霊仙山 1083.5m |
霊仙山を望む |
2000 (12) 12.9 (土) 晴れ 哲、道
コース: 直上丹生バス停〜屏風岩〜くぐり岩〜魔洞道分岐〜柏原分岐〜経塚山〜霊仙山〜経塚山〜柏原分岐〜8合目〜継子穴〜(ここから分岐を間違って迷う)⇒テープのある分岐右へ〜林道(15:10)〜杉林の中へ(15:40)〜林道を迷いウロウロ〜上石津町延坂(18:50) 最初に『岐阜県 養老郡 上石津町 延坂』○○さん! 大変お世話になりありがとうございました。迷路のように果てしなく続く林道に迷い、日が暮れてしまいました。やっと辿り着いた○○さん宅で電話をお借りし、その上、車で25分ほどのJR関が原まで送って頂きました。本当にありがとうございました。 霊仙山は2年前(H.12)の9月に登ってから2度目だ。前回の記憶としては山頂での見晴らしの良さもあるが、ヒルとアブと至る所にある『西出商店』の標識が記憶に残っている。
JR醒ヶ井駅から養鱒場行きのバスに乗り、上丹生バス停で降りる。降りた所が野菜・魚・雑貨などを売っている西出商店前だ。ハイカー達が品定めをしているので覗いてみると思った以上に安い。丹波産の黒豆一袋300円はおじさんが言っているようにお薦めだ。他にも買いたかったが、まさか山にニンジンや白菜をかついでいけないものね。愛想の良い名物おじさんは、「山の事なら何でも 聞いて聞いて 月に二回 登っているしなぁ」と言っている。 バス道と別れて左の丹生川沿いの道を進む。舗装が途切れると谷は一段と狭くなる。まもなく浄水場に着き、その先の足良谷橋を渡る。 スギ林の林道を行くと、『熊出没注意』の黄色い標識に目が止まる。急いでカウベルを付ける。哲郎は1個、私は気休めに2個付ける。ネットで見たのだけど「熊対策に鈴なんか付けても意味がない」と言う人もいるが、熊に出会ってから「付けとけば 良かった」と後悔しても、きっと手が震えてホルダーの金具が上手く留められないと思うので、いつも付けることにしている。左へ大きく曲がりこむと、明るくひらけ垂直に切り立った屏風岩が見える。
林道もここで終わり、いよいよ山道に入る。大石の転がる水音だけが聞こえる伏流の河原に降りる。右岸へ左岸へと幾度も渡り返しながら上流に進む。右手に『こうもり穴』と書かれた鍾乳洞がある。残念ながら覗いてもこうもりが見えない。 右の山腹を高巻くと小滝が見え、そのうちにまた流れに沿うようになる。岩石のトンネル『くぐり岩』を抜けると、岩の谷間から水が噴出す三ノ谷が合流する。 何度も渡り返しながら進み、やがて、ひと登りすると美しい『漆滝』が見える小広場に着く。落差20mの二段滝で水量も豊富だ。先に来ていた8人ほどのグループが滝壷まで足を運んでいる。 滝壷には寄らずに、道標に従い右折し急な山腹道を歩く。滑りそうな斜面や、落石のため道の一部が消えている危険な所はロープがある。まもなく右から合流する沢へ90度右折する。
魔洞道の急な階段状の流れをぬって登る。『最後の水場』の標識を過ぎると、階段状にゴロゴロした岩を登る。あと少し、あと少しと思いながらも岩が続いている。哲郎が「こんなに 長かったかな」と言う。
足を上げ一歩進むのに時間がかかるのと、それに石や岩など硬い所を歩くのは足にこたえる。『井戸ガ洞』を過ぎると、木々も高原のような雰囲気になる。しばらく進むと深いササに囲まれた『柏原分岐』に着く。 深いササをかき分けて登り、再び視界がひらけると、さざ波のように光るササの斜面の稜線上に、98年台風で全壊した米原避難小屋が見えてくる。谷沿いが続いた分だけ、余計に空も高く「うわぁ〜 きれい」と感激する風景だ。前回(98年)登った時は、台風前で小屋も立派に建っていたのに押しつぶされている。小屋跡からは伊吹山、琵琶湖などの眺望が楽しめる。1時も過ぎたので木に腰掛おにぎりを食べる。
カレンフェルトが点在する経塚山(霊仙北峰)山頂へはここから15分ほど、三角点がなく指導標が立っている。薄っすらと雪化粧した霊仙山山頂へは、所々雪が残こる逆光に輝く笹原の道を、さらに20分ほど歩く。 二等三角点のある標高1084mの霊仙山山頂は、360度の素晴らしい展望がきき、鈴鹿の山々、伊吹山、比良山、琵琶湖などが見える。親子連れや数組のグループが昼食を食べている。インスタントラーメンを作っている人もいる。出来上がったばかりの湯気の上がったラーメンがご馳走に見える。
下山は来た道を『柏原分岐』まで戻る。帰りは柏原尾根からJR柏原駅にコースをとるので標識に従う。背丈ほどのササをかき分け進むと、やがて雑木林に囲まれた8合目のくぼ地に出る。薄暗い山腹道の左手に『継子の穴』の標識がある。 ★ここから7合目を目指すはずが・・・ 迷ってしまう★ ↓迷った林道の地図 判る範囲で書いたもの 進んで行くと、すぐに右手の木にテープが何本も垂れ「ここを 通ってくださいよ! 通らなければ だめですよ!」と言わんばかりになっているので、降りてみると林道に出る。降りた所の木にもテープが、「これでもか!」と言うぐらいグルグル巻きになっている。ここから林道を歩き始める。■時間は15時10分。 初めて通る道なので『7合目の標識』がないのに、おかしいなと思いながらも、ここが7合目だと思い始める。地図を見るとこの林道が載っていないのも、山道がなくなり林道が新しく出来たのだと思い始める。そして、林道ということでも安心する(これは大きな間違い!)。工事用の自動車、新しいミカンの皮、菓子の空箱などが落ちているのも、安心する原因の一つとなってしまう。 しばらく歩くと左手に、もう何色ものテープが派手派手になびいている。方向がズレて来ている感じがしたので、哲郎が山の中に入り様子を見に行く。「伊吹山が 見えるけど ここから 行けるのか わからへん」と言う。判らないこの時点で来た道を戻るのが鉄則だし、戻ればよかったのだが。ヤブコギでは10分で戻っているのに、林道と言う名前に安心したのか、もう少し進んでみることにする。■時間は15時30分 地図を何度も開けるが、この林道自体が載っていないので、何処まで続くのか判らない。そのうちに右手に谷があるので、方向が違っていることに気付いた時には、林道が山に平行に遥か遠く山裾まで続き、山裾まで来ると、また次の山裾が遥か遠くに見え、延々と続いている。その上、高度が全く下らない。おまけに何かの獣の足跡がたくさん現れてくる。 左手に尾根が開けているので、この林道に見切りを付け薄暗い林の中へ入って行く。(今から思うと危険なことだ)■時間は15時40分 わずかな踏み跡らしい道があったので尾根を進むと、また踏み跡が消え、仕方なく藪の中を降りて行く。前方には伊吹山と近くに集落が見える。幸いススキが茂る林道に出くわす。林道を降りて行くと分岐に出る。道の真ん中には、『関が原○○』と書いた工事用の青い自動車が止まっている。「どっちに しようか」と思案する。「下り坂に しようか」と決める。■時間は16時
薄暗くなって来るので小走りに降りる。「下りや、もう帰れる」と喜びながら走って15分ほどすると「行き止まりや!!」と先に進んでいた哲郎が言う。「行き止まりって?」ここから先の道がまだ出来ていない。後から言っていたが、これは「20世紀最大のショック!」だそうだ。私もやっぱりそう思う。だって、走って走って行った先が行き止まりなんて・・・ 来た道を戻るが走った後の登り坂のせいと、戻るということが足を重くさせている。思わす「道を 教えて下さい」と何度もつぶやく。自分では判らなかったが、私の顔には悲壮感が漂っていたらしい。 分岐の青い自動車まで戻り地図を開け、暗くなる前にライトの用意をする。こうなったら、もう時間がかかってもしょうがない。もはや日暮れまでの下山はあきらめた。■時間は16時30分 反対の道を歩くと左手にプレハブ小屋が見え、前には子供用玩具の手押し車が無造作に置いてある。道は山に平行のまま続き右手には忘れたが、『○○の道』と書かれた石碑がある。すぐのゲートを通ると左手角に『上石津町』の石柱がある。ここは4つに分岐が分かれている。地図で『上石津町』をライトで照らしながら捜すが、薄暗いのとあせっているので余計に見つからない。(後から調べると、小さな所だとばかり思っていたが大きな字で『上石津町』と書いてあった。これには驚いた)■時間は17時 見下ろすと「大垣」や「三重の町」の灯りが点々と見える。光に引き寄せられるように、あそこに行きたいと思うが降りられない。見えるだけにつらい。北を目指し分岐を左手にとってみる。 日が暮れた。途中で哲郎がカーブミラーにリュックを置いて走って様子を見に行く。風もない暖かい日だ。もう完全に日は暮れ満月が出始めて、辺りはし〜んと静まり返っている。一人待たされた私は「どこに いるのぉ〜 そっちで 合っているのぉ〜」と叫んでみる。返事がないのでリュックを抱えながら進む。ようやく戻って来た哲郎は「行けそうかも 知れんけど、高度が下がらない。 戻ろう! 走っていたら 雑木がガダガサしていたから 何かいたのかも判らへん」と言う。『上石津町』の石柱のある4つの分岐に戻る。■時間は17時40分 今度とる分岐は、工事用自動車の太いタイヤの跡がついている。もうこの道しかないと思いながら歩くと、少し距離をおいて2箇所に工事中の看板がある。双方逆方向に立ててあるので、自動車が行き来する可能性がある。 満月に照らされた林道は思いのほか明るい。都会に住んでいると、街灯やネオンなどの人工の光にかき消せられ、『月』本来の明るさに今まで気付かなかった。 木が茂った薄暗い所、ガサガサと音のする所なども通り過ぎながら進むと、高度が下がらないまま4分岐点に出くわす。今度は時間をかけ分岐を選択する。やっと下り坂になって来る。ひょっとしたらこれで降りられるではと、希望が見えてくる。右手には月明かりで美しく高くそびえる山が見える。(後から調べるとソノドと判った)
そのまま歩き続けると車止めの鍵のかかったゲートに突き当たる。横から通り抜けしばらく進むと、電力会社の看板と空家の建物と、舗装した道路には電柱が見え出す。電柱を見た時には、これで絶対に降りられると確信を持つ。 今始めて唇が乾いてバシバシになっているのに気付く。電柱を1本ずつ丁寧に見ながら降りていく。くねくねと長い道のりだがもう苦にならない。灯りを見ながら少しずつだが近付くのが判る。
やがて右手に『不動明王』が見え民家の灯りが見える。「降りた!」しかし林道を4時間もさ迷った。降りた所で分岐をどちらにとろうかと地図を見る。(後からここは『延坂』で『養老ゴルフ場』の近くと判る)■時間は18時50分 左手『西山方面』に進むと、すぐに数件の民家がある。とにかく家に電話をしたいのと、ここが最寄りの駅からどれほどの距離なのか知りたいので、最初にあった家を尋ねてみる。 チャイムを鳴らし事情を説明すると快く電話を貸して下さった。ここはバスもなくJR関が原まで自動車で25分ほどの距離だ。家に連絡も済ませたし、遅くなっても歩こうと思っていたのに、家の奥から「送ちゃれ 送ちゃれ」とご主人の声がする。結局、奥さんと息子さんとでJR関が原まで送って頂く。お名前も教えて下さらず(家を伺った時は、暗いのと表札を見る余裕さえなかった)、お礼の気持ちも辞退されるまま別れることになる。 帰りの駅の階段で哲郎も林道を走った疲れか、それとも安堵感のせいか足が動かないと言っている。今日の日付のまま、電車の座席にいるとは思いも寄らなかった。地図を広げながら確認すると、林道であんなに何回見ても判らなかった『上石津町』が見えて来る。そして今、見ず知らずの者をご親切に駅まで送って頂いた○○さんの暖かさが伝わってくる。 最初に玄関を開けて下さった奥様、家の奥から「送ちゃれ 送ちゃれ」と言って下さったご主人様、快く運転して下さった息子さん、改めて、本当にありがとうございました。
追伸
12月16日(土)に章さんと3人で『岐阜県 養老郡 上石津町 延坂』に行って来ました。お宅を訪問すると生憎お留守でしたが、感謝の気持ちを伝えたいと手紙を用意していたのが、役に立ちました。直接お礼を伝えることが出来ず大変残念でしたが、あのままでは申し訳ないばかりでした。また私にとって伺うことが一つの区切りとなりました。そして、この体験を2人の共通の教訓と財産として次の山歩きをします。【哲郎の反省:地図にない林道は通るべからず】 帰り道、自動車で電柱が見え始めた電力会社の看板まで行ってみると、不気味に感じた林道は、初冬の陽射しを受けて明るい。見上げれば、月明かりで見えたソノドが美しく高くそびえている。
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