小てつのよも山話(NO.43)
小父さん 「そうぶしん話」


橋をかけたり、階段を置いたり、村の協同ゴミ箱を直したり、
現代では「ボランティア」と言うのであろうか?



2009年4月27日(月)        小てつ








「明日はね、訪ねなアカンとこが、ありますのや。」

と、小父さん。
時々、こんな時がある。何でも、里のお年寄りに頼まれて、その人の山の様子
を見廻りに行くのだそうだ。
山歩きの者ならタブーであるはずの、
「登山道をはずれて歩く。」
を、度々したりするのは、ついでに里山の様子をうかがっているということで
もある。
小父さんも、世間一般で言えば、「お年」の部類に入りそうだが、なんせ規格外
のお人であるので、頼まれれば何でも請け負いこなしているのである。
それに、昨今の諸事情で、里ではまだまだ「若手」の部類に入るそうな。

小父さんは、地元の人ではない。しかし、50年以上もの長い間、外国や、日
本アルプスの山などに行ったとき以外は、この里に通い、なじみ、今では、ほ
ぼ地元の里人となっている。いや、ひょっとしたら、山に関して言えば、地元
の人よりも、接しているかも知れない。

橋をかけたり、階段を置いたり、村の協同ゴミ箱を直したり、現代では「ボラ
ンティア」と言うのであろうか?
このあたりでは、そのようなことを、「そうぶしん」と言うらしい。昔は、目立
って行なわれた、「助け合い」、「共同作業」の慣わしだ。厳しい深山の暮らしで、
大事にされた風習であろう。


小父さんの小屋から、北の尾根道にはテープが少ない。ネットでも、評判だ。
不思議がる人も多いだろう。
実は、ここにはルールがある。

この尾根の北側は、京都北山の「聖地」であり屈指の「深山」である。今では、
訪れる人も多く、そんなイメージは崩れてしまっているかも知れないし、ネッ
トなどで、頻繁に紹介されるから、情報を調べた上で、コースに習い歩けば、
迷うこともなく、とても深山であることを忘れてしまう。だがしかし、報道
されていない要救助事故も多く、読図のできない人や、装備に難のある方、考え
方に難のある人たちには、入っていただきたくない場所なのだ。
峠にある看板に「ハイキング図」なんて書いてあるから、ドライブで立ち寄っ
ただけの人が、安易に入り込んで騒ぎになったこともある。

ひとたび事が起これば、パトカー、消防車、ヘリが大騒ぎで飛んでくる。
村の消防団ら、里の男衆たちも借り出され、女子衆は炊き出しなどを行なう。
まさに村をあげての大騒動になるのだ。
(小てつが、去年、桑谷山に行ったとき、この場面に遭遇しました。
報道は、されていません。2008年11月2日のことです。)
村の人たちは、「そうぶしん」のこともあり、親切に、協力してくださるが、
それでも、度々は、御勘弁願いたい。

そこでこのあたりでは、安易に迷って迷惑をかけるような人の、入山を拒む意
味で、不用意なテープの取り付けを嫌う。
テープで、迷わない様にするのではなく、テープに釣られて入り込み、迷う要
素のある者の入山そのものを拒んでいるのである。
人里離れた奥地の上、複雑な地形と危険な谷に囲まれ、ひとつ尾根を間違えた
だけで、帰ってこられなくなったり、事故にあったりするのである。
テープを付けてはいけない尾根を乗り越した「聖地」のルールに習っているの
だ。「聖地」にも標識があるように、小父さんの標識以外は、見つけたらはずす
というのが、あのあたりのルールになっている。

小父さんや小てつは、面倒臭いので、テープをはずしたりはしないが、何でも、
はずすのを趣味にしている人がいるらしく、正に神出鬼没。行きにあったテー
プが帰りに無い、てなことはしょっちゅうで、相当通い込んでいる人がいるみ
たいだ。

ほんの数度来ただけで、いや初めてでも、テープをつけていく人がいるらしい。
困ったもんである。「犬のマーキング」じゃないんだから。
迷わないで歩けた人は、後の人のことなど気にしないで良いので、どうか、
ここでは、テープを付けるのは、やめてほしい。自身の帰り道のために付けた
のなら、帰りにはずして回収するくらいにしてほしい。


「この正月にね、雪の中を、雷の木まで、歩数を勘定してきましたんや。
 また、地図にして、お渡ししますので。」

明けましてもそこそこに、積雪1mの中を、早速、ワカンで歩いてきたそうな。
おまけに、どなたにも頼まれてないのに、歩数まで数えて・・・
小父さん、今年は、どんな「そうぶしん」するんかいな?


最近、手伝うのを、アテにされているふしがあるしな〜  という話


  再度、誤解のないように付け加えますが、北山には、一部そのように、
  テープ付けを嫌う場所があります。
  論議もありますでしょうが、登山道とは言え、人様の所有地です。
  所有者から見れば、登山者のつけるテープや標識は、ただのゴミかも
  知れません。植林された木に付いているものも見かけます。
  行き先の示された標識ならいざ知らず、行き先もあやふやなテープを信じ
  るなと言われても、やはり釣られます。
  地図にある登山道だからといって、ハイカーの自由にできる場所ばかり
  ではないのです。
  あまりマナーが悪いと、入山禁止だけでなく、明智越の山道のように、
  有刺鉄線まで張られてしまいます。
  いつまでも、気分良く歩きたいので、節度やルールは守りたいと
  思うのです。



                        【 記: 小てつ 】

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