小てつのよも山話(NO.46)
「捜査員 花に酔う」


白いシャクナゲ



2009年5月17日(日)        小てつ








「この山の、北の尾根に、白いシャクナゲがありますのや。
 今頃行けば、そら満開で、きれいですやろ。」

 小父さんの情報である。
 当時、小父さんより変人だったと噂の高い、喫茶店の御主人と見つけたのだ
 そうだ。

 Wキラ〜ンW

 そんな情報が、捜査員Iの耳に及んだのである。
 最近、花見だ、山菜採りだと、ヌルい歩きしかしていなくて緩んでいた捜査
 員Iの、脳のシナップスに強めの電流が流れた訳である。

「捜査員K、わらわをそこに連れておいき〜。」

 と言ったか言わなかったか、捜査員Kの愛車「周山街道の白い稲妻号」で、
 捜査員Iをピックアップして、取り付きのある林道に向かう。

 林道を進むと、途中、大きな木が横たわる地点で、車は進めなくなる。
 実は先月、小父さんが雪で林道に倒れた木を掃除するのに、チェーンソーで
 幹を切った拍子に天秤をくらい、落ちてきた方の幹に足を挟まれ、手の届い
 たところにあった枝で、地面を2時間掘って抜け出したきたという場所だ。
 まるで、「北の国から」の一場面である。

「私の骨は、ハガネより強いんでね。なかなか折れません。」

熊の寝床 小父さん 掃除跡


 小父さんは強がりを言うが、危ないもんである。ただ、言って聞くような人
 でも無いし、それが「若さの秘訣」であるから、どうしようもない。

 さて捜査員2名は、取り付きから目指す尾根に行く途中に、とんでもないも
 のを見つけてしまうのであるが、その報告は、その方面の探求者でもある、
 捜査員Iの紀行文を、待つことにしてもらいたい。

 目指す尾根に向かうピークに立ち、単眼鏡で見渡すが、探すピンクは、どこ
 にも見当たらない。

「また、怪情報と違うか〜。」

 何かと最近、大暴落している小父さんの株である。
 ブチブチ文句も出始めた頃、ひとつのコブを乗り越した時だった。

「あったあった。いっぱい咲いてる。」

 やおら、にぎやかになり、2名の歓声があがる。

「あっちにもある。ずっと下の方まで、ぎょうさん咲いてる。まるで桃源郷や。」

 「千と千尋」のワンシーンのようだ。そして、

「あった、白いの。あそこ〜。この先、下までずっとシャクナゲや。」

 花を追いかけ、谷底まで降りてしまった。見上げればそこはもう「シャクナ
 ゲ尾根」なんかではなく、言うなれば「シャクナゲの壁」だった。
 
「反対側にもある。」

 そうなると、「シャクナゲの谷」か。恐ろしいほどの量の株があった。
 捜査員Iにしてこの言葉、

「こんなけシャクナゲ見たら、今年はシャクナゲ、もうええわ・・・。」

 
 小父さん、大暴落株が一気に反発して高値がついた  景気のよい話

 


 捜査員Iの報告紀行文もあるかと思われますが、この場所は、登山道も踏み跡
 もない地図を頼りにたどり着いた場所につき、初心者のみ、単独行は、控え
 ていただきたく思います。
 また、地図に現れない10mに満たないけれど、どうしようもないガケも、
 多数あり、細引き、ロープ等の装備も、十分用意願います。



                        【 記: 小てつ 】

白いシャクナゲ