小てつのよも山話(NO.60)
「妙高山 遭難騒ぎ」


「小てつさん、今回はひどい目に遭いましたわ。」



2009年9月25日(金)        小てつ








「小てつさん、今回はひどい目に遭いましたわ。」

 小父さん、去年はとうとう行けなかった北アルプスに、今夏は堺のMさん、
 武庫川のHさんと連れ立って行ってきたそうだ。
 白馬岳と妙高山に、車で移動しながら2泊3日のテン泊での旅だ。
 週初めの天気予報は上々だったが・・・

「お陽さん照ったのは最初の半日だけでね。」

 後はショボショボ弱い雨にたたられたそうだ。

「雨はよろしいんや、山やから仕方ない。
 花を写真に撮るんにちょうどよかった。
 ところが一晩寝かしてもらえんかったんですわ。」

 何でも2泊目の妙高で、遭難騒ぎがあったのだそうだ。

「テントも張って飯も食べ、さあ寝よかちゅうころになってな、なんやら周り 
 が騒がしい。
 そのうち私らのテントの脇を行き来するもんでテントを移動さしたりなぁ。」

 雨が降っていたので、キャンプ場の許可を得て建物の横の公衆電話付近にテ
 ントを張っていたら、男性2人が携帯電話の明かりをたよりに下山してきて
 電話をかけている。
 聞くと8人のパーティーだったが、雨で岩場の下山が無理と判断し燕温泉に
 下山の予定が、黒沢池ヒュッテまで来てしまった。
 小屋の方が、もう遅いので泊まるよう声をかけたが、早く降りたいと笹ヶ峰
 に下山をするものの、途中で道を間違えペースについていけなくなった女性
 が朝まで帰ってこれず、遭難騒ぎになったそうだ。

「聞いたら、ヘッドランプどころか地図も磁石も持ってない言うんや。
 私ら三人で5個あったしな、貸したったけどな、もう、アホらしなってなぁ。
 ほっといて寝た。」

 それはそうだ、近所の裏山にハイキングじゃない、れっきとした2000m
 を越す山に、わざわざ九州から登りにきて、「地図も磁石もヘッドランプも持
 っていません。」じゃ話にならない。
 
 その後、宿の方が捜索願いを出したので、警察は来るわ、キャンプ場の方が
 事情を聞きにくるわ。
 携帯電話の通じない山で、みんなが公衆電話で連絡するもんで、電話の横に
 テントを張っていたから話が全部聞こえていて誰より状況を把握していたの
 だとか・・・。小父さんは寝たそうだが、Hさんは、お茶を入れてあげたり
 お世話をしたり。
 結局、朝4時半頃捜索隊も来て、5時半には無事降りてきたそうだ。


「私らは「百名山」ちごうて、百の迷う山で「百迷山」いいますのや。」

 確かにコースは整備され、道標もあるのだが、かえって舐めてかかってしま
 い地図や磁石も持たないで行く人が多いらしい。で、天候の加減などひとつ
 道標を見間違えば簡単に迷ってしまうという。

「今回一緒に行ったHさんも、昔こんなことがありましたんや。」

 Hさんは武庫川の人だが、京都北山にも度々遠征されてくる。京都北山に日
 帰りなんて当たり前で、時には1日に15時間歩行もするというスーパー元
 気な方だ。
 ひと昔前のこと、三人連れで小父さんの小屋のある峠から南のすり鉢の尾根
 を一回りするコースをチャレンジしたが、どこでどうしたものやら、道を失
 いあたりは暗くなってしまった。しかしワンゲル出身のHさん、あわてず騒
 がず、ビバーグの準備をし出した。ツェルトの準備もできて一息ついたとき、

「こんなところで何してますにゃ。」

 小父さんが現れ驚いたそうな。
 なかなか帰ってこないHさんを小父さんが探しにきて見つけたのだが、

「暗なるんを待ってましたんや。
 私はここらは真っ暗闇でも歩けますしな。
 暗なってから見晴らしのいい半枯れの木のピークまで行くと、
 チラチラ明かりが見えとるんで見つけたちゅう訳でね。」

 ツェルトの装備をしていたHさんもしっかりしてたが、ビバーグ地をあっさ
 り見つけて助けてしまう小父さんもなかなかである。

 山の遭難なんて、北アルプスの滑落事故や落盤事故、なだれなどを除けば、
 最初はほんの数歩の道間違いだけなのかも知れないし、重大なことになるか
 ならないかは高性能の雨具だったかそうでないかだけだったかも知れない。
 本当にちょっとしたことなんだろうと思う。
 
 小てつはビビリなので、思い当たるエマージェンシーグッズは携帯していて、
 おまけに最近「お点前」も期待されているようなので裏切りもできず、何で
 こんなに大荷物と思いヒイヒイ言いながら歩いているのだが。


 まあ家族の安心も担いでいると思えば・・・  という話  



                        【 記: 小てつ 】

最近「お点前」も期待されているようなので