親父の山歩き報告 (NO.32)
初心者オヤジ今年も雪の劔岳から始めました |
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平蔵コルにやっと取り付いたところバテバテ |
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2009年 5月31日(日)〜 6月3日(水) 洛西オヤジ
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◆ こんにちは洛西伊達オヤジです、貧乏暇なし、お金持ちは暇ありすぎ(やきもちのやっかみ)何で無いのか暇とお金と知能指数、そんなわけで超久しぶりの報告です。此処しばらく地元ポンポン山の大原森林公園まで車で行き、西尾根、東尾根、の周回ウオークしか出来ていないオヤジです。
今年も行く事になりました剱岳、千円高速を頼みに朝食のおにぎりを作ってもらい、大津のインターまで、冒頭からみみっちー話ですんませんが、約片道9千円が千円は大きいです。22時ごろ立山駅到着、この駐車場は無料なので大好きです。広いしトイレも完備しているし、立山のお役所さん観光協会さん、いつまでもお願いします。到着即、久しぶりに引っ張りだしてきた寝袋にもぐりこんで羊が一匹、羊が二匹おやすみなさい。
◆一日目
さて7時前にはケーブル乗り場に人が集まってきます。スキーやボードを担いだ人が目立ちますが、ウィークデーと結うことも有り、それほどの乗客ではありません。美女平から室堂まで去年と同じパターン途中の案内も同じ、面白かったのは立山の駅では全く曇っていて小雨もパラパラ、ところが駅にある室堂のライブ映像は晴れています。ほんまかいな、と思いつつバスに揺られて室堂まで、なるほど上に行くほど青空がハッキリ見えてきます。ホンマなんやー。 去年と違うのは雪が少ない事です、有名な雪の回廊も低かったです。実は今回の山行きに関して事前に予約もかねて、劔沢小屋に電話をして雪の情報を聞いていました。今年は雪が例年に無く少ないとの事、それを聞いてオヤジはなんとなくホットしたのですが、その辺が甘いと結うかほんまに自分の甘さに嫌悪すら覚える甘さです。わざわざ厚手のパッチを薄手に変えたり、トレーナー変えたりアホや、どれだけ軽くなるのや、地元の人が雪が少ないと感じられても、初心者オヤジがホットするほど、劔やその周辺の自然の状況は甘くないと結うことです。
事実今年は立山に向かわず雷鳥沢から、直接劔御前小屋に向かったオヤジは去年とは違う歩き難さを感じていました。雪が堅いと結うのでしょうか、新雪のラッセルもシンドイものですが、なんか歩きにくい感じで、直ぐにバテテしまうオヤジです。もっともまともに山歩き(雪山特に)していないオヤジは当たり前です。ユックリ、ユックリ、です。この時期しか来た事の無いオヤジですが、夏山のコースより雪上を目的の場所まで自由にコース取り出来るので、その点は楽です。出来たら室堂の周辺をもう少し観光客気分で散策したかったのですが、特に地獄谷巡りなどをしたかったのですが、今年も有毒ガスの噴出が多くコースは通行止めになっていました。 しかたなくヨレヨレで雷鳥沢を登るオヤジに、這い松の中からその名のとうり雷鳥が、「オッサン、えらいバテとんなあー、がんばらんかい」と鳴きよるのです。オヤジは「おおきに、おおきに、そやけどあんたらも、こんな天気ええのに 姿見せたら危ないで」「わかってるがな、そやけどえらいオッサンバテとるさかい、気合いれたろおもてなー」と、関西弁の雷鳥がもう白い冬着は脱いで、つがいで目の前にチョコチョコ姿を見せます。 何とか雷鳥に励まされて御前小屋の前に到着、時間はまだ予定より大分早く10時半、ここで去年下りてきた真砂岳からの尾根筋を登り、いけなかった別山に行くか、直接剱岳に向かう尾根筋を行ける所まで行くか、左右迷うところです。そんな時はストック倒しでハイ劔御前に決まりました、(こんなとこまで来てまだ呑気な)コースは雪がなくなりアイゼンを外して歩きます。
もう下のほうに劔沢小屋が見えています、気が緩むオヤジですが、あれーあの小屋なんやろ、去年もあったかなあー、去年泊まった小屋の少し下の方に、もう一つ小屋が見えています。去年泊まった小屋と劔山荘と文部科学省の研修小屋と(去年教えてもらったので判りました)もう一つ小屋が見えています。記憶力の無いオヤジ、まーええかあーと進みます。劔岳までは行けるわけないので(オヤジの実力では)時間つぶしみたいなものでチンタラです。 12時になったので、高速のエリアで買っておいたマス寿司をいただきまーす。これ好きなんです、余裕かましてバーナーで雪を溶かしてコーヒタイム、これが時間かかるのなんの、綺麗な雪を見つけるのも大変ですが、そこそこの水の量にするのが大変です、良い経験になりました。しかし、こんなに余裕かますのもお天気が良いのと、下に目的の小屋が見えているのとが主な要因なんですが、そのうち小屋を見ていると、なんか直接斜面を歩いて小屋に行けそうな気がしてきました。もちろん最初は御前小屋の前まで戻るつもりでしたが、スキーの人が描いたラインが綺麗に見えています。スキーで下りられるなら歩いても下りられるやろと、またまた甘いオヤジです。
結局、クロユリのコルから少し先の一服御前の手前で戻り、なるべく傾斜のゆるそうな所からアイゼンつけて、小屋を目指しました。はいここで皆さんは、まーたなんかやらかしよるで、と期待されているのでは、はいはいそのとうりで、やらかしはしませんでしたが、見えなくなったんです。「何がや」すんません5M前方が。本格的な雪ではないのでホワイト状態ではないのですが、霙交じりのガスがいきなり出てきて、下の小屋はもちろん目標にしていた岩やスキーの跡も、なーんにも見えなくなりました。 5分ぐらいで、これやし雪山はいやや、こわーい、師匠ーikomochi先輩ー助けてー寒いー、こんなんやったら御前小屋まで戻ったらよかった。あそこからやったら案内の旗が立ってるはずやし、これを後の祭りと、「ほれみてみー いわんこっちゃない」と皆さん思われていると思います。自業自得、しかたないので風を避けて斜面でじっと待つこと10分ほど、ものの見事に青空が戻りました、やれやれです。又ヘッピリ腰で小屋を目指しますが、それにしても恐怖感がつのります。ヒールを踏み込み慎重に下りて行くのですが、限界の傾斜になりました。仕方なくヨコに進みます、サイドエッジです、やはり先ほどの視界が利かない状態で留まっていたのは正解です。何とか御前小屋からのコースにたどり着き、やれやれ小屋に向かいます。
ところが小屋が近ずくにつれて、どうも様子がおかしいのが感じられます。窓が全部閉じられているのが遠目にも判ります。たどり着いたオヤジの前に閉められた去年泊まった小屋が、アチャーそやけどおかしいなあー電話で予約しているのに、そのとき、上から見ていた気になる小屋の事が思い出されます。ひょっとしたら移転したかも、距離もそれほど離れていないので、そちらに向かいます。 途中でボードを担いだ若者に出合い、「あのー 劔沢小屋が閉まっているのですが」と聞くと、「ああそうなんです、僕も最初あちらの小屋に行ったのですが、新しい小屋が出来て最高でした。お布団もフカフカで、時間があれば、もう一日でも二日でも泊まりたいところです」との事。後で聞いたところに拠ると、やはり気になった小屋の方に今年の五月から移転営業しているとの事でした。昨年の7月頃から3ヶ月ほどで建てたそうです、去年来た時はそんな話は全く聞かなかったので、面食らうオヤジでした。
なにもかも新しい小屋で、息子さんが受付をしてくれました。小屋の習慣で先に支払いをと思いましたが、「ああ二泊ですね 邪魔くさいので最後にしましょう」と相変わらずの気楽さです。今年は結構お客が(3〜4組8人ぐらい)おられましたが、部屋はグループ毎に一室、オヤジは一人で一室貰いました。木の香りがまだ残る部屋で布団ふかふか、こんな経験は今後山小屋では味わえないでしょう。 夕食はカレーとサラダ、豚ステーキ、それもなまじっかの厚さではない、もうめちゃくちゃな豪華さ、女の人は圧倒されて、ゴハン少ない目でと結う人がほとんど、二日ともそんな感じでした。例に拠って厨房の手伝いはだれかれと無くするし、息子さんを含めて飲み会は始まるし、とにかく暖かいアットホームな小屋なんです。
もっとも今の時期は、ほとんどがガイドさんが付いた登山客で、御主人にユックリお話を聞く機会がありましたが、5〜6月は一応ガイドさん同伴がほとんどで一般、特にオヤジのような単独の予約は雪などの状況を説明して、なるべく7月になってからを勧めておられるとの事、もちろん開けている限りは、到着されたら受け入れるのは当然ですが、中には去年のオヤジのような困った(ピッケルも持たずに)初心者がいるので困ります、とのこと冷や汗のオヤジです。 そのほか、やはり今の時期は雪崩の事故が一番多いとの事、それもスキーに拠る人災雪崩が、オヤジはスキーなどと結う高尚なスポーツは出来ないのでわかりませんが、尾根から滑降してくる時、滑り方によっては雪崩をひき起す事があるそうで、下に人がいると大惨事になるとのことです。明日はオヤジが去年と同じ平蔵谷から登るのを聞いて、谷は今のところ安定していますが、雪が少ないので落石がかなり多いです。充分注意するようにとの事でした、 特にこの時期の落石は、音も無く転がり落ちて来るので注意が必要だとの事でした。その話の途中、今日山頂に行ってきたと結う女性が「確かに落石が、谷の下のほうにゴロゴロありましたよ」とオヤジをビビラす発言を。どうも夢に出そうやなーと思いながら早めに寝ることに、山小屋としては最高の環境なのに、イマイチ寝つかれないオヤジ、やはり石が後ろから迫ってくる感覚があります。羊が一匹羊が二匹アカン寝られんなーウトウト。
◆二日目
やがて平蔵谷の出合いに、雪は去年より少なく去年は見えなかった大岩がその姿を見せています。さあボチボチ行きましょうか、エッチラよたよたよたよたエッチラ。やはりなんとなく歩き難い感じ、緩んでいて硬い感じ(なんのこっちゃ)ともかく心臓バクバク、50歩いって休み、20歩行って休み、ここで心筋梗塞再発したら完全お陀仏やなあ〜、しかし、あの時はこんなに心臓バクバクしなかったなあ〜、小屋を出て平蔵のコルに取り付くのに3時間掛かりました。早い人で3時間で山頂だそうです、去年も今年も全く前後に登る人がいないので、他の人のペースが判りません。 おそらくオヤジのペースは相当遅いと思われます。結局、この日も誰にも逢いませんでした、(スキー二人組みは、オヤジより先に山頂に到着、直ぐに下りたため逢いませんでした、すごいなあ〜)平蔵コルで息をととのえ、去年は雪が多くわからなかったカニのたてばいを登ります。しかしこれがまともに登れないオヤジ、夏の人が多い時は完全に迷惑かける状態です。今回の山行きでも、拠る年波を痛烈に感じさせられた出来事でした、(シュンーガクー)
やっとたどり着いた山頂、やはり雪は少なく去年は全く見えなかったお社が見えています。それにしても、素晴らしい青空、360度見える範囲はすべて見える(あたりまえやろが)アルプスの山々、珍しくオヤジはわかりもしないのに、地図とコンパス持ち出して、見えている山の特定を試みますが、そのうち邪魔くさくなって、ああよう見えてよかったよかった、でやめてしまいました。そうそう、此処は携帯が繋がるはずやと携帯取り出し、カーチャンに連絡「ああーカーチャンか、聞こえるか、いまなあー劔の山頂やええ景色やで、天気最高ー聞こえてるかー」「なにゴチャゴチャゆうてんのや、わかったさかい、きいつけてかえってきいやあーほんまにそんな山の上から、かけてんのかいなあー、黒部あたりの温泉からかけてんのとちゃうかあー」
ボキャのない会話やなあー、それでも劔の山頂から携帯で会話とはなかなかのもんや。その後二人組みの事が気になったので、又長次郎谷からのルートの様子も見たかったので、尾根を北のほうに進みました、その時点で気がついたのですが、新しい踏跡が点々と北尾根から山頂に続いています。どうも若者二人はもう登頂して下りたみたいです。いくらスキーで出合いまで、下りたとはいえ、すごいなあ〜と感心するオヤジです、と結うのも長次郎谷からのトライは、平蔵谷より往復3時間長く掛かると聞いていましたから脱帽です。
さてボチボチ下りにかかります、帰りはヨコバイでこちらは何とかスンナリ下りられました。さあー平蔵コルからの降りです。なんかやらかしよるで、とゆう皆さんのご想像45度以上か、慎重に慎重に、ヒールふんばりふんばり、コルから10分ぐらい下りた時、皆さんのご想像があたりました。洛西オヤジ一巻の終わり、足元の雪がズルズルと流れました。ピッケル打ち込み打ち込みの状態でしたが、足元の流れを止める事はできませんでした。尻餅をついた瞬間滑りだした体、ワーワーと思うまもなく、スピードがついてピッケルはすっ飛び、両方の手を雪上に伸ばすのがやっとの有様。 しかし面白いもので、頭の中では何処まで滑るのやろ下まで行くのかなあー、などと浮かんできます。アイゼンふんばるのや、アカンふんばったらあかん(どっちやねん)とそのうちスピードが落ちたと思ったら、急停止状態で停まりました。なんで停まったのか判らないオヤジ、助かったーと結う思いが涌いてきます。しばらく動けず、「きれいな空やなあ〜」このあたりちょっとかつこええでしょう、(何気取ってゆうてんのや) 実際は心臓ドキドキ恐る恐る立ち上がります。手首に巻いていたバンドの先にピッケルが繋がっています。滑り落ちてきた方を見上げると綺麗に跡が残っています。50Mぐらいかなあ〜いやもう少しあるかなあ〜。そのとき背中のほうに何か違和感があり、リュックを揺すると雪がドサと落ちました、改めてリュックを下ろします。又雪の塊が落ちて、着込んでいたカッパの上着と背中の間からも、雪がかたまって出てきました、落下を止めてくれた原因です、そうなんです。尻餅をついて背中で滑って下りたのでリュックと背中、まくれ上がったカッパと背中の間に雪が入り込みブレーキの役目を果たしたのです、リュックのウェストベルトの締め付けが緩かったのが幸いしたのと、それと傾斜がもっときつければこんな事では停まらなかったと思いますが、少しだけ緩いほうにたまたま向かったのが幸いしました、 オヤジの山歩きの中でリュックに助けられたのは二度目です。一度目は鈴鹿で滝か何かの上で枯れ木に寄りかかりボキと折れて落下、リュックが引っかかり助かった事があります。リュックさま様です、気を取り直し、慎重に恐々下りだします さて、このままで終わらないのがオヤジの山歩き、実はもう一度足元の雪が流れて転びました。今度はピッケルを打ち込む前だったので、振り向きざま必死にうつむいてピッケルを打ち込み、アイゼンの先を突っ込みそれでも10Mほどは滑りましたが、何とか停まりました。なんとピッケルを打ち込んだ下部の片方の手は、肩まで入ってピッケルの頭を抑えていた手は、手袋が破けて血がにじんでいました。いかに必死でピッケルを打ち込んだかで、人間必死になるとエライものです。 そんなわけで、相当時間を掛けて劔沢の出合まで降りました。途中出会いの付近を歩く小さな二つの人影が見えましたが、おそらくスキー組みだと思いますが、オヤジが出会いに着いたときは影も見えませんでした。後は小屋まで劔沢をエッチラするだけです。今日はもうしんどくても登る方が気が楽です。緊張がほぐれるとお腹もへりラーメンなどを炊いて、又知らないうちに賞味期限が切れたカロリーメイトなどを食べてやれやれです 時間は1時、助かった、助かった、とぶつぶついいながら(恐怖でちょっとおかしなったんちがうか)ヨタヨタと 小屋に向かうオヤジです。何事も無かったように劔沢小屋は向かえてくれます。やれやれ、そやけど恐かったなあーチョット面白かったなー、御主人の話だとやはり先の二人はもうとっくに帰還して、オヤジが下りてきているのを見ましたと、報告を済ませ、もう今日中に降りますと室堂に向かったそうです。すごいなあ〜その日の夕食も豪華、山に来て太って帰るのちゃうか。部屋は又個室状態、ありがとうございます。
◆三日目
室堂に着くなり、美女平方面出発しますよ、との呼びかけ「まってくださ〜い、のせてくださあ〜い」ヨタヨタと駆け寄るオヤジ、「急いでください」はいはいキップ、キップ往復買ってるし何処や何処入れたのや「急いでください」「はいはい」すみませんキップが、やっと取り出し何とか乗せてもらったオヤジどっと疲れが出て、美女平までグーグー車の止めてある駐車場(当たり前や、船が停まってるかい)に11寺過ぎに到着。 さあーこれから5時間京都まで、居眠り運転になるのとちゃうやろか、ヤバイヤバイ立山のインター入る前に吉峰グリーンパークと結う所に寄って温泉に浸かり、ついでに1時間ほど仮眠、これが大正解でした。何とか居眠り運転せずに京都まで帰ってこれました。 今回の山行き、小屋は最高、天気も最高、チョットビビッた天候も一瞬ありましたが、しかし反省点は多く、なんといっても装備です。御主人にユックリお聞きする事が出来た今回、やはりアイゼン、ピッケルはもちろん、ヘルメット、ロープ、スコップ、は持っていってほしいとおっしゃっていました。さすがにガイド同伴の人達はそれにハーネスを装着していかれます。オヤジは具体的にどのように使いこなすのか判りませんが想像はつきます。特に今回はオヤジはたまたま運よく怪我も無く帰れましたが、思い切って怒られるのを覚悟で平蔵谷での滑り落ちたことを話しました。 よくあるとの事でしたが、一番いけないのはヘルメットを被っていない事、滑っている途中に雪に隠れている岩や、もちろん現れている岩や落石などに頭をぶつける事は充分考えられるわけで、甘いなあー甘かったな〜と心底思い知りました。来年はもっと真摯な気持ちで装備を整え再度挑戦したいと思います。無事に戻してくれた山に感謝、感謝。 【 記: 洛西オヤジ 】 ![]() ![]() ![]() ![]() |
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