹がたくさんある。さすがやなあ と感心しながら、高い枝先を見上げるが、空は見えない。緑の天蓋が懸かっているので、雨もさほど気にならず、のんびりゆっくり散策に浸るのでした。

アシウ杉 鞍部 熊はぎ

 尾根の南側にはトチヤナギ谷の源頭部が緩やかに広がっている。紅葉の時期きれいそうだけど、でも傾斜はやっぱり急。北側の傾斜は更に急で、品谷に落ち込んでいく。ある日、品谷に迷い込んだ小てつさんがやみくもに這い上がった品谷峠の急斜面、上から覗くとよう登ったもんやと呆れてしまう。小さなアップダウンを繰り返し、次第に高度を下げていく。この尾根、今じゃ半ば観光コースになってしまった小野村割岳の尾根よりも野趣に富んでいて、雰囲気がいい。

 ぐんと下った広い鞍部をまた登り返すと、P799到着。支尾根を南下する。今日のもうひとつの目的、相岩谷の破線の道を探す。地形図を見ながら、3人でぶつぶつぶつぶつ。そろそろ道型が現れてもいいころだが・・と、尾根の西側を探すのだが、植林でつぶされたのか、道らしきものがない。これかな?あれかな?道のような道でないような。仕方なく尾根の真ん中を下っていくと、あたりがぱっと開け、伐採地だ。最近切ったようで、ピンクのテープがたくさんぶらさがっている。

 立ち枯れさすつもりか、生木に刻みを入れた木。これこそ生殺しっていうのじゃなかろうか、いっそ切り倒したほうがいいのではと、刻み目の理由がわからないです。熊や鹿の皮はぎ対策であろうか、ここらの杉の幹周りには組紐のようなものが取り付けられている。新手の防獣ネットか?

伐採地の木 食害防止養生 細尾根を下る

 さて、ここでまた頭を悩ます。尾根が分岐しており、どちらもに踏み跡がある。どっちに行こうかと迷った末、時間も遅いし、相岩谷の古道は今日は見つけられそうもないと判断。伐採地から、山仕事の人が使ったピンクテープに沿って、はっきりした道を下ることにした。尾根は細くなりながら、ドンドン急降下していく。先ほどどうしようかと迷った西側の支尾根は、こちらから見上げると高さがあり、しかも先端まで同じ高度で続いているので、あの尾根に行ったら最後は急降下やったかも・・といいながら、下っていく。

 山仕事の人にはいつも感心するけど、こんな急勾配の足元の悪い場所でよく力仕事をするなあ。細尾根の先端部、がくんと切れ込んでいて、さあ右か左か真ん中か、どっちに進もう。「林道に擁壁があったし、あれに下ると高さがあるから最後がたいへんかも」と心配するカズヨンさんの意見で、西側の足元に見えている沢に、下ることにした。砂地の崩れやすい伐採地で、急傾斜の足場を探しながら下る。

 小てつさんが、「ここは無理しないでロープで下りましょう」と、細引きを幹に回し、わたしはロープのお世話になる。ロープにぶら下がっていたら、こうしたほうがいいですよとカズヨンさんが教えてくれたのは、肩にロープを回し手繰りながら下る方法。なるほど、体が安定します。どうにかこうにか谷底に着地。先に下りて偵察していたカズヨンさんが、「道がありますよ」というので、谷沿いの小道を辿ると、なあんだ 林道に出て、そこはいつも気になっていた『細ヶ谷』の標識が立っていた。ピンクのテープが巻いてあるのも、山仕事の人たちの目印。これで場所もわかって、3人ともガッテンしたのです。

やったー無事着地(小てつさん撮影) 保護現場

 林道を駐車地まで歩く。下ってきた尾根の先端部はと見上げると、南側はなんと大きな岩がごろごろひっかかり、とても下れそうじゃない雰囲気、さらに回り込んでいくと、カズヨンさんが気にしていた高いよう壁があり、こっちも長いロープでもない限り下れない。っていうことは、いろいろあったけど、まあ 今日の下山場所はベストポイントやったということですね。

 あーやれやれ、予定よりも時間が遅くなったけど、庄兵衛さんに顔だけ見せなきゃ、心配するかも・・と、一路広河原を目指す。お店は閉まっていたが、丁度外にいた庄兵衛さんがお店を開けてくれ、暖かいコーヒーで一息入れたのでした。ついでに、いろいろ咲いている花を見せてもらい、またまたついでに池の「いもり」も戴いちゃいました。

 ところで、帰ってから地図をためすがめす眺めるに、伐採地の分岐を西に取れば相岩という大岩に出たかもという思いが湧き上がってきて、悔しくなった。翌日小てつさんに、「今度は下から相岩谷を遡ってみようよ」というと、「えっーーーまた八丁に行くんですかあ」と、メールのむこうから叫び声がこだましてきたのでした。でもね、いつかは登ってみなあきません。

 カズヨンさん、体調いまいちやったのに激坂の登り下りさせてしまいました。お疲れ様でした。お陰で、標識も道も整備でき、ほっと一安心です。「さすが『ガイド』に昇格しただけのことはある」とカズヨンさんに誉められた小てつさん、今回も大活躍の巻でした。皆さん ありがとうございました。

  その後: 庄兵衛さんから養子に来たイモリ2匹、先住人の10年選手(いもちゃん1号)に比べると体長は半分、でも身軽に泳ぎまわっている。そして、餌の取り合い(カメの餌)も負けていない。長い間一人さびしく暮らしていた1号は、俄然元気を取り戻し、若手(とくに3号)と取っ組み合いのけんかをし、水槽の中を活発に動き回っているのがおかしい。生きているのかなあと心配するくらい、どよよんと水の底にへばりついていたのに。振り返れば、人間世界だって一緒や。毎朝、わたしが水槽に近づくのをガラス越しに待っているいもちゃん1・2・3号、餌の時間が楽しいです。



                          【記: Ikomochi】






京都北山2 地図